相続税を申告・納付する
対象読者: 相続財産の全体像をおおむね確認できた相続人・受遺者のうち、相続税の申告が必要かどうか分からない方、正味の遺産額が基礎控除額に近い、または超える可能性がある方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う予定の方、相続税の申告を初めて行い期限・提出先・書類・納付方法を知りたい方
更新日: 2026年9月29日
概要
相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産を受け継いだからといって、すべての相続で申告が必要になるわけではありません。まず、正味の遺産額が基礎控除額を超えるかどうかを確認することが出発点になります。
申告・納付の期限は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。この期限は、申告と納付の両方に共通しています。
正味の遺産額が基礎控除額以下であれば、原則として申告は不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うことで税額が0円になる場合は、特例を使うために申告が必要になることがあります。
このページでは、申告が必要かどうかを判断する考え方から、必要な場合の申告書の準備、提出、納付、記録の保管までを、実行する順番に沿って案内します。個別の財産評価や税額の最終確定、複雑な事情がある場合の判断は、税務署または税理士への相談が前提になります。
このページで分かること
- 相続税の申告が必要かどうかを判断する考え方
- 基礎控除額の計算のしかた
- 申告・納付期限とその起算点
- 特例を使う場合に申告が必要になる代表的なケース
- 遺産分割が終わっていない場合の対応
- 一括納付が難しい場合の対応
- 申告書の提出先と申告方法
- 必要書類の全体像
- 自分で進められる範囲と、税理士へ相談すべき範囲の目安
- 申告・納付後に記録として残しておくもの
この前に確認する
相続税の申告は、次の内容がある程度確認できていることを前提に進めます。未了の項目がある場合は、期限だけ先に確認したうえで、それぞれの手続きへ戻ってください。
- 遺言書があるか確認する:遺言書の有無は、財産取得者や遺産分割の進め方に関係します。
- 相続人を確認する:民法上の相続人の範囲・関係を確認する土台になります。基礎控除に使う税法上の「法定相続人の数」は、相続放棄や養子について別の数え方があるため、後述の手順で調整します。
- 戸籍を集める(相続手続き用):相続関係を証明する戸籍が不足している場合は、先に収集します。
- 相続財産を調査する:財産・債務・生前贈与等の整理は、申告要否の判断と課税価格の土台になります。
- 遺産分割協議をする:分割が必要な場合、取得財産の内容や特例の適用に関係します(未了でも申告期限は延びません)。
最初にやること
死亡を知った日の翌日から10か月後にあたる申告・納付期限を確認し、具体的な年月日として記録します。あわせて、相続財産と債務の一覧を作ります。
期限を先に確定させることで、遺産分割や財産評価が終わっていない段階でも、逆算して準備を進められます。
申告が必要かを判断する
相続税の申告が必要かどうかは、次の順に確認します。
- 民法上の相続人の範囲を確認します。 まず、相続人を確認するで、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹など、相続人になる人の範囲と関係を整理します。
- 基礎控除に使う税法上の「法定相続人の数」を確定します。 民法上の相続人の人数を、そのまま使うとは限りません。相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算では、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数えます。また、被相続人に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子は、原則として実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までです。特別養子縁組による養子など、国税庁が実子として扱う人はこの養子の算入上限の対象外です。相続放棄や養子がある場合は、ここで人数を調整してから基礎控除額を計算します。
- 基礎控除額を計算します。 基礎控除額は「3,000万円+600万円×税法上の法定相続人の数」です。
- 正味の遺産額を整理します。 財産だけでなく、相続時精算課税を適用した財産や一定の生前贈与財産も関係し、非課税財産・債務・葬式費用等を差し引いて計算します。生前贈与を加算する対象期間は、相続が開始した年や適用する課税方式によって扱いが変わるため、亡くなった年に対応する国税庁の案内で確認します。
- 正味の遺産額と基礎控除額を比較します。
- 国税庁の申告要否判定コーナーを補助的に使います。 これは、おおよその要否を確認するための補助であり、最終的な判断そのものではありません。財産評価や生前贈与の扱いが複雑な場合は、この結果だけで申告不要と判断しないでください。
- 特例を使う場合の申告要件を確認します。 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うことで税額が0円になる場合でも、特例を適用するためには申告が必要です。税額が0円になることと、申告が不要になることは同じではありません。
- 相続放棄や養子の扱いに迷う場合は、国税庁の案内を確認します。 基礎控除だけでなく、生命保険金・死亡退職金の非課税限度額や相続税の総額計算でも「法定相続人の数」を使うため、人数の数え方を先に確定しておくと後の計算がずれにくくなります。
- 判断が難しい場合は、税務署または税理士へ確認します。 基礎控除額に近い場合、相続放棄や養子がある場合、財産評価が複雑な場合、生前贈与の扱いが分からない場合は、早めに確認することで期限に余裕を持てます。
