遺産分割協議書を作成する

対象読者・更新日

  • 対象読者:遺産分割協議が成立し、これから合意内容を書面にまとめる共同相続人の方
  • 更新日:2026年9月26日

概要

相続人全員での話し合いによって遺産の分け方が決まったら、その合意内容を「遺産分割協議書」という書面に残す必要があります。遺産分割協議書は、相続登記や預貯金の解約・名義変更など、その後の相続手続きで内容を証明する書類として使われます。

このページは、遺産分割協議がすでに成立している方を対象に、協議書として書面化する際に押さえるべき基本事項と、相続人全員による確認・署名押印の進め方を案内します。遺産の分け方そのものを決める話し合いの進め方は扱いません。合意形成についてはこの前に確認する記事をご覧ください。

このページを最後まで読むことで、ご自身で協議書を作成できる状態かどうか、そしてどのような場合に専門家へ相談したほうがよいかを判断できるようになります。

このページで分かること

  • 遺産分割協議書を作成できる前提が整っているかどうか
  • 協議書に記載すべき基本事項
  • 財産を提出先が特定できる形で記載する必要性
  • 相続人全員による確認・署名押印の基本的な考え方
  • 実印・印鑑証明書が必要になる代表的な場面
  • 作成部数や原本の保管、提出先ごとに確認すべきこと
  • 自分たちで作成してよい範囲か、専門家に相談したほうがよい範囲か

この前に確認する

このページは、遺産分割協議がすでに成立していることを前提にしています。

まだ相続人全員での話し合いがまとまっていない場合は、先に**「遺産分割協議をする」**の記事で合意形成の進め方をご確認ください。合意ができていない内容を書面にしても、遺産分割協議書としては成立しません。

最初にやること

まず、次の内容を相続人全員で最終確認します。

  • 合意した内容(誰が何を取得するか)
  • 相続人の範囲に漏れがないか
  • 対象となる財産に漏れがないか

そのうえで、協議書をどこへ提出する予定かを確認し、提出先ごとに必要な部数や必要書類を把握しておきます。相続登記や金融機関の手続きでは、提出先によって求められる部数や原本還付の可否が異なるためです。

状況別

不動産を含む場合

不動産を相続する内容が含まれる場合は、登記事項証明書等の記載と一致する表現で、所在・地番・家屋番号などを特定できるように記載する必要があります。表記が実際の登記と食い違うと、相続登記の手続きに影響することがあります。

預貯金・有価証券等を含む場合

預貯金や有価証券などを含む場合は、金融機関等が口座や証券を特定できるように記載します。支店名や口座番号などどこまでの情報が必要かは金融機関によって異なるため、各機関の相続手続き案内で確認してください。

複数の提出先で使う場合

相続登記や複数の金融機関など、複数の提出先へ協議書を使う場合は、作成前に必要な部数と原本還付の可否を確認しておくと、あとから作成し直す手間を減らせます。

協議書の作成が不要なケース

次のような場合は、遺産分割協議書の作成が不要、または別の書類で足りることがあります。

  • 有効な遺言に従って手続きを進め、遺産分割協議を行わない場合(ただし遺言に記載のない財産がある場合は、その部分について協議が必要になることがあります)
  • 相続人が1人だけである場合
  • 法定相続分どおりに手続きを進め、提出先が協議書を求めない場合
  • 家庭裁判所の調停調書・審判書などにより、分割内容がすでに確定している場合

該当する可能性がある場合も、提出先が協議書を求めるかどうかは手続きごとに異なるため、事前に確認してください。

あなたの場合はこちら

次に当てはまる場合は、このページでの作成を進める前に、別の記事や専門家の確認が必要です。

  • 遺産分割協議がまだ成立していない方は、「遺産分割協議をする」の記事で合意形成の進め方をご確認ください。
  • 相続人の範囲が確定していない方は、「相続人を確認する」の記事で範囲を確定してください。相続人に漏れがあると、後の手続きや再協議に影響します。
  • 相続財産が確定していない方は、「相続財産を調査する」の記事で財産を確定してください。
  • 相続人の中に未成年者や成年被後見人がいる場合は、通常の本人による署名・押印とは異なる対応(代理・利益相反の確認等)が必要になることがあります。家庭裁判所や弁護士・司法書士へご確認ください。
  • 相続人の中に海外に居住している方がいる場合は、国内の印鑑証明書に代わる書類が必要になることがあります。法務局や提出先、専門家へご確認ください。
  • 話し合いをしても協議がまとまらない場合は、協議書の作成では解決できないため、家庭裁判所の調停など次の手段を弁護士へご相談ください。

