相続税の修正申告をする
対象読者
- 相続税の申告書をすでに提出しており、申告後に新たな財産や申告漏れに気づいた人
- 財産評価、債務・葬式費用、税額控除等の誤りにより、正しい税額が当初申告より増える人
- 遺産分割が未確定のまま申告した後、実際の分割により自分の税額が増える人
- 税務署から指摘される前に、自主的に税額を訂正したい人
- 修正申告書の様式、提出先、提出方法、追加税額の納付時期を確認したい人
- 税務署から照会・調査の連絡や、更正・決定の通知をすでに受けている人
- 税理士へ依頼する前に、手続きの全体像を把握したい人
更新日
2026年9月26日
概要
相続税の修正申告は、相続税の申告書を提出した後に、正しい税額が当初の申告額より増えることが分かった場合に、税額を正しい内容へ増額訂正する手続きです。新たな財産が見つかった場合や、財産評価・債務・控除の計算に誤りがあった場合などに行います。反対に、正しい税額が当初申告額より減る場合は、修正申告ではなく更正の請求という別の手続きになります。
訂正のタイミングによっても扱いが変わります。法定申告期限より前に誤りへ気づいた場合は、正しい内容の申告書を期限内に再提出する扱いを確認します。法定申告期限を過ぎてから気づいた場合は、税務署長による更正を受ける前までであれば修正申告を行うことができます。
ただし、期限後の修正申告に猶予があるからといって、後回しにしてよいわけではありません。修正申告によって新たに納める税額は、修正申告書の提出日までに納付する必要があります。また、法定納期限の翌日から納付日までの期間に応じて延滞税がかかる場合があり、税務調査の進行状況などによって過少申告加算税等の扱いが変わる場合もあります。誤りに気づいた時点から、できるだけ早く手続きを進めることが、負担を大きくしないための基本になります。
この記事では、修正申告が必要な場面の見分け方から、修正後の税額を再計算する基本的な流れ、必要な書類、提出先・提出方法、追加税額の納付、延滞税・加算税の確認、税務署または税理士へ相談すべき場面までを順に案内します。個別の財産評価や税額の詳細な計算、加算税の最終判定は、この記事だけでは完結しません。該当する場合は、案内に沿って税務署または税理士へ確認してください。
このページで分かること
- 修正申告が必要な場面
- 申告期限前後で扱いが異なること
- 税額が増える場合と減る場合の違い
- 修正申告の基本的な手順
- 必要な書類と提出方法
- 追加税額・延滞税等の確認方法
- 税務署・税理士へ相談する場面
この前に確認する
相続税の申告書をまだ提出していない場合は、この記事の対象外です。まず「相続税を申告・納付する」を確認してください。
最初にやること
次の四点を、この順番で確認します。
1. 相続税の申告書をすでに提出しているか
- 未提出の場合:通常の相続税申告または期限後申告の案内を確認します。
- 提出済みの場合:次の確認へ進みます。
2. 法定申告期限の前か後か
- 期限前の場合:正しい内容の申告書を期限内に再提出する扱いを確認します。
- 期限後の場合:修正申告の検討へ進みます。
3. 正しい税額は増えるか、減るか
- 増える場合:修正申告を検討します。
- 減る場合:更正の請求を確認します。
- 増減が混在していて分からない場合:申告全体を再計算したうえで、税務署または税理士へ確認します。
4. 税務署長による更正をすでに受けているか
- まだ受けていない場合:修正申告の手順へ進みます。
- すでに受けている場合、または通知内容との関係が分からない場合:通知書を手元に、税務署または税理士へ確認します。
四点の確認が終わったら、最初の行動として次を行います。
当初の申告書、財産・債務・控除の根拠資料、申告後に判明した新しい資料をそろえ、修正理由と影響額を一覧にします。
修正申告書へすぐに数字を書き込むのではなく、まず次を確認します。
- 何が誤っていたか、または新たに何が判明したか
- どの財産・債務・控除が変わるか
- どの相続人の取得額・税額が変わるか
- 最終的に税額が増えるかどうか