状況別
正味の遺産額が基礎控除額以下の場合
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例その他、申告を適用要件とする制度を使わない場合は、原則として申告は不要です。ただし、判断の根拠とした財産の範囲や計算内容は記録として残しておきます。
相続放棄をした人がいる場合
相続放棄をした人がいても、基礎控除額を計算するときの「法定相続人の数」は、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数えます。相続放棄後に実際に財産を取得する人の範囲と、相続税計算で使う人数は一致しないことがあります。
相続放棄をした人を人数から除いて基礎控除額を計算すると、基礎控除額を小さく見積もり、申告要否の判断を誤るおそれがあります。相続放棄がある場合は、放棄前の相続関係を確認してから税法上の人数を確定してください。
養子がいる場合
被相続人に養子がいる場合、基礎控除額などの計算で「法定相続人の数」に含められる養子には上限があります。原則として、被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までです。
ただし、特別養子縁組による養子、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となっている人など、国税庁が実子として取り扱う人は、この養子の算入上限とは別に扱われます。また、養子を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合は、算入が認められないことがあります。
養子がいる場合は、「養子が何人いるか」だけでなく、実子の有無と養子の種類を確認してから基礎控除額を計算してください。
配偶者の税額軽減を使う場合
配偶者の税額軽減を使うことで納税額が0円になる場合でも、申告が必要です。申告をしなければ、この軽減を受けられません。
小規模宅地等の特例を使う場合
小規模宅地等の特例を使うことで、正味の遺産額が基礎控除額以下になる場合や税額が0円になる場合でも、申告が必要です。
遺産分割が終わっていない場合
申告期限までに遺産分割がまとまらない場合でも、申告期限は延びません。いったん法定相続分等に従って取得したものとして計算し、期限内に申告・納付します。未分割の状態では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を原則として適用できませんが、「3年以内の分割見込書」等の所定の書類を提出することで、分割後にあらためて適用を受けられる場合があります。適用できるかどうかは、税務署または税理士へ確認してください。分割が成立した後は、税額が増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求等の対象になり得ます。分割の見通しが立った段階で、早めに税務署または税理士へ確認してください。
合意はできているものの書面にしていない場合は、遺産分割協議書を作成するの手続きで書面化を進めてください。申告の添付資料や取得内容の確認に使います。
話合いがまとまらない場合は、遺産分割調停を申し立てるという別の手続きへ進む選択肢があります。この場合も、相続税の申告・納付期限自体は延びない点に変わりありません。
一括納付が難しい場合
相続税の納付は、金銭による一括納付が原則です。手元の資金だけでは一括納付が難しい場合は、延納や物納という例外制度があります。どちらも要件があり、審査を経て認められるものであるため、申告期限ぎりぎりではなく、早い段階で被相続人の住所地を所轄する税務署へ相談してください。延納・物納の申請自体も、申告期限までに行う必要があります。
複雑な財産・生前贈与がある場合
不動産、非上場株式、事業用資産、国外財産など、評価が複雑な財産がある場合や、生前贈与・相続時精算課税の適用関係が分かりにくい場合は、早い段階で税理士へ相談することを検討してください。記事内の説明だけで、個別の評価額や適用関係を確定させることはできません。
申告期限を過ぎた場合
申告期限をすでに過ぎている場合は、そのままにせず、速やかに税務署または税理士へ確認し、期限後申告・納付へ進んでください。期限後申告や納付額の不足には、加算税や延滞税がかかる場合があります。
申告後に財産や誤りが見つかった場合
申告を済ませた後に新たな財産が見つかった場合や、内容に誤りがあった場合は、税額が増えるときは修正申告、税額が減る可能性があるときは更正の請求等の対象になり得ます。該当する場合は、税務署または税理士へ確認してください。
手続きの流れ
- 申告・納付期限を確定する
- 相続人・財産・債務等を整理する
- 申告のおおよその要否を判断する
- 遺産分割の状況を確認する
- 財産を評価する
- 税額を計算する
- 亡くなった年に対応する申告様式を入手する
- 申告書を作成する
- 添付書類をそろえる
- e-Taxまたは書面で申告する
- 期限内に納付する
- 申告・納付の記録を保管する
一つの流れとして書いていますが、遺産分割が未了の場合や複雑な財産がある場合は、途中の段階で税務署または税理士への相談をはさむ前提で進めてください。
申告書の提出先は、原則として被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地ではありません。e-Tax、郵送、税務署への持参等で提出できます。利用できる方法や必要書類は、最新の国税庁の案内で確認してください。
必要なもの
必要書類は、多くの人に共通しやすいものと、状況に応じて追加するものに分けて確認します。
共通して必要になりやすいもの
- 相続関係を確認できる戸籍または法定相続情報一覧図等
- 遺言書または遺産分割協議書等
- 財産の種類・価額を確認できる資料
