相続で個人事業を引き継いだときの青色申告を確認する

概要

個人事業をしていた人が亡くなり、その事業を相続で引き継いだ場合、青色申告は自動的に引き継がれません。相続人が青色申告を続けたい、または新たに青色申告を始めたい場合は、相続人自身の名前で青色申告承認申請書を提出する必要があるかどうかを確認する必要があります。

確認すべきことは、大きく分けて次の3つです。

  • 自分(相続人)がすでに青色申告の承認を受けているか
  • 被相続人が青色申告者だったか、白色申告者だったか
  • 自分に適用される提出期限はいつまでか

期限は、被相続人が白色申告者だったか青色申告者だったかによって区分が異なり、さらに承継した時期・死亡した時期によって細かく分かれます。一律に「2か月以内」「4か月以内」と決まっているわけではありません。

この記事では、相続人自身が青色申告承認申請を確認すべきかどうかと、自分に当てはまる期限を判断できるところまで案内します。実際の青色申告承認申請書の提出手続きそのものは、別記事「所得税の青色申告承認申請書を提出する」で扱います。

このページで分かること

  • 被相続人の青色申告が自分に自動的に引き継がれるのか
  • 自分がすでに青色申告の承認を受けているかを確認する必要があるか
  • 被相続人が青色申告者だったか白色申告者だったかで何が変わるか
  • 自分に当てはまる青色申告承認申請の期限
  • 開業届の期限と青色申告承認申請の期限がどう違うか
  • 期限を過ぎてしまった可能性がある場合にどうするか
  • 青色申告を希望しない場合にどうなるか
  • 判断できない事情がある場合に、何を、どこへ確認すればよいか

対象読者

  • 個人事業を営んでいた人が亡くなり、その事業の全部または一部を相続で引き継いだ人
  • 被相続人が青色申告者だったため、自分もそのまま青色申告できると思っている人
  • 被相続人が白色申告者で、自分は新たに青色申告を始めたい人
  • 相続前は個人事業をしていなかったが、相続をきっかけに事業を始める人
  • 相続前から自分自身も個人事業を行っており、すでに青色申告の承認を受けているか改めて確認したい人
  • 相続時の提出期限を「一律2か月以内」などと思い込んでいる人
  • 開業届の期限と青色申告承認申請の期限を混同している人
  • 提出期限をすでに過ぎてしまった可能性がある人

更新日

更新日:2026年9月26日

最初に確認すること

最初に、次の順番で自分の状況を確認します。

  1. 相続によって事業を引き継いだか。
  2. 自分が青色申告を希望するか。
  3. 自分がすでに青色申告の承認を受けているか。
  4. 被相続人が青色申告者だったか、白色申告者だったか。
  5. 自分に当てはまる提出期限はどれか。

青色申告を希望する場合、確認の中心は「被相続人の申告方法を引き継ぐこと」ではなく、「相続人自身について、青色申告の承認状態と、自分に適用される期限を確認すること」です。

事業を引き継がない場合や、青色申告を希望しない場合は、この記事の確認はここで終了できます。新たに青色申告承認申請が必要と判断した場合は、別記事「所得税の青色申告承認申請書を提出する」へ進みます。

被相続人の青色申告はそのまま引き継がれない

被相続人が青色申告者だったからといって、相続人である自分が自動的に青色申告者になるわけではありません。

青色申告の承認は、承認を受けた本人に対して行われるものであり、相続によって相続人へそのまま移るものとして扱いません。被相続人が青色申告者だった場合でも、相続人が引き続き青色申告を行うには、相続人自身の名前で新たに青色申告承認申請書を提出する必要があるかどうかを確認します。

同様に、被相続人が白色申告者だったとしても、相続人が白色申告しかできないわけではありません。相続人が青色申告を希望する場合は、自分の状況に応じた期限内に申請することで、青色申告を選ぶことができます。

