相続財産清算人(旧:相続財産管理人)の選任を申し立てる

対象読者:被相続人の相続人がいるかどうか明らかでない場合や、相続人全員が相続放棄したことで相続する者がいなくなった場合に、相続財産の処理について申立てを検討している人(債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者などの利害関係人を含む)

更新日:2026年10月2日

概要

現在の正式名称は「相続財産清算人」です。以前は「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、2023年4月1日施行の民法改正により名称が変わりました。「相続財産管理人」という呼び方で情報を探している場合も、現在案内されている制度は同じものです。

相続財産清算人は、被相続人に相続人がいるかどうか明らかでない場合や、相続人全員が相続放棄したことで相続する者がいなくなった場合に、家庭裁判所への申立てにより選任されます。選任された清算人は、相続財産を管理し、債務の支払いなどの清算を行います。清算後に財産が残った場合は、特別縁故者への分与が行われることがあるほか、最終的には国庫に帰属することがあります。

この記事は、こうした状況にある読者が、自分の立場でこの申立てを検討できるかどうかを判断し、申立先、必要な費用、必要書類、申立てから選任までの一般的な流れを把握したうえで、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ事前に確認してから申立てへ進めるようになることを目指します。制度の詳しい解説や、清算人選任後の清算事務そのものについては、この記事の範囲外です。

このページで分かること

  • 相続財産清算人(旧:相続財産管理人)の制度がどのような場合に問題になるか
  • 自分がこの申立てを検討できる立場に当たり得るか
  • 申立先となる家庭裁判所の考え方
  • 申立てにかかる標準的な費用と、予納金が必要になる可能性
  • 標準的に必要となる書類
  • 申立てから選任までの一般的な流れ
  • 申立て前に確認しておくべきこと

この前に確認する

この記事は、相続人がいない、または明らかでないという状況を前提に案内しています。次のいずれかに当てはまる場合は、先にそちらを確認してください。

申立てが必要となる代表的な状況

状況 本制度を検討する目安
相続人がいるか分からない 相続人調査を行い、それでも明らかでない場合に検討します
相続人全員が相続放棄した 相続する者がいなくなった場合に検討します
債権回収・不動産処理等が必要 利害関係人として申立資格と費用対効果を確認します
特別縁故者として財産分与を希望 清算人選任後の別手続きも見据えて確認します
相続人が確定している 原則として通常の相続手続きへ進みます

最初にやること

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を確認し、申立資格・必要書類・予納金の見込みを事前に確認します。

申立てができる人

申立てができるのは、利害関係人または検察官です。

利害関係人の代表例としては、次のような立場の人が挙げられます。

  • 被相続人の債権者
  • 特定遺贈を受けた人
  • 特別縁故者として財産分与を希望する人

これらの代表例に当てはまる場合でも、実際に個別の事件で申立資格があるかどうかは、家庭裁判所への確認が必要です。自己判断だけで申立てを進めず、事前に確認してください。

状況別に確認すること

相続人全員が相続放棄した場合

相続人全員の相続放棄が受理され、相続する者がいなくなったことを確認したうえで検討します。

債権者として申し立てる場合

利害関係人として申立てを検討できますが、申立ての目的(債権回収など)が実際に達成できるかどうかは別問題です。費用対効果もあわせて確認してください。

特別縁故者として申し立てる場合

特別縁故者への財産分与は、この記事で扱う選任申立てとは別の手続きです。分与を希望する場合も、まず清算人の選任が前提となる場合があります。分与そのものの要件や申立時期については、別途確認が必要です。

不動産・空き家がある場合

相続財産に不動産や空き家がある場合、手続きが複雑になりやすく、予納金や売却の見込みが重要な検討事項になります。専門家への相談も検討してください。

清算人候補者を考えている場合

申立ての際に候補者を挙げることはできますが、その候補者がそのまま選任されるとは限りません。選任の判断は家庭裁判所が行います。

手続きの流れ

  1. 相続人の有無と相続放棄の状況を確認します。
  2. 相続財産の内容と申立ての目的を整理します。
  3. 管轄の家庭裁判所へ、必要書類や費用について確認します。
  4. 戸籍、財産に関する資料、利害関係を示す資料を収集します。
  5. 申立書、財産目録、相続関係図などを作成します。
  6. 家庭裁判所へ申立てを行います。
  7. 家庭裁判所からの追加資料の提出、照会、呼出しに対応します。
  8. 予納金を求められた場合は、納付するかどうかを検討します。
  9. 家庭裁判所による選任の判断を待ちます。