- 債務・葬式費用に関する資料
- 生前贈与に関する資料
- 申告する人の個人番号・本人確認に関する資料(書面で申告する場合等)
- 納付方法の準備
状況に応じて追加するもの
- 配偶者の税額軽減の添付書類
- 小規模宅地等の特例の添付書類
- 遺産分割が未了の場合の所定書類
- 延納・物納を申請する場合の書類・担保関係資料
- 財産の種類ごとの評価資料
具体的にどの書類が必要かは、亡くなった年に対応する国税庁の「相続税の申告のしかた」や提出書類一覧で確認してください。
期限・いつまでに
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告期限 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 |
| 納付期限 | 申告期限と同じ日 |
| 期限が土日祝等にあたる場合 | 翌日が期限になる |
| 遺産分割が未了の場合 | 期限は延びない。期限内にいったん申告・納付する |
| 延納・物納を申請する場合 | 原則として申告期限までに申請する |
申告期限と納付期限は同じ日です。申告さえ済ませれば納付は後でよい、という扱いにはなりません。
遺産分割が終わっていないことは、期限を延ばす理由にはなりません。分割がまとまっていない場合でも、いったん期限内に申告・納付を済ませ、分割が確定した後にあらためて手続きを行います。
納付方法
相続税の納付は、金銭による一括納付が原則です。主な納付方法として、次のようなものがあります。
- e-Taxを利用した電子納税等
- クレジットカードによる納付等
- 金融機関または税務署の窓口での納付
手元の資金で一括納付することが難しい場合は、延納・物納という例外的な制度があります。延納は、税額が一定額を超え、金銭による一括納付が困難であることなどの要件があり、担保の提供や利子税が関係します。物納は、延納によっても金銭で納めることが難しい場合等に検討する制度です。どちらも、原則として申告期限までに申請する必要があり、認められるかどうかは審査によって決まります。
具体的に利用できる納付方法や、延納・物納の要件・手続きの詳細は、最新の国税庁の案内で確認してください。
相談先
相続税の申告・納付に関する相談先は、内容によって役割が分かれます。
税務署・国税庁
- 相続税の一般的な制度や手続き
- 申告書の提出先や提出方法
- e-Taxの利用や納付手続き
- 延納・物納の申請方法
- 国税庁が公開している資料の確認
税理士
- 個別の財産評価
- 申告義務の有無についての個別判断
- 税額の計算
- 申告書の作成・提出の代理
- 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用可否の判断
- 遺産分割が未了の場合、国外財産、非上場株式、事業用資産等がある複雑な案件
一般的な確認は税務署・国税庁、個別の判断や申告書作成は税理士、という役割の違いを意識して相談先を選んでください。
公式リンク
- 国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」
- 国税庁「相続税がかかる場合」
- 国税庁「相続税の計算」
- 国税庁「相続人の中に養子がいるとき」
- 国税庁「相続税の申告のために必要な準備」
- 国税庁「相続税の申告と納税」
- 国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」
- 国税庁「配偶者の税額の軽減」
- 国税庁「相続税の延納」
- 国税庁「延納・物納申請等」
- 国税庁「相続税の申告のしかた(亡くなった年分用)」
- 国税庁「相続税の申告書等の様式一覧(亡くなった年分用)」
- 国税庁「相続税の申告手続」
- e-Tax「相続税申告に関するFAQ」
注意点
- 基礎控除額の計算に使う「法定相続人の数」は、現在実際に財産を取得する人の人数をそのまま使うとは限りません。相続放棄や養子がある場合は、税法上の数え方を確認してから計算してください。
- 相続放棄をした人がいても、基礎控除額の計算では、その放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。
- 養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子は原則として実子がいる場合1人まで、実子がいない場合2人までです。ただし、特別養子など実子として扱われる人がいるため、家族関係によって数え方が変わる場合があります。
- 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うことで税額が0円になる場合でも、申告そのものは必要です。「税額が0円だから申告しなくてよい」とは限りません。
- 申告書は、亡くなった年に対応する様式を使います。年によって様式が変わることがあるため、古い様式を流用しないでください。
- 遺産分割が終わっていない場合でも、申告期限は延びません。期限内にいったん申告・納付し、分割後に見直す前提で進めます。
- 相続税の申告書は、複数の財産取得者が連署してまとめて提出する場合と、各人が別々に提出する場合があります。e-Taxで財産取得者本人が送信する場合は、財産取得者ごとに申告書を送信します。税理士等が代理送信する場合は、複数人分をまとめて送信できることがあります。提出方法や個人番号・利用者識別番号の扱いは、国税庁の案内を確認してください。
- 期限後の申告や、納付額が不足していた場合には、加算税や延滞税がかかることがあります。
チェックリスト
あわせて確認する
- 預貯金等の相続手続きをする:預貯金の払戻しや解約を進める場合、残高や入金の記録は財産の整理や納税資金の準備にも関係します。
- 準確定申告をする:被相続人の所得税について申告が必要な場合は、相続税とは別の4か月期限があるため、あわせて確認します。