自分がすでに青色申告者か確認する

次に確認するのは、相続人である自分自身が、すでに青色申告の承認を受けているかどうかです。

相続前から自分でも個人事業を行っており、すでに青色申告の承認を受けている場合、青色申告の承認は毎年あらためて申請し直す手続きではありません。そのため、既存の承認をそのまま維持できる場合は、新たな申請は不要です。

ただし、相続で引き継いだ事業や所得の種類が、自分がすでに承認を受けている事業と関係が異なるなど、新たな申請が必要かどうかがはっきりしない事情がある場合は、自己判断で「不要」と決めず、既存の承認の状態と引き継いだ内容を整理したうえで、所轄の税務署へ確認します。

自分自身がすでに青色申告の承認を受けていない場合は、相続前に事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき業務を行っていたかどうかにかかわらず、今回の相続をきっかけに、自分自身について青色申告の承認を新たに受けるかどうかを確認します。青色申告を希望する場合は、新たに青色申告承認申請書を提出する必要があるかどうかを、このあとの期限の確認へ進んで判断します。

被相続人が青色申告者だったか確認する

相続人自身の状態を確認したら、次に被相続人が青色申告者だったか、白色申告者だったかを確認します。これは、自分に当てはまる提出期限の区分を決めるために必要な情報です。

確認する方法としては、被相続人が過去に提出していた確定申告書の控えや、青色申告決算書などの手元資料を確認する方法があります。

被相続人が青色申告者だったか白色申告者だったか分からない場合は、推測で決めず、手元資料を確認し、それでも分からない場合は所轄の税務署へ確認します。

青色申告承認申請が必要か確認する

ここまでの確認をもとに、自分が新たに青色申告承認申請書を提出する必要があるかどうかを整理します。

  • 青色申告を希望せず、白色申告のままでよい場合は、新たな申請は不要です。
  • 相続前からすでに自分自身が青色申告の承認を受けており、引き継いだ事業との関係で新たな申請が不要と確認できる場合は、あらためて申請する必要はありません。
  • 青色申告を希望し、かつ自分がまだ青色申告の承認を受けていない場合は、被相続人が青色申告者だったか白色申告者だったかに応じた期限内に、新たに青色申告承認申請書を提出する必要があるかどうかを確認します。

新たな申請が必要と判断した場合は、次の見出しで自分に当てはまる期限を確認したうえで、別記事「所得税の青色申告承認申請書を提出する」へ進みます。

被相続人が白色申告者だった場合の期限

被相続人が白色申告者だった場合、相続人が新たに青色申告承認申請書を提出する期限は、業務を承継した時期によって次の2つに分かれます。

業務を承継した時期 青色申告承認申請書の提出期限
その年の1月1日から1月15日までに業務を承継した場合 原則として、その年の3月15日まで
その年の1月16日以後に業務を承継した場合 業務を承継した日から2か月以内

「白色申告者から相続した場合は一律2か月以内」ではありません。1月15日までに業務を承継した場合は、原則としてその年の3月15日までとなるため、承継した時期がどちらに当たるかを必ず確認します。

被相続人が青色申告者だった場合の期限

被相続人が青色申告者だった場合、相続人が新たに青色申告承認申請書を提出する期限は、被相続人の死亡日がどの期間に属するかによって次の3つに分かれます。

被相続人の死亡日 青色申告承認申請書の提出期限
1月1日から8月31日までの間 死亡日から4か月以内
9月1日から10月31日までの間 その年の12月31日まで
11月1日から12月31日までの間 翌年の2月15日まで

「相続なら一律4か月以内」ではありません。被相続人の死亡日がいつだったかによって期限の区分が変わるため、3つの区分のどこに当てはまるかを確認します。

提出期限が土曜・日曜・祝日などに当たる場合の扱いは、国税庁の手続き案内における現行の説明に従って確認します。

なお、「死亡日」と「業務を実際に承継した日」は、必ずしも同じ日として扱いません。両者が異なる可能性がある場合は、それぞれの日付を個別に確認します。

開業届の期限とは分けて考える

青色申告承認申請書の提出期限は、開業届の提出期限とは別の手続き・別の期限です。

開業届を提出したことによって、青色申告が自動的に始まるわけではありません。青色申告を希望する場合は、開業届とは別に、この記事で確認した期限内に青色申告承認申請書を提出する必要があるかどうかを、あらためて確認します。