状況別
申告期限前に誤りへ気づいた場合
正しい内容で作成した申告書を、申告期限内に再提出します。期限内に複数の申告書が提出された場合の扱いがあるため、必要に応じて税務署へ確認してください。
新しい財産が見つかった場合
預貯金、現金、有価証券、名義預金、保険金、還付金、未収金、国外財産などが新たに判明し、税額が増える場合は、修正申告を検討します。
財産評価や控除額の誤りに気づいた場合
財産評価を低く計算していた、債務・葬式費用を多く控除していた、税額控除を多く適用していたなどの場合は、その項目だけでなく申告全体を再計算します。
遺産分割後に税額が増えた場合
未分割のまま申告した後、実際の遺産分割により当初申告額より自分の税額が増える場合は、修正申告を行うことができます。他の相続人については、更正の請求が必要となる場合があります。
税額が減る誤りも同時に見つかった場合
増額項目と減額項目を別々に処理せず、修正後の申告全体を正しい内容で再計算します。最終的な税額が減る場合や、どの手続きの組み合わせになるか分からない場合は、税務署または税理士へ確認してください。
税務署から照会・調査の連絡を受けている場合
連絡内容、事前通知の有無、指摘事項、期限を確認します。自主的な修正と、調査を受けた後の修正とでは、加算税の扱いが異なる場合があるため、税務署または税理士へ早めに相談してください。
税務署長による更正・決定の通知を受けている場合
通知書の内容と、今回判明した内容との関係を確認し、修正申告が可能か、別の手続きが必要かを税務署または税理士へ確認してください。
追加税額を一括で納付することが難しい場合
修正申告を放置せず、納付方法や延納などの可否について、税務署へ早めに相談してください。相続税を延納する・相続税を物納するの詳しい手続きは、各記事で確認してください。
手順
手順1 当初申告と新しい資料をそろえる
- 当初の相続税申告書一式
- 財産評価明細書
- 債務・葬式費用の資料
- 遺産分割協議書等
- 新たに判明した財産・控除・評価に関する資料
- 税務署から届いた通知・照会文書
手順2 修正理由と影響範囲を整理する
- 誤りまたは新たに判明した事実
- 変更する財産・債務・控除
- 影響する相続人
- 税額への増減方向
- 根拠となる資料
手順3 修正後の課税価格・相続税額を再計算する
当初申告との差額だけを計算するのではなく、修正後の申告全体を正しい内容で再計算します。
手順4 対応する修正申告書・表・付表を作成する
相続開始年や申告内容に対応する国税庁の様式を確認します。相続開始日によって使用する様式が異なる場合があるため、年度を取り違えないようにします。
手順5 根拠資料をそろえる
修正理由を説明できる資料を整理します。提出が必要かどうか分からない資料については、税務署または税理士へ確認してください。
手順6 所轄税務署へ提出する
提出先は、原則として被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。
提出方法は次のいずれかです。
- e-Tax
- 郵送
- 税務署窓口への持参
相続税の修正申告はe-Taxに対応していますが、申告内容によって電子申告を利用できない場合があります。e-Taxを利用する場合は、対応範囲と利用可否を公式案内で確認してください。
手順7 追加税額を納付する
修正申告によって新たに納める税額は、修正申告書の提出日までに納付します。
延滞税は別途計算・納付が必要となる場合があるため、国税庁の案内または税務署で確認してください。
手順8 記録を保管する
- 修正申告書の控えに相当する記録
- e-Taxの受信通知
- 郵送の記録
- 納付記録
- 延滞税等の記録
- 修正理由と根拠資料
- 税務署とのやり取りの記録
期限
申告期限前
正しい申告書を、法定申告期限までに提出します。
申告期限後
修正申告は、税務署長による更正を受ける前までであれば行うことができます。
