相続で個人事業を引き継いだときの給与支払事務所等の届出を確認する

概要

個人事業を営んでいた人が亡くなり、その事業を相続人が引き継ぐと、事務所も、従業員も、給与の支払日も、これまでとほとんど変わらないまま続いていくことがあります。

しかし、給与等の支払者としての立場は別です。被相続人と相続人は別の個人であり、被相続人名義の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の届出内容が、相続人へそのまま引き継がれるわけではありません。

このページは、相続で個人事業を引き継いだ人が、被相続人側で給与支払事務が終了したのか、相続人自身が新たに給与等の支払者になるのか、そしてどちらの届出が必要になるのかを、順番に確認するためのページです。届出書の記入方法そのものではなく、「誰の、どの届出が必要か」を判断するところまでを扱います。

このページで分かること

  • 被相続人が給与等を支払っていたかどうかの確認の仕方
  • 被相続人側の給与支払事務所等の廃止届が必要かどうかの考え方
  • 相続人自身が給与等の支払者になるかどうかの確認の仕方
  • 相続人側の給与支払事務所等の開設届が必要かどうかの考え方
  • 被相続人側と相続人側を同じ届出として扱ってはいけない理由
  • 開設・廃止・移転・引継ぎの区別
  • 令和8年1月1日以後の個人事業の開業・廃業届との関係
  • 届出の期限と、期限の起算点となる日の考え方
  • 相続前から相続人自身が給与支払事務所等を持っていた場合の考え方
  • 青色事業専従者給与を支払う場合に別途確認すること
  • 源泉所得税や年末調整など、届出のあとに残る手続きとのつながり
  • 自分の状況が判断できない場合に確認する内容

対象読者

  • 個人事業を営んでいた人が亡くなり、その事業を引き継いだ相続人
  • 被相続人が従業員や家族従業者へ給与を支払っていた人
  • 被相続人の従業員を引き続き雇用し、自分が給与を支払う予定の人
  • 青色事業専従者給与を支払う予定の人
  • 被相続人の届出が相続人へ自動的に引き継がれると思っている人
  • 相続をきっかけに、初めて給与等の支払者になる人
  • 相続前から自分自身も給与を支払っており、既存の給与支払事務所等がある人
  • 死亡日、最後の給与支払日、事業を引き継いだ日、給与支払を始めた日がそれぞれ異なる人
  • 届出の期限を過ぎてしまった可能性がある人

更新日

更新日:2026年9月27日

最初にやること

最初に、次の2点を分けて確認します。

  1. 被相続人が、亡くなる前に従業員や家族従業者などへ給与等を支払っていたか
  2. 相続人自身が、事業を引き継いだあとに従業員や家族従業者などへ給与等を支払うか

この2点は、それぞれ別の確認です。被相続人が給与を支払っていたことと、相続人が給与を支払うことは、必ずしも一致しません。まずこの2つを分けて確認してください。

まず被相続人が給与を支払っていたか確認する

被相続人が生前、従業員や家族従業者、青色事業専従者などへ給与等を支払っていたかを確認します。

被相続人が給与等の支払者だった場合は、死亡によって、被相続人を支払者とする給与支払事務がいつ終了したのかを確認する必要があります。死亡と同時にすべての事務が終わるとは限らず、死亡前までの給与の支払や源泉徴収、年末調整、源泉徴収票の交付といった最終的な処理が、死亡後も残ることがあります。

被相続人が生前に給与等を支払っていなかった場合は、被相続人側の給与支払事務所等の廃止届は、この記事の対象になりません。

相続人自身が給与を支払うか確認する

次に、相続人自身が、事業を引き継いだあとに従業員や家族従業者などへ給与等を支払うかを確認します。

被相続人の従業員をそのまま引き続き雇用する場合も、支払者は相続人へ変わります。給与を支払う実態が続いて見えても、支払者としての立場が変わったことは変わりません。

相続人が青色事業専従者へ給与を支払う場合も、給与等を支払うケースに含めて確認します。

事業を引き継いでも、相続人自身が給与等を支払わないのであれば、相続人側の給与支払事務所等の開設届は、機械的に提出する必要はありません。

被相続人側と相続人側を分けて考える

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は、給与等の支払者を単位とした手続きです。事業を承継しても、被相続人と相続人は別の個人であるため、次の2つを分けて考えます。

