相続税の税務調査を受ける
対象読者: 相続税の実地調査を行う旨の連絡を受けた相続人・受遺者、または税務署からの連絡が税務調査かどうか確認したい方
更新日: 2026年9月26日
概要
相続税の税務調査は、申告した相続税額や、申告していない相続税について、内容を確認するために行われます。税務署からの電話や文書による連絡のすべてが、実地調査を意味するとは限りません。連絡を受けたら、まずそれが税務調査にあたるのか、それとも行政指導や照会にあたるのかを確認することが必要です。
実地調査は、原則として調査開始日より前に、時間的な余裕をもって事前通知が行われます。ただし、一定の場合には、事前通知なしに調査が行われることもあります。
税務署から連絡を受けた段階で、申告漏れが確定したわけではありません。このページでは、調査対象になった理由を推測したり、調査官への対抗方法を検討したりするのではなく、通知内容を記録し、申告時の根拠資料を整理し、税理士と連携しながら、事実に基づいて調査に対応するための手順を案内します。
最初に行うことは、連絡内容の記録と、申告を依頼した税理士がいる場合の速やかな連絡です。
このページで分かること
- 事前通知を受けた際に確認すること
- 調査の前に整理しておく資料
- 調査当日の基本的な対応
- 資料の提示・提出・預かりを記録する方法
- 調査結果の説明を受けた後の分岐
- 相談できる先
最初にやること
税務署名、担当者名、連絡日時、調査か行政指導か、調査日時・場所・対象税目等を記録し、申告を依頼した税理士がいる場合はすぐに連絡します。
知らない番号からの連絡などで真偽に不安がある場合は、相手から伝えられた番号へそのまま折り返すのではなく、国税庁「国税局・税務署を調べる」で税務署の代表番号を確認したうえで、取り次ぎを依頼してください。
状況別に確認すること
電話や文書が税務調査か分からない場合
まず、税務署からの連絡が税務調査にあたるのか、行政指導や照会にあたるのかを確認します。調査にあたる場合は、事前通知事項を確認し、記録します。不審に感じる連絡を受けた場合は、公式に確認した税務署の代表番号から、担当部署へ確認してください。口座への振込や暗証番号の入力を求めるような連絡は、税務署からの正規の連絡とは区別します。
申告を依頼した税理士がいる場合
受けた連絡内容を、そのまま税理士へ共有します。税務代理権限証書の有無、事前通知に関する同意の状況、立会いの可否、必要な資料の準備を、税理士とともに確認します。税理士に対応を任せきりにせず、自分自身が保有する資料や事実関係も整理しておきます。
税理士がいない場合
事前通知の内容と、税務署から求められた資料を確認します。財産評価、名義財産、生前贈与、国外財産、非上場株式など、複雑な事情がある場合は、税理士への相談を検討します。税務署への一般的な手続き確認と、個別の申告内容についての代理・判断とを混同しないようにします。
調査日時・場所の変更が必要な場合
調査が始まる前に、変更を希望する合理的な理由と、希望する日時・場所を伝えて相談します。一方的に予定を欠席するのではなく、担当者または税理士を通じて調整します。変更が認められた場合は、あらためて日時・場所を記録します。日時・場所の変更が必ず認められるとは限りません。
事前通知なしで調査担当者が来た場合
担当者の身分証明、氏名、所属を確認します。調査である旨、調査の目的、対象税目・対象期間、対象となる資料などの説明を確認します。税理士がいる場合は連絡します。その場で分からないことを推測で答えることは避けます。調査を妨げる行為は行わず、疑問がある場合は、確認したい理由や範囲を担当者へ尋ねます。
必要な資料が見つからない場合
資料が見つからないという事実を隠さず、これまでに何を探したかを整理します。金融機関、保険会社、証券会社、法務局など、資料を発行した機関から再取得できるかを確認します。税務署または税理士へ、代わりに提出できる資料や、提出期限について確認します。新たに資料を作成する場合は、後から作成した説明資料であることを明確にしておきます。
質問への回答が分からない場合
「分からない」「記憶が曖昧である」「資料を確認する必要がある」ことを、事実として区別して伝えます。推測した内容を、事実であるかのように答えないようにします。質問の内容、確認する資料、回答の期限、回答の方法を記録します。税理士に相談してから回答する必要がある場合は、その旨を担当者へ伝えます。
申告漏れの可能性に気づいた場合
税額や加算税の金額を、自分だけで断定しません。気づいた事実関係を、調査担当者と税理士へ伝えます。調査の段階や時期によって取扱いが変わる場合があるため、修正申告を行う前に確認します。修正申告へ進む場合は、「相続税の修正申告をする」を確認してください。
調査結果に問題がないとされた場合
更正決定等をすべきと認められない場合は、その旨が書面で通知されます。通知書と、調査に関連する資料を保管します。将来、一定の場合に再調査が行われることがありますが、その詳細は公式情報で確認し、必要以上に不安に感じる必要はありません。
修正申告を勧められた場合
