個人事業者の死亡届出書を提出する

概要

消費税の課税事業者だった個人事業者が亡くなったとき、その相続人は「個人事業者の死亡届出書」を提出する場面にあたる場合があります。この届出は、被相続人が消費税の課税事業者だったことを税務署へ知らせるための手続きです。

対象となるのは、死亡した個人事業者の相続人です。ただし、被相続人が死亡時に消費税の課税事業者でなかった場合や、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)だった場合には、確認すべき届出が異なります。

この記事では、届出の対象、提出時期、記載する内容、提出方法・提出先を確認し、あわせて死亡後の消費税申告や事業承継との関係まで案内します。死亡した事業者の消費税確定申告書の具体的な作成方法や、相続税申告、遺産分割などの民法上の相続手続については、この記事の範囲外です。

このページで分かること

  • 自分が「個人事業者の死亡届出書」を提出する場面にあたるかどうか
  • 「個人事業者の死亡届出書」と「適格請求書発行事業者の死亡届出書」の違い
  • 誰が届出者になるか、複数相続人がいる場合の考え方
  • 提出時期(「速やかに」)と、消費税・所得税側の申告期限との違い
  • 届出書に記載する主な内容
  • e-Tax・持参・送付という提出方法と、提出先
  • 消費税確定申告明細書の提出により死亡届出書の提出扱いとなる場合があること
  • 死亡届出とは別に確認が必要な、消費税申告・準確定申告・事業承継関係の手続き

対象読者

  • 消費税の課税事業者だった個人事業者の相続人
  • 被相続人の事業を承継しない相続人
  • 被相続人の事業を承継する相続人
  • 「個人事業者の死亡届出書」と「適格請求書発行事業者の死亡届出書」のどちらを確認すればよいか迷っている相続人
  • 死亡後の消費税申告と、この死亡届出との違いを確認したい相続人

更新日

更新日:2026年10月1日

最初に確認すること

本文を読み進める前に、次の8つの点を確認してください。自分の状況がどこに当てはまるかによって、確認する内容が変わります。

判断軸 確認内容
1. 個人事業者か 亡くなった人が個人で事業を行っていたか
2. 課税事業者か 死亡時に消費税の課税事業者だったか
3. インボイス登録 死亡時に適格請求書発行事業者だったか
4. 届出者 自分が被相続人の相続人か
5. 事業承継 被相続人の事業を承継するか
6. 消費税申告 死亡した事業者の消費税確定申告が必要か
7. みなし提出 消費税確定申告明細書を提出することで、死亡届出書の提出扱いとなるか
8. 提出方法 e-Tax・持参・送付のどれで行うか

対象になる人

「個人事業者の死亡届出書」は、課税事業者だった個人事業者が死亡した場合に、その相続人が提出する届出です。

被相続人が消費税の課税事業者だったかどうかが、対象の判断における中心的な確認点になります。

この届出書ではない場合

被相続人が課税事業者でなかった場合

被相続人が死亡時に消費税の課税事業者でなかった場合は、この届出書を課税事業者の死亡届として提出する対象ではありません。

ただし、この場合でも、所得税の準確定申告、所得税側の廃業届、相続に関する手続きなどが不要になるわけではありません。それぞれ必要な手続きを別途確認してください。

被相続人がインボイス発行事業者だった場合

被相続人が死亡時に適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)だった場合は、「適格請求書発行事業者の死亡届出書」という、これとは別の死亡時届出があります。

国税庁の死亡時手続の案内では、被相続人がインボイス発行事業者だった場合と、インボイス発行事業者ではない課税事業者だった場合とを分けて扱っています。この二つは同じ書類ではないため、被相続人がインボイス発行事業者だったかどうかをまず確認してください。

法人は対象外

法人が消滅した場合の手続きは、この「個人事業者の死亡届出書」の対象ではありません。

複数の相続人がいる場合

死亡した課税事業者の相続人が、この届出書の手続対象者です。現行の様式は、一人の届出者と被相続人との関係を記載する構造になっています。

複数相続人がいる場合であっても、全員の連署が一律に必須であるという扱いは、現時点で確認できていません。

本文では次のように整理します。

  • 相続人が提出する、と案内する
  • 複数相続人全員の署名・連署が必須とは断定しない
  • 誰が届出者となるか判断しにくい場合は、被相続人の納税地を所轄する税務署へ確認する
  • 事業を承継する場合は、参考事項に承継者の住所・氏名等を記載する
  • 複数人が事業を承継するなど、個別の承継関係の法律的な判断は、この記事だけでは行わない

