不在者財産管理人の選任を申し立てる
対象読者・更新日
- 対象読者:共同相続人の一人など、財産に関係する人の所在が分からず、遺産分割その他の財産管理を進められない方
- 更新日:2026年10月1日
概要
不在者財産管理人とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない人(不在者)に代わって、その財産を管理・保存する人です。不在者に財産管理人がいない場合、家庭裁判所は申立てにより財産管理人を選任できます。制度の目的は、不在者本人と、不在者の財産について利害関係を持つ第三者の利益を保護することにあります。
共同相続人の一人の所在が分からず遺産分割協議を進められない場合など、相続の場面で問題になることが多い制度ですが、相続以外の財産管理・保存の必要から申立てが検討されることもあります。
なお、選任された管理人が遺産分割や不動産売却など、通常の管理権限を超える行為を行うには、別途家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。
このページでは、不在者財産管理人選任の申立てが自分の状況に関係するかを判断し、申立先・費用・必要書類・準備順序を確認して、家庭裁判所への申立て準備を始められるところまでを案内します。
このページで分かること
- 自分の状況に申立てが関係するか
- 申立人と申立先
- 費用と必要書類
- 不在の裏付け調査
- 選任後の主な流れ
- 別制度との違い
この前に確認する
このページを読む前に、次の記事を確認しておくと状況を整理しやすくなります。
- 相続人を確認する:不在者財産管理人選任が問題になるのは、相続人の範囲が確定している場合です。まず相続人が誰かを確認してください。
- 戸籍を集める(相続手続き用):不在者の所在調査や利害関係の確認には、戸籍関係の書類が必要になります。
- 相続財産を調査する:遺産分割を目的とする場合、相続財産の内容整理が申立ての前提になります。
- 遺産分割協議をする:遺産分割を目的として申立てを検討している場合、協議の進め方全体を確認しておくと、この記事の位置づけが分かりやすくなります。
(上記は主に遺産分割を目的とする場合に関係します。相続以外の目的で本記事を読んでいる方は、必要に応じて参照してください。)
最初にやること
不在者の戸籍・戸籍附票等を確認し、最後の住所と所在調査の経過を整理してください。
具体的には、最後の住所への郵便物が返送されていないか、現地の状況、親族への照会結果、警察への行方不明者届・捜索願の有無など、所在調査の経過が分かる情報を集めます。ただし、これらの調査方法のすべてが全国一律に必須と定められているわけではなく、確認方法の一例として扱われます。
申立てが関係する主な状況
所在が分からない人がいる場合でも、目的や状況によって適した制度が異なります。
| 制度 | 主な場面 |
|---|---|
| 不在者財産管理人 | 所在不明の人に財産管理人がおらず、財産管理・保存や遺産分割等を進める必要がある場合 |
| 失踪宣告 | 所在不明の人を法律上死亡したものとみなす必要がある場合 |
| 相続財産清算人 | そもそも相続人が存在しない場合 |
- 共同相続人の一人が所在不明で遺産分割を進めたい場合は、本記事が中心的に扱う場面です。ただし、管理人選任だけで遺産分割協議ができるわけではなく、別途権限外行為許可が必要です。
- 相続以外でも、配偶者や債権者など利害関係人が不在者本人の財産の保存・管理のために申立てを検討する場合があります。
- 所在不明の人を死亡したものとみなす必要がある場合は、不在者財産管理人ではなく失踪宣告が問題になります。
- そもそも相続人がいない場合は、相続財産清算人の選任が問題になります。
- 単に最近連絡が取れないだけで、所在調査がまだ十分でない場合は、まず調査と資料整理から始めます。
なお、行方不明の配偶者との離婚を目的とする場合は、不在者財産管理人選任や失踪宣告ではなく、離婚訴訟等の別の手続きが問題になります。本記事の対象範囲外のため、法律専門家への相談を案内します。
不在者に当たるか確認する
「連絡が取れない」ことと「不在者」に当たることは、同じではありません。次の点を目安に確認します。
- 従来の住所または居所を去っている
- 容易に戻る見込みがない
- 単なる連絡不通だけでは足りない
