相続で個人事業を引き継いだときの青色事業専従者給与を確認する

概要

この記事は、相続で個人事業を引き継いだ方が、家族や親族に支払う給与を「青色事業専従者給与」として必要経費にできる状態かどうかを確認するための記事です。

被相続人が青色事業専従者給与の届出をしていたとしても、その届出をそのまま相続人が使えるわけではありません。この記事は、被相続人の届出を相続人の名義へ変更する手続きを説明するものではなく、相続人自身を基準に、青色申告の状態、専従者の要件、届出の要否、期限の起算点を一つずつ確認していく記事です。

このページで分かること

  • 相続人自身が青色申告を利用できる状態かどうか
  • 被相続人の青色事業専従者や届出をそのまま引き継げない理由
  • 給与を支払う親族が青色事業専従者の要件を満たすかどうか
  • 相続人自身について新たな届出が必要か、既存の届出の確認や変更で足りるか
  • 届出期限の起算点が、事業を開始した日なのか、専従者がいることとなった日なのか、原則どおり3月15日なのか
  • 期限内に届出が必要な場合に進む手続き
  • 自分では判断できない場合に、何を、どこへ確認すればよいか

対象読者

主に次のような方を対象としています。

  • 個人事業を営んでいた人が死亡し、その事業を引き継いだ相続人
  • 被相続人の配偶者、子、その他の親族で、引き続き事業に従事する予定がある人
  • 被相続人が青色事業専従者給与の届出をしていたため、その届出をそのまま使えると考えている人
  • 相続をきっかけに初めて個人事業を始めた人
  • 相続前から自分でも個人事業をしていた人
  • すでに青色申告者で、青色事業専従者給与の届出も済ませている人
  • 相続年分から青色申告を始めるため、青色申告承認申請と専従者給与の届出の両方を確認する必要がある人
  • 相続開始日、事業を引き継いだ日、親族が専従者として従事し始めた日がそれぞれ異なる人
  • 届出の期限をすでに過ぎている可能性がある人

事業を引き継いでいない相続人、白色申告のまま事業を続ける人、生計を一にしない親族への給与を検討している人は、この記事で扱う青色事業専従者給与制度の対象には当たりません。

更新日

更新日:2026年9月29日

最初にやること

本題に入る前に、次の3点を確認します。

  • 相続人自身が、その年分について青色申告を利用できる状態かどうか
  • 青色事業専従者給与を支払いたい親族が誰か
  • 相続人自身が、すでに青色事業専従者給与の届出をしているかどうか

この3点によって、この先どの項目を確認すればよいかが変わります。

まず相続人自身が青色申告できる状態か確認する

青色事業専従者給与は、青色申告者が、生計を一にする配偶者その他の親族のうち一定の要件を満たす人に支払う給与について認められる特例です。したがって、相続人自身が青色申告を利用できる状態でなければ、そもそもこの制度の前提を満たしません。

相続人自身がすでに青色申告者である場合は、次の項目へ進みます。相続年分から新たに青色申告を始める場合は、青色申告承認申請の手続きが必要かどうかを確認します。青色申告承認申請の手続き自体は、この記事ではなく別記事の範囲です。相続で個人事業を引き継いだときの青色申告の確認については、別途用意している記事を参照してください。

青色申告を利用しない場合、青色事業専従者給与制度の対象にはなりません。この場合は、白色申告における事業専従者控除など、別の制度を必要に応じて確認します。

被相続人の専従者・届出はそのまま引き継がない

ここが、この記事でもっとも間違えやすい点です。

被相続人が青色事業専従者給与の届出をしていたとしても、その届出は被相続人自身の事業についてのものであり、相続人の事業へ自動的に引き継がれるものではありません。同じように、被相続人の事業で青色事業専従者だった親族が、相続後も同じ立場のまま働き続けたとしても、その親族が自動的に相続人の青色事業専従者になるわけではありません。

相続人は、次を自分自身の状態として改めて確認する必要があります。

  • 相続人自身が青色申告者であるか
  • 給与を受ける親族が、相続人と生計を一にしているか
  • その親族が、相続人の事業に専ら従事しているか
  • 相続人自身が、この親族についての届出をすでに行っているか