期限・いつまでに

死亡届出書の提出時期

死亡届出書の提出時期は、事由が生じた場合、速やかに、とされています。「死亡後○日以内」という具体的な日数は定められていません。

4か月以内の期限との違い

死亡した課税事業者の消費税確定申告や、所得税の準確定申告には、一定の場合に「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」という期限が関係します。

これは、死亡届出書そのものの「速やかに」という提出時期とは別の期限です。次のように区別してください。

手続き 期限の考え方
死亡届出書 速やかに
死亡した事業者の消費税申告 一定の場合、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
所得税の準確定申告 原則、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内

死亡届出書の提出時期と、消費税・所得税側の申告期限を混同しないよう注意してください。

必要なもの

届出書を作成する前に、少なくとも次の情報・環境を準備してください。全国一律で必要な添付書類の一覧は、この記事では確定していません。提出方法や個々の状況によって必要な書類が異なる場合があるため、不明な点は税務署へ確認してください。

  • 被相続人の死亡年月日
  • 被相続人の納税地
  • 被相続人の氏名
  • 届出者の住所又は居所
  • 届出者の氏名
  • 届出者の個人番号
  • 被相続人との関係
  • 事業承継の有無
  • 事業を承継する場合の承継者情報
  • e-Taxを利用する場合はその利用環境、書面で提出する場合は現行の様式

本人確認書類や個人番号確認の具体的な取扱いは、提出方法と現行の番号制度の案内にあわせて確認してください。

届出書に記載する主な内容

現行の様式・記載要領に基づき、少なくとも次の内容を記載します。

  1. 届出者の住所又は居所
  2. 届出者の氏名
  3. 届出者の個人番号
  4. 死亡年月日
  5. 死亡した事業者(被相続人)の納税地
  6. 死亡した事業者(被相続人)の氏名
  7. 届出者と死亡した事業者との関係
  8. 参考事項
    • 事業承継の有無
    • 事業承継がある場合の事業承継者の住所又は居所
    • 事業承継者の氏名
    • その他参考となる事項

控えを保管する場合は、控えに個人番号を記載しないなど、個人番号の取扱いに注意してください。

提出方法を選ぶ

提出方法には、e-Tax・書面持参・書面送付の3つがあります。それぞれの特徴を比較します。

比較軸 e-Tax 書面持参 書面送付
作成・提出 e-Taxソフトで作成・送信する 現行様式を作成し、税務署へ持参する 現行様式を作成し、送付する
提出先 電子的に提出する 被相続人の納税地を所轄する税務署 被相続人の納税地を所轄する税務署
提出記録 受信通知等を保存する 提出日を自分で記録する 発送・配達記録等を必要に応じて保存する
注意点 利用環境・利用可能時間を現行のe-Taxで確認する 開庁時間を確認する 宛先・送付方法を確認する

e-Taxで提出する

e-Taxソフトを使って作成し、電子的に送信する方法です。利用できる環境や利用可能時間は変わることがあるため、提出前に現行のe-Taxの案内で確認してください。送信後は、受信通知を保存しておくと、提出した記録として残せます。

書面で提出する

現行の様式を使って書面を作成し、被相続人の納税地を所轄する税務署へ持参または送付する方法です。持参する場合は開庁時間を、送付する場合は宛先や送付方法を、それぞれ事前に確認してください。提出日や発送・配達記録は、必要に応じて自分で保存してください。

提出先

提出先は、被相続人の納税地を所轄する税務署です。届出者(相続人)自身の住所地の税務署ではありません。

消費税の申告で死亡届出書の提出扱いとなる場合

消費税基本通達17-1-3により、死亡した個人事業者について、相続人から所定の消費税確定申告書または還付申告書が提出され、その申告書に必要な事項を記載した「死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書」が提出された場合には、個人事業者の死亡届出書の提出があったものとして取り扱われます。