- 所在調査の経過を資料化できている
最終的には、家庭裁判所が申立書、資料、必要に応じた事情聴取等をもとに判断します。読者自身が「これで確実に不在者に当たる」と確定できるものではありません。
申立てができる人
申立てができるのは次の人です。
- 利害関係人
- 検察官
利害関係人の例には、次のような人が含まれます。
- 不在者の配偶者
- 相続人に当たる人
- 共同相続人
- 債権者
なお、誰でも申立てができるわけではありません。
申立先
不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所が基本です。
従来の住所地・居所地が分からない場合や、管轄の判断に迷う場合は、申立て候補先の家庭裁判所へ確認してください。
申立ての手順
一般的な流れは次のとおりです。実際の審理内容によって、照会や事情聴取、追加提出が求められることがあります。
- 不在者に当たり得る状況か確認する
- 不在者の戸籍・戸籍附票等を取得する
- 最後の住所、親族、郵便物等から所在を調査する
- 申立ての目的と、自分の利害関係を整理する
- 不在者本人の財産と、遺産分割目的の場合は相続財産・相続関係を整理する
- 管轄の家庭裁判所と、その裁判所固有の案内を確認する
- 申立書・財産目録・添付資料を準備する
- 申立費用を準備して提出する
- 家庭裁判所からの照会、事情聴取、追加提出に対応する
- 選任後、必要であれば権限外行為許可の申立てへ進む
家庭裁判所は、申立書と所在不明を裏付ける資料を確認するほか、申立人から事情を聴くことや、不在者の親族へ照会することがあります。申立てをしただけで、必ず管理人が選任されるとは限りません。
期限・申立てる時期
全国共通の申立期間が定められていることは確認できません。財産管理や遺産分割の必要が生じた時点で、所在調査、相続関係、財産資料などを整理して申し立てます。
遺産分割を目的とする場合、他の相続人間の協議案や相続関係・財産内容の整理が終わった後に申し立てるよう求める運用をしている裁判所もあります。ただし、これを全国一律の法定期限や絶対条件として扱うことはできません。申立先独自の案内がある場合は、その案内に従ってください。
費用
- 申立手数料:収入印紙800円分
- 連絡用の郵便料
- 予納金が求められる場合がある
郵便料の金額と納付方法は、申立先の家庭裁判所で確認してください。
不在者の財産から管理費用や報酬等を賄えない可能性がある場合、申立人に予納金の納付を求められることがあります。予納金の有無・金額は事案や裁判所によって異なるため、具体的な金額の目安はここでは示しません。
必要なもの
標準的には、次の書類が必要です。
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 財産管理人候補者を記載する場合、その候補者の住民票または戸籍附票
- 不在の事実を証する資料
- 不在者の財産に関する資料
- 利害関係人が申し立てる場合、利害関係を証する資料
不在の事実を証する資料の例には、次のようなものがあります。
- 戸籍附票・住民票等による最後の住所の確認
- 最後の住所へ送付して返送された郵便物
- 現地確認の報告
- 親族等への照会結果
- 警察への行方不明者届・捜索願に関する資料
- その他、所在調査の経過が分かる資料
これらのすべてが全国一律に必須というわけではなく、申立先の案内も併せて確認してください。
財産に関する資料の例には、不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写し、残高証明書、有価証券の残高が分かる書類などがあります。
利害関係を証する資料の例には、戸籍謄本、賃貸借契約書、金銭消費貸借契約書、相続関係を示す戸籍類などがあります。
遺産分割を目的とする場合、次のような資料が追加で求められる例があります。
- 相続関係図
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍類
- 相続人の戸籍類
- 遺産分割協議書案
- 相続財産の資料
申立て前に入手できない戸籍等は、申立て後の追加提出が認められる場合があります。審理上必要な追加資料を求められることもあります。提出部数、発行後の有効期間、独自の書式については、申立先の案内を確認してください。
