限定承認をする
対象読者:相続財産と債務の全体像がまだ分からず、単純承認・相続放棄・限定承認のどれを選ぶか判断できていない方 更新日:2026年10月1日
概要
限定承認は、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を負担する制度です。借金の額がはっきりしない一方で、残したい財産がある場合の選択肢として検討されます。
ただし、限定承認は自分一人の判断だけで進められる手続きではありません。相続放棄をした人を除く共同相続人全員が足並みをそろえ、原則として期限内に家庭裁判所へ共同で申述する必要があります。また、家庭裁判所が申述を受理した後も、公告や弁済、換価といった清算の手続が続きます。
このページでは、限定承認の基本的な仕組みと単純承認・相続放棄との違い、共同申述が必要であること、期限、申述の流れ、受理後に続く清算の手続を確認します。読み終えた時点で、期限を把握し、共同相続人との意思確認や財産調査を進め、家庭裁判所または専門家への相談へ進める状態を目指します。「限定承認を自力で完了させること」自体は、このページの案内の到達点ではありません。
このページで分かること
- 限定承認・単純承認・相続放棄の違い
- 限定承認は共同相続人全員の共同申述が原則であること
- 申述の期限と、期限を延ばす制度があること
- 申述先、申述に必要な書類、申述費用の概要
- 家庭裁判所が申述を受理した後も清算手続が続くこと
- 専門家への相談を早めに検討すべき理由
この前に確認する
限定承認を検討する前提として、次の確認が済んでいるかをご確認ください。
- 誰が相続人にあたるか(「相続人を確認する」)
- 相続財産や債務の状況がどこまで分かっているか(「相続財産を調査する」)
これらが分からないままでは、限定承認が現実的な選択肢かどうかを判断できません。まだ確認が済んでいない場合は、先にそちらのページをご覧ください。
限定承認・相続放棄・単純承認の違い
相続が開始すると、相続人は原則として次の3つのいずれかを選ぶことになります。
| 制度 | 財産の扱い | 債務の扱い |
|---|---|---|
| 単純承認 | プラスの財産を引き継ぐ | 借金などの債務もすべて引き継ぐ |
| 相続放棄 | プラスの財産を引き継がない | 債務も引き継がない |
| 限定承認 | 相続財産の限度で引き継ぐ | 相続財産の限度でのみ負担する |
限定承認は、「借金だけを引き継がず、財産だけを受け取れる」制度ではありません。相続財産の範囲内で債務の弁済にあてるという仕組みであり、結果として手元に財産が残るかどうかは、清算手続を経てはじめて分かります。
なお、次のいずれかに該当する場合、このページで案内する限定承認の手続きをそのまま進める対象ではありません。
- 被相続人がまだ存命で、相続が開始していない場合
- 自分が相続人ではないことが確定している場合
- すでに有効な相続放棄をしている場合
- 共同相続人全員で限定承認を行う意思がそろっていない場合
- すでに単純承認が成立した可能性がある場合
最初にやること
まず、原則3か月以内という期限を確認します。そのうえで、相続財産を処分する行為(単純承認につながりうる行為)を避けながら、共同相続人全員との意思確認と、家庭裁判所または専門家への相談の準備を始めてください。
状況別に確認すること
ご自身の状況によって、最初に確認する内容が変わります。
| 状況 | 最初の確認 |
|---|---|
| 財産も債務もすべて引き継ぐ意思が固まっている | 単純承認との関係を確認してください |
| 財産も債務も一切引き継がない方針である | 相続放棄の手続きを確認してください(あなたの場合はこちら:「相続放棄をする」) |
| 債務額が分からず、財産が残る可能性もある | 限定承認を検討候補として、このページの続きと専門家相談へ進んでください |
| 3か月以内に判断がつかない | 家庭裁判所への熟慮期間伸長の申立てを検討してください |
| 共同相続人の一部が限定承認に同意していない | 原則として限定承認は共同相続人全員でなければ行えないことをご確認ください |
共同相続人のうち、すでに有効な相続放棄をした人は相続人ではなかったものとみなされ、それ以外の共同相続人全員で申述します。全員に相続放棄した人まで含めてしまうと、申述の前提を誤解することになるため注意してください。
手続きの流れ
一般的な流れは次のとおりです。
- 相続人と相続財産の状況を確認する(前提の確認)
- 共同相続人全員で限定承認を行う意思を確認する
- 相続財産目録を作成する
