相続財産を調査する

対象読者

  • 相続人の確認と戸籍収集を進め、次に相続財産を調べたい方
  • 亡くなった方の財産状況を十分に把握していない方
  • 預貯金や不動産だけでなく、借金や未払金も含めて調べたい方
  • 相続放棄を検討する可能性があり、早めに財産状況を把握したい方
  • 遺産分割協議や相続税申告の前提となる財産一覧を作りたい方

更新日

2026年9月26日


概要

相続では、亡くなった方の財産上の権利だけでなく、借金などの義務も相続人が引き継ぐ対象になり得ます。そのため相続財産の調査では、預貯金や不動産などのプラスの財産と、借入金や未払金などの債務の両方を確認する必要があります。

この記事は、亡くなった方の財産の全体像がまだ分からない相続人の方を対象としています。まず手元の書類や郵便物、通帳などから取引先の手がかりを集め、金融機関や関係機関へ確認し、判明した内容と未確認の内容を財産目録として整理するところまでを案内します。

なお、財産の詳しい評価額を確定することや遺産分割そのものは、この記事の対象ではありません。

相続放棄などを検討する場合は、原則3か月の期限があります。財産調査を進めながら、この期限を意識しておく必要があります。

このページで分かること

  • 調査対象を「プラスの財産」と「マイナスの財産(債務)」に分けて把握する考え方
  • 手元の資料から調査の手がかりを集める方法
  • 不動産・預貯金・有価証券・生命保険・債務などの確認先
  • 判明した内容と未確認の内容を財産目録へ整理する方法
  • 相続放棄・遺産分割・相続税申告など、次の工程へ進むための判断材料

この前に確認する

相続財産の調査を始める前に、次の内容を確認しておくと、調査をスムーズに進められます。

ただし、借金や保証債務の可能性があり相続放棄を検討している場合は、これらの確認が終わるのを待たず、財産・債務の調査を並行して始めてください。期限のある判断につながるためです。

最初にやること

亡くなった方の通帳、キャッシュカード、郵便物、契約書、固定資産税関係の書類、メールなどを一か所に集め、財産と債務の手がかりを一覧にします。

書類がすべてそろってから始めるのではなく、見つかったものから記録を始めてください。

まず調べる対象を分ける

相続財産の調査では、プラスの財産だけでなく、借金や未払金などの債務も同じ重要度で確認します。債務を見落とすと、相続放棄などの判断を誤るおそれがあります。

プラスの財産(例) マイナスの財産・債務(例)
現金 借入金
預貯金 クレジットカードの利用残高
不動産 税金・医療費・公共料金・家賃などの未払金
株式・投資信託・債券などの有価証券 保証債務など、存在が疑われる負担
自動車・貴金属・骨董品などの動産
貸付金・未収金・還付金などの債権
事業用資産・事業上の債権債務(両方に関係)

生命保険契約や死亡保険金については、契約上の受取人固有の権利となる場合があり、必ずしもこの表のプラスの財産と同じ扱いになるとは限りません。財産調査の段階では「確認すべき関連項目」として扱い、後の章で個別に説明します。

状況別に確認すること

ご自身の状況に近いものを確認してください。

  • 借金や督促状が見つかった:プラスの財産より先に、相続放棄の期限を意識しながら債務の調査を並行して進めます。
  • 不動産の所在が分からない:法務局の証明制度などを利用して確認します。
  • 取引金融機関が分からない:通帳、カード、郵便物、入出金記録などから候補を探します。亡くなった方が生前に預貯金口座へマイナンバーを付番していた場合は、金融機関で「相続時照会」を申し込むことで、対象となる付番口座の所在をまとめて確認できる場合があります。未付番口座や一部の対象外金融機関は別途調査が必要です。
  • 保険契約が分からない:保険証券や控除証明書、口座引き落としの記録などを確認し、必要に応じて契約照会のしくみの利用を検討します。
  • ネット上の資産がありそう:ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネーなどは紙の郵便物がない場合があるため、メールやアプリなどから手がかりを探します。
  • 個人事業・会社経営をしていた:事業用の資産と債権債務が個人の財産と混在している場合があるため、通常の財産調査に加えて専門家への相談を検討します。
  • 相続人同士で情報共有が難しい:調査記録や取得した資料、照会結果を保存し、紛争性がある場合は専門家へ相談します。
  • 海外財産がありそうな場合:通常の国内調査の手順だけでは対応が難しいため、専門家への相談を検討します。

相続放棄を検討している場合は、財産を処分・解約せず、家庭裁判所または弁護士へ早めに相談してください。

相続財産を調査する手順

  1. 手元の資料を一か所へ集める
  2. 財産・債務の候補一覧を作る
  3. 不動産を確認する
  4. 預貯金を確認する(取引金融機関が分からない場合は相続時照会の対象も確認する)
  5. 有価証券・保険・その他の資産を確認する
  6. 借入金・未払金・保証債務の手がかりを確認する
  7. デジタル上の資産・契約を確認する
  8. 残高・価額の基準日をそろえる
  9. 財産目録へ記録する
  10. 未確認事項と次の照会先を残す
  11. 相続放棄・遺産分割・相続税などの次の工程を判断する