  • 被相続人側:従来の給与支払事務が、廃止に該当するかどうか
  • 相続人側:相続人自身が新たに給与支払事務を始め、開設に該当するかどうか

事務所の所在地、従業員、給与の支払日などがそのまま続いていても、届出の主体まで自動的に同じになるわけではありません。被相続人名義の届出が、相続人へそのまま引き継がれると考えないようにしてください。

被相続人側で廃止の届出が必要か確認する

被相続人が生前に給与等の支払者だった場合は、被相続人側の給与支払事務が終了したかどうかを確認します。

給与支払事務が終了していれば、被相続人を支払者とする給与支払事務所等の廃止の届出を確認します。廃止の事実があった日がいつかは、死亡日と必ずしも同じとは限らないため、次の「どの日から1か月を数えるか」で改めて確認します。

被相続人が生前から給与等を支払っていなかった場合は、そもそも廃止すべき給与支払事務所等がないため、この確認は不要です。

相続人側で開設の届出が必要か確認する

相続人自身が、事業を引き継いだあとに新たに給与等の支払者となる場合は、相続人側の給与支払事務所等の開設に該当するかどうかを確認します。

該当する場合は、開設の事実があった日から1か月以内に、給与支払事務所等の開設の届出を確認します。

相続人が給与等を支払わない場合は、この確認は不要です。相続前から相続人自身に既存の給与支払事務所等がある場合は、次の「相続前から自分に給与支払事務所等がある場合」で確認します。

相続前から自分に給与支払事務所等がある場合

相続人が、相続の前から自分自身の事業で給与等を支払っており、既に給与支払事務所等の届出をしていた場合は、相続を理由に一律に「新規開設」として扱いません。

この場合は、次を確認します。

  • 相続人が既に持っている給与支払事務所等の届出内容
  • 被相続人から引き継いだ事業について、給与支払事務を扱う場所が、既存の給与支払事務所等と同じか、別に増えるか
  • 別の所在地で新たに給与支払事務を扱うことになる場合、その場所について開設に該当するか

相続前からの届出がそのまま今回の状況に対応しているとは限らないため、既存の届出内容と、今回承継した事業の給与支払事務の関係を確認してください。

開設・廃止と移転・引継ぎを区別する

現行の届出書の記載要領では、既存の給与支払事務所等への「引継ぎ」として、法人の合併・分割や支店等の閉鎖といった場合が示されています。個人事業者の死亡・相続について、これと同じ包括的な引継ぎ処理を示す一次情報は確認できていません。

そのため、次のように扱いません。

  • 被相続人から相続人への変更を、単なる「移転」として届け出る
  • 相続を、法人の合併・分割と同じ「引継ぎ」として処理する
  • 被相続人側の廃止と相続人側の開設を、1枚の届出書で済ませられると決めつける

事務所の所在地が変わらない場合でも、届出の主体が変わることに変わりはありません。被相続人側の廃止の要否と、相続人側の開設の要否は、別々に確認します。

期限・いつまでに

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は、開設・移転・廃止の事実があった日から1か月以内に提出することが必要です。

  • 提出先:開設・廃止の場合は、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署です。移転の場合は、移転前の所在地の所轄税務署です。
  • 提出方法:e-Taxソフトによる提出、または書面の持参・送付です。

被相続人側で廃止の届出が必要になる場合と、相続人側で開設の届出が必要になる場合は、それぞれの事実日と期限を分けて確認します。

どの日から1か月を数えるか

相続に関わる届出では、次の日をそれぞれ別のものとして扱います。

  • 被相続人の死亡日
  • 被相続人側の給与支払事務が実際に終了した日
  • 事業を承継した日
  • 相続人が給与支払事務を始めた日
  • 相続人が実際に最初の給与を支払う日
  • 給与支払事務所等を開設した日

これらは同じ日になることもあれば、異なることもあります。1か月の期限は、「相続が始まった日から一律に1か月」ではなく、該当する開設・廃止の事実があった日を基準に確認します。