相続で事業を引き継いだ際の開業届の扱いは、別記事「相続で個人事業を引き継いだときの開業届を確認する」で確認してください。開業届の期限をまだ確認していない場合は、そちらもあわせて確認します。

期限を過ぎた場合

青色申告承認申請書の提出期限をすでに過ぎてしまった可能性がある場合、その年分から青色申告ができる、またはできないと自己判断しません。

期限を過ぎた場合の扱いは、承継日や死亡日をめぐる個別の事情によって異なる可能性があります。期限を過ぎたと思われる場合は、経緯や日付を整理したうえで、所轄の税務署へ確認します。

青色申告を始める場合に次にすること

期限内に新たな青色申告承認申請書の提出が必要と判断した場合は、別記事「所得税の青色申告承認申請書を提出する」へ進み、提出方法・提出先を確認します。

なお、青色申告を選ぶ場合は、青色申告承認申請書を提出するだけでなく、記帳や帳簿の保存、青色申告決算書の作成といった対応が後に必要になります。これらの詳しい内容は、この記事の対象範囲外であるため、別途確認してください。

青色申告をしない場合

青色申告を希望しない場合は、新たに青色申告承認申請書を提出する必要はありません。

ただし、青色申告をしない場合であっても、白色申告者として記帳や帳簿等の保存が不要になるわけではありません。この点は青色申告の要否とは別に確認してください。

状況別

自分の状況に当てはまるものを確認してください。

被相続人が青色申告者で、自分も青色申告をしたい場合

「被相続人が青色申告者だった場合の期限」で確認した、死亡日に応じた3つの期限区分のどれに当てはまるかを確認します。被相続人の承認がそのまま自分へ引き継がれるわけではないため、期限内に自分の名前で新たに申請する必要があるかどうかを確認します。

被相続人が白色申告者で、1月15日までに承継し、自分は青色申告をしたい場合

原則として、その年の3月15日までに申請する必要があるかどうかを確認します。

被相続人が白色申告者で、1月16日以後に承継し、自分は青色申告をしたい場合

業務を承継した日から2か月以内に申請する必要があるかどうかを確認します。

相続前から自分も個人事業をしており、すでに青色申告の承認を受けている場合

毎年あらためて申請し直す手続きではありません。ただし、承継した事業・所得との関係で新たな申請等が必要かどうかがはっきりしない事情がある場合は、既存の承認の状態と承継内容を整理して、所轄の税務署へ確認します。

相続前から個人事業をしているが、自分は白色申告だった場合

被相続人の申告方法(青色か白色か)と、承継した時期に応じて、自分に当てはまる期限をあらためて確認します。

青色申告を希望しない場合

青色申告承認申請は行いません。白色申告であっても記帳・帳簿等の保存は必要であることだけ確認しておきます。

提出期限を過ぎた可能性がある場合

その年分から青色申告ができるかどうかを自己判断せず、所轄の税務署へ確認します。

被相続人が青色申告者だったか分からない場合

過去の確定申告書の控えや青色申告決算書などの手元資料を確認します。それでも分からない場合は、所轄の税務署へ確認します。

複数の相続人がいて、遺産が未分割で事業を引き継ぐ人が明確でない場合

実際に事業を運営している人だけを自動的に申請の主体として決めず、相続関係と事業の承継状況を整理したうえで、所轄の税務署へ確認します。

事業を引き継がない場合

この記事で扱う「相続人自身の青色申告の確認」は対象外として、確認を終了できます。なお、これは被相続人の準確定申告など、被相続人側の手続きが不要になるという意味ではありません。