被相続人側の届出や専従者の状態は、あくまで参考資料として扱い、相続人の届出済み状態とはみなしません。

青色事業専従者にしたい親族の要件を確認する

青色事業専従者給与を支払う対象となる親族について、国税庁が示している基本要件は次の3点です。いずれも確認します。

  • 相続人と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • 原則として、その年を通じて6か月を超える期間、相続人の事業に専ら従事していること(一定の場合は、事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)

年齢は、給与を支払い始めた日や相続日ではなく、その年の12月31日現在で15歳以上かを確認します。「同居している」というだけで、生計を一にしている、あるいは専従の要件を満たしていると判断することはできません。年齢要件を満たしていても、専従期間の要件は別に確認します。原則はその年を通じて6か月を超える期間の専従で、一定の場合は事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間が基準になります。あわせて、他に職業や就学の予定があるかどうかも確認します。

要件の詳細な例外や個別の判定については、一般の青色事業専従者給与に関する届出記事や、国税庁の情報を確認します。

相続人自身の届出状況を確認する

相続人自身の届出状況は、大きく次のいずれかに分かれます。

  • まだ青色事業専従者給与の届出をしていない
  • すでに届出をしており、今回の親族もその届出でカバーされている
  • すでに届出をしているが、今回新たに専従者を追加する
  • すでに届出をしているが、給与額の増額など、職務や支給条件に変更がある

未届出であれば、新たな届出の要否と期限区分を確認します。届出済みであれば、今回の親族や給与条件が既存の届出の範囲でカバーされているかを確認し、カバーされていない場合は変更届出の要否を確認します。

期限・いつまでに

青色事業専従者給与に関する届出の期限は、次のとおりです。

  • 原則として、その給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで
  • その年の1月16日以後に、相続人自身が新たに事業を開始した場合は、その事業を開始した日から2か月以内
  • その年の1月16日以後に、相続人の事業について新たに専従者がいることとなった場合は、その専従者がいることとなった日から2か月以内

対象年の具体的な期日が休日等に当たる場合の扱いは、国税庁の現行の手続き案内で確認します。

被相続人の死亡日を、そのまま相続人自身の事業開始日や専従者発生日として扱うことはできません。相続人自身の事業開始日、または親族が相続人の事業に専従することとなった日を、それぞれ個別に確認します。

相続で初めて事業を始めた場合

相続をきっかけに相続人自身が初めて事業を始めた場合は、次を確認します。

  • 相続人自身が実際に事業を開始した日
  • その開始日が、その年の1月1日から1月15日までか、1月16日以後か

1月16日以後に開始した場合は、事業を開始した日から2か月以内が期限の目安になります。1月1日から1月15日までに開始した場合は、原則どおりその年の3月15日までが期限の目安になります。あわせて、青色申告承認申請の期限も別に確認します。

被相続人の死亡日を、機械的に相続人自身の事業開始日として扱うことはできません。事業を引き継いだ実態や、実際に事業を開始した日が不明な場合は、後述する「判断できない場合」を確認します。

相続前から自分でも事業をしていた場合

相続前から相続人自身が個人事業をしていた場合は、相続日を一律に新規開業日として扱うことはできません。この場合は、次を確認します。

  • 相続人自身の既存事業の状況
  • 相続人自身の青色申告承認の状態
  • 相続人自身が既存の青色事業専従者給与の届出をしているか
  • 今回給与を支払いたい親族が、既存の届出に含まれているか
  • 今回のケースが、専従者の追加に当たるか
  • 給与の増額など、変更届出が必要な事由があるか

相続前から事業をしていた相続人について、今回初めて専従者が加わる場合は、新規開業とは扱わず、その親族が「新たに専従者がいることとなった日」を基準に期限を確認します。その日が1月16日以後であれば、2か月以内という期限の対象になり得ます。

すでに別の青色事業専従者がいる場合は、既存の届出に今回の親族が含まれているかを確認し、含まれていなければ、専従者の追加として変更届出等の要否を、一般の提出手続きの記事や公式情報で確認します。

青色申告承認申請の期限とは別に確認する

青色申告承認申請には、被相続人が青色申告者だった場合の死亡時期に応じた、相続に固有の期限区分があります。

この記事で確認している青色事業専従者給与の届出期限は、青色申告承認申請の相続に固有の期限区分とは別の制度・別の期限です。今回確認した国税庁の一次情報の範囲では、青色事業専従者給与の届出について、青色申告承認申請のような相続固有の独立した期限区分は示されていません。