調査結果の内容、対象となった財産、税額、加算税等の説明を確認します。その場での即答を必ず求められているとは限らないため、必要に応じて税理士へ相談してください。修正申告をすると、その修正申告自体について、通常の不服申立てはできないことを確認したうえで判断します。内容を理解したうえで応じる場合は「相続税の修正申告をする」へ進みます。応じずに更正等を受けた場合は「相続税の更正を受ける」へ進みます。
手順
- 連絡内容と事前通知事項を記録する。税務署名、担当者名、連絡日時、調査日時・場所、対象税目・期間などを書き留める。
- 税理士へ連絡し、日程・立会い・資料準備を確認する。申告を依頼した税理士がいる場合は、受けた連絡内容をそのまま共有する。
- 申告書と根拠資料を整理する。相続税申告書、添付書類、財産・債務等の根拠資料をそろえる。
- 当日は担当者を確認し、事実と資料に基づいて対応する。推測での回答は行わない。
- 追加資料・回答事項・期限を記録して対応する。何を、いつまでに、どのように回答するかを記録する。
- 調査結果の説明を受け、次の手続きを選ぶ。問題なしの通知、修正申告の勧奨、更正等のいずれに進むかを確認する。
期限
「税務調査を受けること自体」に、全国一律の期限はありません。ただし、次の点は区別して確認します。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 調査日時・場所の変更希望 | 調査が始まる前に相談する |
| 追加資料の提出・質問への回答 | 担当者から示された期限に従う |
| 修正申告・納付 | 調査結果の説明内容や案内に基づいて判断する |
| 更正等への不服申立て | 本記事では扱わない。「相続税の更正を受ける」で確認する |
必要なもの
以下は、必ず提出する全国共通の一覧ではありません。実際に整理する資料は、事前通知の内容や税務署からの依頼を優先して確認してください。
事前通知・連絡関係
- 連絡内容を記録したメモ
- 税務署・担当者の情報
- 調査の日程・場所
- 税理士の連絡先
申告関係
- 提出した相続税申告書
- 申告書の添付書類
- 納付記録
- 税理士とのやり取りの記録
財産・債務等の根拠資料
- 預貯金に関する資料
- 有価証券に関する資料
- 不動産に関する資料
- 生命保険金・退職手当金に関する資料
- 債務・葬式費用に関する資料
- 生前贈与に関する資料
- 資金移動を説明する資料
- 事前通知で個別に求められた資料
記録用
- 質問と回答のメモ
- 提示・提出した資料の一覧
- 預けた資料の一覧
- 追加の依頼内容と期限の記録
相談先
- 税務調査を行う税務署の担当者:通知事項、日程、提出方法などを確認する窓口
- 申告を担当した税理士:申告内容、資料、立会い、修正申告などを相談する窓口
- 新たに依頼する税理士:税理士がいない場合や、担当税理士に依頼できない場合の相談先
- 弁護士等:不服申立てや訴訟、刑事事件など、法的な対応が必要な場合の相談先
税務署は手続きの一般的な案内を行う窓口であり、申告内容についての代理や助言は、税理士等の専門家の役割です。
公式リンク
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
- 国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
- 国税庁「国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達」
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」
- 国税庁「国税局・税務署を調べる」
- 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
注意点
- 調査の対象になったことは、申告漏れが確定したことを意味しません。
- 連絡を受けたら、まず調査か行政指導かを確認してください。
- 分からないことを、推測で答えないようにします。
- 資料を隠す、捨てる、書き換える、事実と異なる説明をする、口裏を合わせるといった行為は行いません。
- 提示・提出・預けた資料は、その都度記録します。
- 申告を税理士に任せていた場合でも、納税者本人が保有する資料や事実関係の確認を求められることがあります。
- 修正申告の勧奨を受けたときは、内容を理解してから判断します。
- 修正申告をすると、その修正申告自体については、通常の不服申立てはできません。
- 更正等を受けた後の具体的な対応は、別の記事で確認します。
- 不審な電話やメール、SMSと、税務署からの正規の連絡は区別し、公式に確認した代表番号から確認します。
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この前に確認する
これらの記事では、申告した内容と、その根拠となる財産調査の内容を確認できます。
あわせて確認する
- 相続税の修正申告をする
- 相続税の更正を受ける
調査結果の説明を受けた後に進む、代表的な次の手続きです。
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