財産管理人候補者について、資格が法律上一律に限定されているわけではありませんが、職務を適切に行えることが必要です。不在者との関係や利害関係の有無等を考慮して、家庭裁判所が適格性を判断します。弁護士や司法書士等の専門職が選任される場合もあります。候補者を記載しても、その人が必ず選任されるとは限りません。
遺産分割を目的として共同相続人を候補者にする場合、利益相反が問題になることがあります。全国一律に禁止されているわけではありませんが、候補者を立てる前に申立先の家庭裁判所へ確認することを強くおすすめします。
選任後に起きること
選任された管理人は、主に次のような職務を行います。
- 不在者の財産を調査する
- 財産目録を作る
- 財産を管理・保存する
- 家庭裁判所へ管理状況を報告する
- 必要に応じて継続的な報告を行う
遺産分割や財産処分等を行う場合は、この通常の職務とは別に、権限外行為許可の申立てが必要です。所在不明の相続人がいる場合、管理人が不在者に代わって遺産分割協議へ参加する方法がありますが、これも管理人の通常権限を超えるため、権限外行為許可が必要になります。遺産分割案、不在者の法定相続分、他の相続人間の合意状況等が審理に関係する場合もあります。不在者の法定相続分を確保すれば必ず許可されるというものではありません。
また、遺産分割目的の場合は、申立先の家庭裁判所の専用の手引きや追加書類を必ず確認してください。
重要な点として、遺産分割等、申立てのきっかけとなった当初の目的を果たしただけで、管理人の職務が当然に終了するわけではありません。職務は、次のような事情が生じるまで続く場合があります。
- 不在者が現れたとき
- 失踪宣告がされたとき
- 不在者の死亡が確認されたとき
- 不在者の財産がなくなったとき
管理人候補者となる方にとっても、申立人にとっても重要な判断材料になりますので、あらかじめ確認しておいてください。
相談先
| 相談先 | 確認できること |
|---|---|
| 申立先候補の家庭裁判所 | 管轄、必要書類、費用、手続きの一般的な流れ |
| 家庭裁判所の家事手続案内 | 一般的な手続きの案内 |
| 弁護士 | 個別の法律判断、代理人としての対応 |
| 司法書士 | 対応可能な範囲を確認したうえでの書類作成等の相談 |
| 法テラス | 法律相談窓口の案内、費用に関する制度の案内 |
家庭裁判所は一般的な手続き案内を行いますが、個別の法律判断や代理人としての助言を行う場所ではありません。
公式リンク
以下の公式情報で、制度の詳細を確認できます。
- 裁判所「不在者財産管理人選任」:制度の概要、申立人、申立先、費用、標準的な必要書類を確認できます。
- 裁判所「不在者財産管理人選任の申立書」:申立書、財産目録、相続関係図、記載例を確認できます。
- 裁判所「不在者の財産管理人の権限外行為許可」:遺産分割や財産処分など、通常の管理権限を超える行為の許可手続きを確認できます。
- 裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」:所在不明の相続人がいる場合の遺産分割、不在の審理、管理人の資格などを確認できます。
- 裁判所「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」:申立先ごとの郵便料や個別案内を確認する入口です。
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「家事事件手続法」
注意点
- 単なる連絡不通だけで不在者と決めつけないでください。
- 所在調査の経過と資料を残しておいてください。
- 候補者を記載しても、その人が必ず選任されるとは限りません。
- 遺産分割や財産売却には、別途権限外行為許可が必要です。
- 郵便料、提出部数、追加書類、予納金は、裁判所ごと、事案ごとに異なります。
- 申立ての目的を果たしても、管理人の職務が直ちに終了するとは限りません。
- 裁判所へ提出する書類は、マイナンバーの記載がないものを用いるよう、申立先の案内を確認してください。
- 提出した書類は返還されない場合があるため、控えを保管しておいてください。
(マイナンバーの記載に関する点と控えの保管については、申立先の案内を確認することとあわせてご確認ください。)
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