この扱いについては、次の点を確認しておいてください。

  • 死亡届出書と消費税申告書は、本来別の役割を持つ書類です
  • 所定の明細書を伴う申告を行うことで、死亡届出書の提出扱いとなる場合があります
  • この扱いに該当するからといって、死亡届出書を別紙で必ず二重に提出しなければならないわけではありません
  • 逆に、死亡届出書だけを提出すれば消費税申告まで済むわけでもありません
  • 自分の申告がこの扱いの条件を満たすかどうか分からない場合は、税務署へ確認してください

死亡した事業者の消費税申告も確認する

死亡届出書の提出だけでは、死亡した事業者の消費税の申告・納付が完了するわけではありません。

個人事業者が課税期間の途中で死亡した場合などには、相続人が被相続人にかわって消費税の確定申告・納付を行う必要があります。一定の場合の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

具体的な税額計算や申告書の作成方法は、この記事の範囲外です。別記事や公式情報で確認してください。

事業を承継する場合

相続人が被相続人の事業を承継する場合は、死亡届出書とは別に、相続人自身の消費税上の納税義務、必要な届出、開業関係の手続きを確認してください。

被相続人が提出していた消費税課税事業者選択届出書、課税期間特例選択等届出書、簡易課税制度選択届出書などの効力は、そのまま相続人へ当然に引き継がれるものとしては扱いません。相続人がこれらの制度の適用を受けたい場合は、相続人自身について必要な届出を確認してください。

提出後に確認すること

死亡届出書を提出したあとも、次の点を確認してください。

  1. e-Taxの受信通知、または書面の提出・発送記録を保存する
  2. 死亡した事業者の消費税申告が必要かどうかを確認する
  3. 所得税の準確定申告が必要かどうかを確認する
  4. 事業を承継する場合、相続人自身の消費税関係の届出を確認する
  5. 被相続人がインボイス発行事業者だった場合、インボイスの死亡時手続きを確認する
  6. 所得税側の廃業・青色申告関係の手続きを確認する
  7. 所在地の都道府県で、個人事業税の死亡廃業時申告等が必要かどうかを確認する

相談先

中心となる相談先は、被相続人の納税地を所轄する税務署です。届出書の記載内容、提出方法、複数相続人がいる場合の届出者の考え方など、判断に迷う点はこの税務署へ確認してください。

公式リンク

次の公式情報源で、最新の内容を確認してください。

注意点

  • この死亡届出書を提出したからといって、死亡に伴う税務手続がすべて完了するわけではありません。消費税申告、準確定申告、事業承継関係の届出など、別に確認が必要な手続きが残っている場合があります。
  • 「個人事業者の死亡届出書」と「適格請求書発行事業者の死亡届出書」は別の書類です。被相続人がインボイス発行事業者だったかどうかを、必ず確認してください。
  • 存命中に事業をやめる場合の届出(消費税の事業廃止届出書など)とは扱いが異なります。死亡による場合は、この記事で扱う死亡時の手続きを確認してください。
  • 複数相続人がいる場合の届出者の扱いや、複数の承継者がいる場合の承継関係については、全国一律の扱いを断定せず、判断しにくい場合は税務署へ確認してください。
  • 添付書類や具体的な必要書類は、提出方法や個々の状況によって異なる場合があります。

よくある間違い

  1. 死亡した個人事業者であれば、消費税の課税事業者でなくても必ずこの届出書が必要だと思ってしまう
  2. 死亡届出書の期限を「4か月以内」だと思ってしまう
  3. 死亡届出書を提出すれば、消費税の確定申告も終わったことになると思ってしまう
  4. 消費税申告をすれば、どんな場合でも自動的に死亡届出書が不要になると思ってしまう
  5. 「適格請求書発行事業者の死亡届出書」と同じ書類だと思ってしまう
  6. 被相続人がインボイス発行事業者だったかどうかを確認しない
  7. 存命中の通常の廃業と、死亡による事業終了を同じ届出で処理しようとする
  8. 提出先を、相続人自身の住所地の税務署だと思ってしまう
  9. 事業承継の有無を確認しない
  10. 被相続人の消費税関係の届出の効力が、そのまま相続人へ移ると思ってしまう
  11. 複数相続人がいる場合の届出者を、根拠なく一人に決めつけてしまう
  12. 死亡届出だけを確認して、準確定申告を見落としてしまう
  13. 死亡届出だけを確認して、死亡後の消費税申告を見落としてしまう
  14. 提出した記録を残さない

チェックリスト

対象確認

承継・申告確認

記載

提出

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