したがって、青色申告承認申請の相続固有期限を、そのまま青色事業専従者給与の届出期限として使うことはできません。

青色申告承認申請と青色事業専従者給与の届出の両方が必要な場合は、次のようにそれぞれの期限を別々に確認し、どちらか一方の期限だけを見て他方を省略しないようにします。

  • 青色申告承認申請の期限
  • 青色事業専従者給与に関する届出の期限

状況別

自分の状況に近いものを確認します。どの状況でも、親族を青色事業専従者として扱う前提として、相続人と生計を一にする親族であること、その年の12月31日現在で15歳以上であること、原則としてその年を通じて6か月を超える期間(一定の場合は従事可能期間の2分の1を超える期間)その事業に専ら従事していることを先に確認します。

事業を引き継いでいない場合 この記事で確認する対象ではありません。ここで確認を終了します。

事業を引き継いだが、青色申告を利用しない場合 青色事業専従者給与制度は利用できません。白色申告における事業専従者控除等、別の制度を必要に応じて確認します。

相続で初めて事業を始め、1月16日以後に親族を専従者とする場合 相続人自身の事業開始日、または専従者がいることとなった日を確認し、2か月以内の期限を判定します。二つの日が異なる場合は、どちらの事由で期限が成立するかを整理します。

相続で初めて事業を始め、1月1日から1月15日までに開始した場合 原則どおり、その年の3月15日までの区分を確認します。あわせて、青色申告承認申請の期限も別に確認します。

相続前から自分でも事業をしていたが、今回初めて専従者が加わる場合 新規開業とは扱わず、新たに専従者がいることとなった日を確認します。その日が1月16日以後であれば、2か月以内の期限の対象になるかを確認します。

相続前から事業をし、すでに別の青色事業専従者がいる場合 既存の届出に今回の専従者が含まれているかを確認します。専従者の追加に当たる場合は、変更届出または新たな届出上の処理を、一般の提出手続きの記事や公式情報で確認します。

相続前から事業をし、今回の親族についてもすでに自分の届出がある場合 被相続人側の届出を引き継ぐかどうかという問題ではなく、相続人自身の既存の届出内容が、現在の職務・給与・支給条件をカバーしているかを確認します。変更があれば、変更届出を確認します。

被相続人の専従者だった親族が、そのまま相続人の事業で働く場合 被相続人側で専従者だったという事実だけで、相続人側でも届出済みとは扱いません。相続人との生計関係、相続人の事業への専従状況、相続人側の届出を改めて確認します。

青色申告承認申請の期限内だが、専従者給与届出の期限が不明な場合 二つの期限を同一視せず、事業開始日、専従者がいることとなった日、対象年を整理したうえで、専従者給与の届出期限を別に判定します。

期限を過ぎた可能性がある場合、または日付や既存の届出の内容が不明な場合 当年分から必要経費にできるかどうかを、独自に断定することはできません。次の「判断できない場合」を確認したうえで、税務署へ確認します。

判断できない場合

自分だけでは判断できない場合は、次を整理したうえで、相続人の納税地を所轄する税務署へ確認します。

  • 被相続人の死亡日
  • 実際に事業を引き継いだ日、相続人自身が事業を開始した日
  • 相続人が相続前から事業をしていたかどうか
  • 相続人自身が青色申告の承認を受けているか、相続年分から受けられる状態か
  • 給与を支払う親族の氏名・続柄
  • 相続人とその親族が生計を一にしているかどうか
  • 親族が相続人の事業に従事し始めた日
  • その年の12月31日現在の年齢(15歳以上か)、従事期間(原則6か月超/一定の場合は従事可能期間の2分の1超)、他の職業や就学等、専従要件に関係する事情
  • 相続人自身が過去に提出した青色事業専従者給与の届出書・変更届出書
  • 被相続人が提出していた届出書(参考資料として。相続人の届出済みとはみなしません)
  • 今回予定している職務内容・給与額・支給期・賞与等
  • 期限を過ぎた可能性がある場合、その日付と事情