よくある間違い

次のような誤解が起こりやすいため、注意してください。

  1. 被相続人が青色申告者であれば、相続人も自動的に青色申告者になると思ってしまう。
  2. 被相続人が白色申告者であれば、相続人は白色申告しかできないと思ってしまう。
  3. 相続時の提出期限はすべて2か月以内だと思い込んでしまう。
  4. 相続時の提出期限はすべて4か月以内だと思い込んでしまう。
  5. 被相続人が白色申告者だった場合の「1月15日まで」の期限区分を見落としてしまう。
  6. 被相続人が青色申告者だった場合の、死亡時期による3つの期限区分を1つにまとめてしまう。
  7. 開業届を提出すれば、青色申告も自動的に始まると思ってしまう。
  8. 開業届の提出期限と、青色申告承認申請書の提出期限を同じものだと思い込んでしまう。
  9. 準確定申告における4か月の期限を、相続人自身の青色申告承認申請の期限として一律に使ってしまう。
  10. 相続人自身がすでに青色申告の承認を受けているかを確認せずに、新規申請が必要だと決めてしまう。
  11. 青色申告承認申請書を提出しただけで、青色申告特別控除65万円を必ず受けられると思い込んでしまう。
  12. 青色申告をしないのであれば、記帳や帳簿の保存も不要だと思い込んでしまう。
  13. 被相続人の死亡日と、実際に業務を承継した日を、常に同じ日として扱ってしまう。
  14. 複数の相続人がいる場合に、実際に事業をしている一人だけを自動的に申請の主体だと決めてしまう。
  15. 提出期限を過ぎても、当然にその年分から青色申告ができると思い込んでしまう。
  16. 所得税の青色申告について確認しただけで、消費税やインボイスなど、相続に関する他の税務手続きもすべて終わったと思い込んでしまう。

判断できない場合

次の情報がはっきりしない場合は、自己判断せず、所轄の税務署へ確認してください。

  1. 被相続人の死亡日
  2. 被相続人の氏名・納税地
  3. 被相続人が青色申告者だったかどうか
  4. 被相続人の事業内容・所得の種類
  5. 自分が事業を引き継いだかどうか
  6. 業務を実際に引き継いだ日
  7. 自分が相続前から事業をしていたかどうか
  8. 自分が現在、青色申告の承認を受けているかどうか
  9. 自分が青色申告を希望する年
  10. 相続人の人数・遺産分割の状況
  11. すでに提出した開業届や青色申告関係書類の内容
  12. 提出期限を過ぎた事情がある場合、その具体的な日付と事情

相談先

中心となる相談先は、相続人自身の納税地を所轄する税務署です。

上記「判断できない場合」に挙げた事項を整理したうえで相談すると、確認がスムーズに進みます。

事業承継の内容が複雑な場合、相続人が複数いる場合、所得区分が分かりにくい場合、既存の事業との関係が不明な場合など、個別の税務判断が必要な事情がある場合は、税理士へ相談することも選択肢の一つです。

公式リンク

次の公式情報で、最新の制度内容・様式を確認できます。

チェックリスト

事業承継・希望の確認

被相続人の状態確認

期限確認

次の行動

あなたの場合はこちら

自分の判断結果に応じて、次のいずれかへ進みます。

  • 新たに青色申告承認申請書の提出が必要と判断した場合:別記事「所得税の青色申告承認申請書を提出する」で、提出方法や提出先を確認してください。
  • 相続に伴う開業届をまだ確認していない場合:別記事「相続で個人事業を引き継いだときの開業届を確認する」で、開業届の要否・期限を確認してください。
  • 事業を引き継がない場合:この記事で扱う相続人自身の青色申告の確認は対象外です。ここで確認を終了できます。
  • 提出期限を過ぎている、承継日が分からない、既存の承認との関係が不明であるなど、判断できない事情がある場合:「判断できない場合」で整理した確認事項をもとに、所轄の税務署へ確認してください。