ただし、これは期限が長く残っているという意味ではありません。追加税額には延滞税が生じる場合があり、税務調査等の進行状況によって加算税の扱いも変わり得るため、誤りに気づいたら、できるだけ早く申告・納付してください。
追加税額の納期限
修正申告によって新たに納める税額は、修正申告書を提出する日までに納付します。
必要なもの
基本となる書類
- 当初の相続税申告書一式
- 修正後の相続税の修正申告書
- 修正に伴い内容が変わる表・付表
- 財産評価明細書等
- 修正理由を確認できる資料
- 本人確認・電子申告に必要な環境等
状況に応じて必要となる資料
- 新たに見つかった財産の残高証明書、契約書、支払通知書等
- 遺産分割協議書、調停調書、審判書等
- 不動産・有価証券・非上場株式等の評価資料
- 債務・葬式費用の訂正資料
- 税額控除・特例の適用関係を確認する資料
- 税務署からの照会・調査・更正等の通知書
必要な書類は状況によって異なります。この書類だけで必ず提出できるとは限らないため、不明な点は税務署または税理士へ確認してください。
相談先
税務署・国税庁
次のような一般的な手続きの確認に適しています。
- 修正申告の一般的な手続き
- 使用する様式・付表
- 提出先・提出方法
- e-Taxの利用可否
- 追加税額・延滞税の納付方法
- 税務署から届いた文書への一般的な対応
税理士
次のような個別の判断が必要な場面に適しています。
- 正しい相続税額の再計算
- 土地・非上場株式・国外財産等の評価
- 複数の相続人の間での増減税額の調整
- 特例・税額控除の訂正
- 税務調査の事前通知後、または調査進行中の修正
- 加算税・延滞税を含む影響の整理
- 修正申告書の作成・代理提出
一般的な手続きの確認は税務署、個別の計算・評価・申告代理は税理士、という役割の違いを踏まえて相談先を選んでください。
公式リンク
- 国税庁「相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)」
- 国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」
- 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
- 国税庁「申告と納税」
- 国税庁「No.9205 延滞税について」
- 国税庁「国税に関するご相談について」
- e-Tax「相続税申告の作成・提出についてよくある質問」
- e-Tax「相続税の修正申告書をe-Taxにより提出(送信)することはできますか」
- e-Tax「申告内容によって相続税の申告書をe-Taxにより提出できない場合」
- e-Gov法令検索「相続税法」
- e-Gov法令検索「国税通則法」
注意点
- 修正申告は、税額を少なく申告していた場合に、正しい税額へ増額訂正する手続きです。税額が減る場合は修正申告ではなく、更正の請求になります。
- 申告期限前の再提出と、申告期限後の修正申告は扱いが異なります。両者を混同しないでください。
- 「修正申告には期限がない」という理解は誤解を招きます。税務署長による更正を受ける前までは提出できますが、延滞税等の負担が増える可能性があるため、早めに行う必要があります。
- 追加税額は、修正申告書の提出日までに納付します。申告書の提出と納付は別の工程であり、申告書を提出しただけでは手続きは終わりません。
- 延滞税や加算税が生じるかどうか、またその金額は、個別の状況によって異なります。この記事では断定せず、国税庁の案内または税務署・税理士への確認を案内しています。
- 自主的な修正と、税務調査を受けた後の修正とでは、加算税の扱いが異なる場合があります。
- 新しい財産が見つかった場合や、遺産分割後に税額が増える場合であっても、すべての相続人が同じ手続きになるとは限りません。相続人ごとに増減の方向が異なることがあります。
- 修正申告は、当初申告との差額だけを計算すればよいものではありません。修正後の申告全体を正しい内容で再計算します。
- 必要な書類は状況によって異なります。挙げた書類をそろえれば必ず提出できるとは限りません。