遺産分割協議書に記載する基本事項

遺産分割協議書には、全国共通の唯一の書式が定められているわけではありませんが、次の単位で整理して記載する必要があります。

  1. 文書名(遺産分割協議書であることが分かるタイトル)
  2. 被相続人を特定する情報
  3. 相続が開始した事実
  4. 相続人全員で協議し、合意した旨
  5. 誰がどの財産を取得するか
  6. 財産を特定する情報
  7. 協議が成立した日、または作成日
  8. 相続人全員の住所・氏名
  9. 相続人全員の署名・押印

このうち、不動産や預貯金などの財産を特定する情報(6)は、提出先の資料(登記事項証明書、金融機関の口座情報など)と一致させることが基本になります。特定のひな形をそのまま流用するのではなく、この単位ごとに、ご自身の合意内容と提出先の求める情報を照らし合わせて整理してください。

手続きの流れ

  1. 相続人全員で、合意内容・相続人の範囲・対象財産を最終確認する
  2. 誰がどの財産を取得するかを、基本事項の単位に沿って整理する
  3. 不動産は登記事項証明書等、預貯金等は金融機関等の案内と照合しながら、財産を特定できる形で記載する
  4. 提出先ごとに必要な部数を確認したうえで、協議書を作成する
  5. 相続人全員が記載内容を確認する
  6. 相続人全員が署名・押印する(相続登記など実印が必要な場面では、印鑑証明書もあわせて準備する)
  7. 各提出先へ提出し、原本還付の可否を確認する

内容によって手順の前後が変わる場合もあるため、実際の作成順は状況に合わせて調整してください。

必要なもの

  • 相続人全員の合意内容(誰が何を取得するかが分かるもの)
  • 被相続人を特定する情報(前工程で確認した戸籍等)
  • 財産を特定する資料(不動産の登記事項証明書等、預貯金・有価証券等の口座情報等)
  • 相続人全員の実印・印鑑証明書(相続登記など実印での押印が必要な提出先を利用する場合)

実印・印鑑証明書がすべての提出先で必ず必要というわけではありません。どの範囲で必要になるかは提出先によって異なるため、状況別と相談先を確認しながら、提出先ごとに必要書類を確認してください。

期限・いつまでに

遺産分割協議書そのものの作成について、いつまでに仕上げなければならないという期限を一律に案内することはできません。ただし、協議書を使って進める関連手続きには、次のような期限があります。合意ができたら、早めに作成に取りかかることをおすすめします。

  • 相続登記:不動産を遺産分割によって取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記を行う必要があります。これは協議書自体の作成期限ではなく、協議成立後に生じる相続登記の期限です。詳しい手続きは相続登記に関する記事で確認してください。
  • 相続税の申告・納付:相続税の申告が必要になる場合は、対象になるかどうかの判断や申告手続きに時間がかかることがあります。該当する可能性がある場合は、早めに税務署または税理士へご確認ください。

相談先

相談内容 窓口
不動産の相続登記に関する相談 管轄の法務局、司法書士
預貯金・有価証券等の手続きに関する相談 各金融機関
未成年者・海外居住者がいる場合の対応 家庭裁判所、弁護士、司法書士
文案の法的効果・税務影響、複雑な条項の相談 弁護士、司法書士、税理士
協議がまとまらない場合の相談 家庭裁判所、弁護士

公式リンク

注意点

  • 遺産分割協議書に、全国共通の法定様式が定められているわけではありません。「決まった1種類の様式に従えばよい」と考えず、記載事項の単位を基準に整理してください。
  • 手書きで作成するか、パソコンで作成するかについて、一律のルールを断定することはできません。提出先によって扱いが異なる可能性があるため、迷う場合は提出先へ確認してください。
  • 財産をすべて1通の協議書にまとめなければならないわけではありません。財産や提出先ごとに分けて作成できる場合もあります。
  • 相続人の一部が欠けたまま作成したり、財産の一部が漏れたまま作成したりすると、後の手続きや再協議に影響することがあります。
  • 実印・印鑑証明書は、すべての提出先で一律に必要というわけではありません。提出先ごとに必要かどうかを確認してください。
  • 相続登記に添付する印鑑証明書について、「作成後3か月以内でなければならない」という制限はありません。この点は他の手続きの印鑑証明書の扱いと混同しやすいため、注意してください。
  • 内容を訂正する場合や書き直す場合の方法についても、一律のルールを断定せず、提出先の求め方を確認してください。
  • 協議書自体の作成期限と、相続登記の期限(成立日から3年以内)は別のものです。混同しないようにしてください。
  • 未成年者、成年被後見人、海外居住者などが相続人に含まれる場合は、通常の手続きと異なる対応が必要になることがあります。自己判断で進めず、専門家や家庭裁判所へご確認ください。

チェックリスト

あわせて確認する

  • 相続登記の手続き:不動産を取得した方は、協議書を使って相続登記を進めます。成立日から3年以内という期限があるため、続けて確認しておくとよいでしょう。
  • 預貯金等の相続手続き:預貯金や有価証券を取得した方は、協議書を使って金融機関等での手続きに進みます。

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