財産の種類別の調べ方

不動産

  • 主な手がかり:固定資産税の納税通知書、権利証、登記事項証明書など
  • 確認先:法務局
  • 確認する内容:亡くなった方名義の不動産の有無。2026年2月2日から始まった所有不動産記録証明制度を利用すると、亡くなった方名義の不動産一覧の証明を請求できます。請求要件や必要書類、手数料などは法務局の最新の案内で確認してください。

預貯金

  • 主な手がかり:通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物、口座振替の記録など
  • 確認先:取引が判明した金融機関。取引金融機関が分からない場合は、相続時照会の申込みを受け付ける金融機関
  • 確認する内容:口座の有無、残高証明や取引履歴の取得方法、相続手続きに必要な書類

2025年4月1日から預貯金口座付番制度等が拡充されました。亡くなった方が生前に預貯金口座へマイナンバーを付番していた場合、相続人は任意の金融機関で「相続時照会」を申し込むことで、一部手続きの対象外となる金融機関を除き、亡くなった方のマイナンバーが付番された預貯金口座の所在を確認できます。相続時照会はマイナポータルからは申し込めません。

相続時照会で確認できるのは、対象となる付番口座の所在です。残高証明や取引履歴の取得は、口座が判明した金融機関へ別途確認してください。また、マイナンバーが付番されていない口座、一部手続きの対象外となる金融機関、金融機関側の管理状況などにより付番されていない口座は、この照会だけでは把握できません。通帳・郵便物・入出金記録などから探す方法も併用してください。

相続時照会の必要書類・手数料・対象外金融機関は、デジタル庁と申込先金融機関の最新案内で確認してください。

有価証券

  • 主な手がかり:証券会社からの郵便物、取引報告書、配当通知、確定申告資料、口座引き落としの記録など
  • 確認先:取引が判明した証券会社など
  • 確認する内容:口座・保有商品の有無、残高確認の方法、相続手続きの進め方

生命保険

  • 主な手がかり:保険証券、保険料控除証明書、口座引き落としの記録、郵便物など
  • 確認先:契約が判明した保険会社。契約先が分からない場合は、生命保険契約照会制度の利用を検討します。
  • 確認する内容:契約の有無、死亡保険金の請求方法。死亡保険金は契約上の受取人固有の権利となる場合があり、遺産分割の対象と一律に決まるものではありません。取り扱いに迷う場合は専門家へ確認してください。

動産(自動車・貴金属・骨董品など)

  • 主な手がかり:自宅や保管場所にある現物、購入時の契約書や領収書など
  • 確認先:該当する事業者や専門家
  • 確認する内容:所有の有無や状態。詳しい評価方法は、この記事の対象ではありません。

借入金・クレジットカード・未払金

  • 主な手がかり:借用書、ローンの返済予定表、請求書、督促状、クレジットカードの明細、税金・公共料金・医療費・家賃などの未払いに関する資料
  • 確認先:借入先の金融機関・貸金業者・クレジットカード会社、市区町村、税務署など
  • 確認する内容:残高や未払金額、支払い方法。信用情報機関への開示請求が利用できる場合がありますが、対象となる債務や必要書類、照会できる範囲は機関ごとに異なります。また、個人間の借入や保証債務、税金・公共料金などは信用情報だけでは把握できない可能性があるため、「信用情報を確認したから債務はない」と判断しないようにしてください。

事業用資産・事業上の債権債務

  • 主な手がかり:事業用の帳簿、契約書、請求書など
  • 確認先:取引先、専門家(税理士など)
  • 確認する内容:事業に関する資産と債務の内容。個人の財産と混在しやすいため、専門家への相談を検討してください。

デジタル資産(ネット銀行・ネット証券・暗号資産・電子マネーなど)

  • 主な手がかり:メール、スマートフォンやパソコンのアプリ、ブックマーク、パスワード管理の記録、確定申告資料、口座の入出金記録など
  • 確認先:該当するサービスの事業者
  • 確認する内容:口座・契約の有無、相続手続きの方法。亡くなった方の端末やアカウントへの無断ログイン、不正アクセスに当たる行為は行わず、各事業者の正式な相続手続きを確認してください。

期限・いつまでに

相続財産の調査そのものに、全国一律で定められた独立の完了期限があるとは限りません。ただし、次の期限のある判断に直結するため、早めに着手する必要があります。

関連する手続き 期限の目安 起算点
単純承認・限定承認・相続放棄の選択 原則3か月以内 自己のために相続の開始があったことを知った時
熟慮期間の伸長の申立て 上記の3か月の期間内に検討・申立て 同上
相続税の申告・納付 原則10か月以内(詳細は別記事で確認してください) 相続の開始を知った日の翌日
相続登記 原則、不動産の取得を知った日から3年以内など(詳細は別記事で確認してください) 所有権の取得を知った日など