期限・いつまでに

申立てそのものについて、全国共通の一律の期限は、家庭裁判所の公式案内では確認できません。

ただし、「期限がないから急がなくてよい」ということではありません。相続財産の散逸を防ぐ必要がある場合や、空き家の管理、債権回収などを進める必要がある場合は、早めに家庭裁判所や専門家へ相談することが推奨されています。これは法律で定められた期限ではなく、実務上の推奨時期として区別してください。

なお、特別縁故者への財産分与を申し立てる場合は、相続人捜索の公告期間が満了してから一定期間内という別の期限があります。この記事では選任申立てまでを扱うため、分与の期限については別途確認してください。

費用・予納金

申立てには、次のような費用がかかります。

  • 収入印紙:800円
  • 郵便料:申立先の家庭裁判所ごとに異なります
  • 官報公告料:5,075円。この費用は、申立て時ではなく、家庭裁判所からの指示があった後に納付します。先に納付しないよう注意してください。

これらに加えて、相続財産だけでは管理費用や清算人の報酬などをまかなえない可能性がある場合、予納金の納付を求められることがあります。

予納金については、次の点に注意してください。

  • 金額は個別の事件ごとに家庭裁判所が判断するため、全国共通の金額はありません。申立先の家庭裁判所へ確認してください。
  • 高額になる場合があります。
  • 納付した予納金が、後から全額返還されるとは限りません。全部または一部が返還されないこともあります。

予納金を含めた費用と、申立ての目的(債権回収、不動産処理など)が実際に達成できる見込みとを比較し、費用対効果を慎重に検討したうえで申立てるかどうかを判断してください。

必要なもの

標準的には、次のような書類が必要です。

  • 申立書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍等
  • 相続人が存在しないことを確認するために必要となる、親族関係に関する戸籍等
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 不動産、預貯金、有価証券などの財産に関する資料
  • 申立人が利害関係人であることを示す資料
  • 清算人候補者がいる場合は、その候補者の住民票または戸籍の附票
  • 財産目録
  • 相続関係図

相続人が存在しないことを示すために必要な戸籍の範囲は、状況によって異なり複雑になることがあります。詳しくは公式の一覧を確認したうえで、申立先の家庭裁判所へ事前に確認してください。また、申立て時点で入手できない戸籍などがある場合、申立て後の追加提出で対応できる場合があります。

裁判所へ提出する資料は、個人番号(マイナンバー)の記載がないものを用いるよう案内されていることがあります。申立先の案内をあわせて確認してください。

相談先

  • 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所:申立先、必要書類、費用、予納金の見込みなどの確認
  • 弁護士:申立資格の判断、債権回収、不動産処理、特別縁故者としての分与、費用対効果の検討など
  • 司法書士:戸籍の収集や相続関係の整理に関する相談(対応できる範囲は事務所によって異なるため、事前に確認してください)

公式リンク

注意点

  • 「相続財産管理人」は旧称です。現行の名称である「相続財産清算人」と混同しないようにしてください。
  • 相続人調査が十分に行われていない段階で、「相続人がいない」と自己判断しないでください。
  • 申立てをした人が、そのまま清算人に選任されるわけではありません。
  • 申立てをすれば、必ず目的(債権回収、不動産処理など)を達成できるというわけではありません。
  • 不動産が必ず売却できるとは限りません。
  • 一般の債権者が優先的に全額を回収できるとは限りません。
  • 予納金が高額になる場合や、納付した予納金が返還されない場合があります。
  • 裁判所へ提出する資料は、個人番号の記載がないものを用いるよう案内を確認してください。
  • 申立て後も、追加資料の提出、照会、呼出しに対応する必要があります。
  • 特別縁故者への財産分与は、この記事で扱う選任申立てとは別の手続きです。選任申立てだけで財産を取得できるわけではありません。

チェックリスト

あなたの場合はこちら

  • 自分が相続人で、相続放棄を検討している場合:相続放棄をするを確認してください。相続財産清算人の選任申立てと相続放棄は別の手続きです。
  • 相続人が存在する場合:遺産分割協議をするなど、通常の相続手続きに関する案内を確認してください。
  • 特別縁故者として財産分与を希望する場合:「特別縁故者に対する相続財産分与を申し立てる」という別の手続きがあります(この記事では選任申立てまでを扱います)。
  • 相続人はいるが所在が不明である場合:不在者財産管理人の選任を申し立てるという、この記事とは別の制度が問題になることがあります。