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ、共同で申述する
- 家庭裁判所が申述を受理する
- 受理後、公告・弁済・換価などの清算手続を進める
期限・いつまでに
申述期限
原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
この「知った時」は、単に被相続人が亡くなった日とは限りません。「被相続人が亡くなったこと」と「それによって自分が相続人となったこと」の両方を知った時が基準になります。ご自身の場合の起算点がいつになるかは、個別の事情によって判断が変わるため、家庭裁判所または専門家にご確認ください。
期限内に判断できない場合
3か月以内に相続財産を調査しても限定承認を選ぶかどうか判断がつかない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられる制度があります。ただし、申し立てれば必ず伸長が認められるわけではありません。
受理後の期限
家庭裁判所が申述を受理した後も、次の期限があります。
- 限定承認者が1人の場合:受理後5日以内に公告手続が必要
- 相続財産清算人が選任された場合:選任後10日以内に公告手続が必要
申述が受理されてからすぐに次の期限が始まるため、受理前の段階から清算の見通しを立てて相談しておく必要があります。
必要なもの
申述にあたっては、次のようなものが標準的に必要とされています。
- 相続財産目録(申述時に作成して提出します)
- 戸籍類(被相続人・相続人に関するもの)
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票 等
必要な戸籍等の具体的な範囲は事案によって異なるため、申述先の家庭裁判所にご確認ください。
費用
申述には、収入印紙800円分と、連絡用の郵便料がかかります。郵便料の具体的な金額は申述先の家庭裁判所によって異なるため、事前に家庭裁判所へご確認ください。
申述後に行うこと
家庭裁判所に申述が受理されても、それで手続きが終わるわけではありません。受理後は、限定承認者、または選任された相続財産清算人が、公告・弁済・換価といった清算の手続を進めていく必要があります。
また、清算の過程で相続財産から収入が生じた場合には課税関係が生じることがあります。税務上の取り扱いは専門的な判断が必要になるため、税務署または税理士への確認事項として扱ってください。
相談先
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所(申述・手続き全般について)
- 弁護士等、相続手続に対応する専門家(進め方の相談について)
- 税務署または税理士(税務上の影響について)
限定承認は共同相続人全員の合意形成、期限管理、受理後の清算まで関わる専門性の高い手続きです。早い段階で専門家へ相談することを強くおすすめします。相談したからといって、必ず限定承認が受理されるとは限りません。
公式リンク
- 裁判所「相続の限定承認の申述」:申述の基本的な案内を確認できます。
- 裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」:共同申述や受理後の清算に関する疑問を確認できます。
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」:熟慮期間の伸長手続を確認できます。
- 国税庁「限定承認をした相続財産から生じる家賃」:限定承認に関わる税務上の論点を確認できます。
注意点
- 限定承認は「借金だけを免れて財産だけを受け取れる」制度ではありません。相続財産の限度で債務を負担する制度です。
- 「相続人全員」には、すでに有効な相続放棄をした人は含まれません。それ以外の共同相続人全員での申述が原則です。
- すでに相続財産の処分にあたる行為をしている場合、単純承認が成立したとみなされる可能性があります。心当たりがある場合は、限定承認を進める前に家庭裁判所または専門家にご確認ください。
- 家庭裁判所が申述を受理しても、それで手続きが終わるわけではありません。公告・弁済・換価などの清算が続きます。
- 税務上の影響は個別の事情によって異なります。税額や具体的な計算方法は、税務署または税理士にご確認ください。
チェックリスト
関連記事導線
あなたの場合はこちら
- 相続放棄をする:財産も債務も一切引き継がない方針の場合は、こちらの手続きをご確認ください。
あわせて確認する
- 戸籍を集める(相続手続き用):申述に必要な戸籍類の集め方を確認できます。