注意点

  • 被相続人の届出を、相続人の届出済み状態とはみなしません。
  • 被相続人の青色事業専従者だった人が、自動的に相続人の青色事業専従者になるわけではありません。
  • 相続人自身が青色申告できる状態かどうかを、先に確認します。
  • 「同居している」というだけで、生計を一にしている、あるいは専従者の要件を満たしていると判断することはできません。
  • 青色事業専従者は、その年の12月31日現在で15歳以上であることが必要です。年齢要件を満たしていても、専従期間は原則6か月を超える期間(一定の場合は従事可能期間の2分の1を超える期間)という基準を別に確認し、他の職業や就学の予定等もあわせて確認します。
  • 相続日を一律に事業開始日として扱うことはできません。
  • 相続前から事業をしていた人を、一律に新規開業として扱うことはできません。
  • 1月16日以後に新たな専従者が加わる場合は、その専従者がいることとなった日を確認します。
  • 青色申告承認申請の相続に固有の期限を、専従者給与の届出期限へ転用することはできません。
  • 青色申告承認申請と専従者給与の届出の両方が必要な場合は、それぞれの期限を確認します。
  • 届出を出しただけで、給与全額が自動的に必要経費になるわけではありません。
  • 届出に記載した金額の範囲内であっても、労務の対価として相当でない過大な部分は必要経費になりません。
  • 専従者の追加や給与の増額等では、変更届出の要否を確認します。
  • 青色事業専従者給与と配偶者控除・扶養控除等の関係は、一般の記事の注意事項とあわせて確認します。
  • 社会保険上の扶養と、所得税上の取り扱いは同じではありません。
  • 期限を過ぎた場合に、当年分へ適用できるかどうかを、推測で断定することはできません。

よくある間違い

次のような考え方には注意が必要です。

  • 「父が専従者給与の届出をしていたので、自分もそのまま使える」とは限りません。相続人自身の届出を改めて確認します。
  • 「被相続人の専従者だった家族は、自動的に自分の専従者になる」とは限りません。相続人との関係を改めて確認します。
  • 「相続したら全員、相続日から2か月以内」とは限りません。起算点は事業開始日や専従者がいることとなった日などで、相続日そのものとは異なる場合があります。
  • 「被相続人が青色申告者なら、専従者給与の届出も死亡日から4か月以内」とは限りません。この期限区分は青色申告承認申請のものであり、専従者給与の届出とは別です。
  • 「青色申告承認申請を出せば、専従者給与の届出は不要」とは限りません。両方が必要な場合があります。
  • 「専従者給与の届出を出せば、青色申告承認申請は不要」とは限りません。両方が必要な場合があります。
  • 「相続前から事業をしていても、相続日は必ず新規開業日」とは限りません。既存事業の状況を確認します。
  • 「同居家族なら誰でも青色事業専従者にできる」とは限りません。生計を一にしているか、専従の要件を満たすかを確認します。
  • 「給与を支払い始めた時点の年齢だけで判定する」とは扱いません。年齢要件は、その年の12月31日現在で15歳以上かを確認します。
  • 「12月31日現在で15歳以上なら専従期間を確認しなくてよい」とは限りません。専従期間や他の職業・就学等もあわせて確認します。
  • 「他で働いていても必ず専従者にできる」とは限りません。専ら従事しているかどうかを確認します。
  • 「既存の届出が一つあれば、後から加わった専従者も自動的に含まれる」とは限りません。届出の範囲を確認します。
  • 「届出額までなら、仕事内容に関係なく全額経費にできる」とは限りません。労務の対価として相当な範囲かどうかが問われます。
  • 「給与を増額しても、変更届出は確認しなくてよい」とは限りません。変更届出の要否を確認します。
  • 「期限を過ぎても、遡って当年分にできる」とは限りません。当年分への適用可否は独自に断定できません。
  • 「税法上の扶養と社会保険の扶養は同じ」とは限りません。それぞれ別に確認します。
  • 「被相続人の届出書が見つからないと何も確認できない」とは限りません。相続人自身の届出状況等から確認を進められます。

チェックリスト

相談先

  • 青色事業専従者給与の届出、期限、既存届出の内容確認について:相続人の納税地を所轄する税務署
  • 個別の判断が難しい場合の相談:税理士等の専門家

公式リンク