財産調査は「3か月以内に完了しなければならない」ものではありません。ただし、相続放棄などを検討する場合は、原則3か月の熟慮期間があるため早めに着手し、期限内に判断できるよう調査を進める必要があります。調査を進めても期限内に判断できない場合は、完了を待たず家庭裁判所や弁護士へ相談してください。

相続税の申告の可能性がある場合は、原則10か月の申告期限を見据えて財産調査を早めに進めておくと安心です。

調査に必要なもの

調査の各段階で手がかりとなる資料の例です。

  • 通帳、キャッシュカード
  • 金融機関・証券会社・保険会社からの郵便物
  • 契約書、保険証券、控除証明書
  • 固定資産税関係の書類、登記事項証明書
  • 借用書、ローンの返済予定表、請求書、督促状
  • クレジットカードの明細
  • 税金・公共料金・医療費・家賃などの未払いに関する資料
  • メール、スマートフォンやパソコンのデータ

金融機関などへ相続手続きを照会する際に必要となる本人確認書類や委任に関する書類、手数料などは、機関ごとに異なるため、確認先で個別に確認してください。

財産目録へ整理する

判明した内容と未確認の内容を、次のような項目で財産目録に整理します。未確認の事項も「存在しない」とせず、未確認のまま記録して次の照会先を残しておきます。

財産・債務の種類 名義・契約先 所在・口座・契約を特定する情報 死亡日時点の残高または価額 根拠資料 確認済み/未確認 次の手続き 備考
(記入例)預貯金 ○○銀行 支店・口座番号など 残高証明取得後に記入 通帳・郵便物 未確認 銀行へ残高証明を照会

この財産目録は、記入例を示すものであり、相続税申告などに使う正式な様式ではありません。

相談先

調査の中で、次のような相談先へ確認します。確認する際は「確認してください」だけで終わらせず、次のような点も併せて尋ねると、必要な行動が具体的になります。

  • 相続人が残高や契約内容を確認できるか
  • どの時点の残高が必要か
  • 取引履歴をどの期間まで取得できるか
  • 必要な戸籍・本人確認書類・委任に関する書類は何か
  • 手数料と申請方法は何か
  • 他の相続人の同意が必要か
  • 契約・債務が存在しない場合、どのような回答や証明が得られるか
確認先 主な確認内容
家庭裁判所 相続放棄・限定承認・熟慮期間の伸長の手続き
弁護士 債務超過、保証債務、財産処分の可否、相続人間の紛争、相続放棄の判断
司法書士 不動産調査、登記事項の確認、相続登記、法務局の手続き
税理士 相続税申告の要否、財産評価、債務控除、名義財産などの税務判断
法務局 所有不動産記録証明書、登記事項証明書などの請求方法
金融機関 口座の有無、残高証明、取引履歴、相続手続きに必要な書類。対象となる場合は相続時照会の申込み方法・受付条件
証券会社など 証券口座、保有商品、残高確認、相続手続き
生命保険会社・生命保険協会 保険契約の有無、死亡保険金の請求、契約照会のしくみ
信用情報機関 相続人による信用情報開示の対象・必要書類・範囲
市区町村・税務署など 未納税、還付金、固定資産税に関する資料、各種の公的な債権債務
各デジタルサービスの事業者 アカウント・残高・契約の相続手続き

公式リンク

注意点

  • 相続財産の調査は、必ずすべての財産を発見できることを保証するものではありません。手がかりが見つからない場合でも、確認できなかったことと、財産や債務が存在しないことは区別してください。
  • 預貯金の相続時照会も、亡くなった方のすべての口座を必ず発見できる制度ではありません。マイナンバーが付番されていない口座や一部手続きの対象外となる金融機関などは、別途調査が必要です。
  • 相続放棄を検討している場合は、財産を処分したり、口座を解約したりする前に、家庭裁判所または弁護士へ相談してください。
  • 死亡保険金は、契約上の受取人固有の権利となる場合があり、必ず遺産分割の対象になるとは限りません。
  • 信用情報機関への開示請求だけで、すべての債務を把握できるとは限りません。個人間の借入や保証債務、税金・公共料金などは別途確認が必要です。
  • デジタル資産の調査では、亡くなった方の端末やアカウントへの無断ログインは行わず、各事業者の正式な相続手続きを確認してください。
  • この記事は財産調査の進め方を案内するものであり、財産の評価額の計算、相続税申告書の作成、遺産分割協議の進め方、名義変更の実行手続きなどは扱いません。詳しくは別記事や専門家への相談を確認してください。

チェックリスト

あなたの場合はこちら

財産・債務の調査を進める中で、状況に応じて次のような判断が必要になる場合があります。

  • 債務超過の可能性がある、または内容が分からず相続を迷う場合:相続放棄・限定承認に関する手続きや、家庭裁判所・弁護士への相談を確認してください。
  • 財産・債務の一覧がまとまった場合:遺産分割協議を進めるための確認へ進んでください。
  • 不動産が判明した場合:相続登記に関する手続きの確認へ進んでください。
  • 財産額や内容から相続税申告の可能性がある場合:相続税申告の要否を確認する手続きや、税理士・税務署への相談を確認してください。

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