また、現行の届出書には「給与支払を開始する年月日」という欄があります。給与支払事務所等を開設した月のうちに実際の給与支払が始まらない場合は、開始日または開始予定日を記載する欄です。したがって、給与支払事務所等を開設した日と、実際に給与支払が始まる日は、必ずしも同じ日とは限りません。

令和8年以後の個人事業の開業・廃業届との関係

令和8年1月1日以後に給与支払事務所等を開設・移転・廃止した個人事業について、個人事業の開業・廃業等届出書を提出しただけでは、給与支払事務所等の届出が不要になるわけではありません。

この記事が扱う時点では、給与支払事務所等の届出を、個人事業の開業・廃業届とは別の手続きとして独立に確認してください。

青色事業専従者給与を支払う場合

相続人が青色事業専従者へ給与を支払う場合、青色事業専従者給与に関する届出だけで、給与支払事務所等や源泉徴収に関する手続きまで完了するわけではありません。

青色事業専従者給与も、給与等の支払に含めて確認します。相続人が給与等の支払者となるかどうか、給与支払事務所等の開設届が必要かどうか、源泉所得税の徴収・納付などが必要かどうかを、それぞれ別に確認してください。

状況別

同じ「相続で事業を引き継ぐ」場合でも、被相続人と相続人それぞれの給与支払の有無によって、確認する内容が変わります。自分の状況に近いものを確認してください。

被相続人は給与を支払っておらず、相続人も給与を支払わない場合 給与支払事務所等の届出は、この記事の中心的な対象にはなりません。他の相続・開業に関する手続きだけを確認してください。

被相続人は給与を支払っていたが、相続人は給与を支払わない場合 被相続人側の給与支払事務の廃止を確認します。相続人側の開設届は、機械的に提出する必要はありません。

被相続人は給与を支払っており、相続人も同じ従業員などへ給与を支払う場合 中心的なケースです。被相続人側の廃止確認と、相続人側の開設確認を分けて行います。従業員や所在地が同じであっても、支払者が変わったことは変わりません。

被相続人は給与を支払っていなかったが、相続人が承継後に初めて給与を支払う場合 相続人側の開設確認が中心になります。被相続人側に廃止すべき給与支払事務がなければ、廃止届は作成しません。

相続人が青色事業専従者給与だけを支払う場合 青色事業専従者給与も含めて、給与等の支払者となるかを確認し、開設届や源泉徴収事務を別に確認します。

相続人が相続前から自分の事業で給与を支払っていた場合 相続を理由に一律に「新規開設」とはしません。相続人自身の既存の給与支払事務所等、所在地、届出内容、今回追加された事務所の有無を確認します。

被相続人と相続人で給与支払事務を扱う所在地が同じ場合 所在地が同じであっても、届出の主体が同じとは限りません。被相続人側と相続人側を分けて確認します。

相続人が別の所在地で給与支払事務を行う場合 相続人側の開設と所在地を確認します。被相続人から相続人への変更を、機械的に「移転」として扱いません。

死亡後に被相続人側の給与・源泉所得税などの最終処理が残っている場合 廃止届を提出すれば残務がなくなるわけではありません。被相続人側の源泉所得税、年末調整、源泉徴収票、法定調書などを別に確認します。

日付・主体・届出区分を決められない場合 「判断できない場合」で示す確認軸に沿って整理し、所轄税務署へ確認してください。

届出が必要な場合に確認すること

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の詳しい記入方法は、この記事の範囲ではありません。次へ進むために必要な基本情報だけを示します。

  • 正式様式名:「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」
  • 期限:開設・移転・廃止の事実があった日から1か月以内
  • 提出先:開設・廃止は給与支払事務所等の所在地の所轄税務署です。移転は移転前の所在地の所轄税務署です。
  • 提出方法:e-Taxソフトによる提出、または書面の持参・送付
  • 現行様式では、届出者の情報、届出書の種別、届出内容・理由、給与支払事務所等の情報、従事員数などを記載します。
  • 相続人側の届出では、相続人自身を届出者として手続きを進めます。

源泉所得税などの残る手続きを確認する

相続人側

相続人が給与等の支払者となる場合、給与支払事務所等の届出だけで手続きが終わるわけではありません。必要に応じて、次を確認します。

  • 給与からの源泉徴収
  • 源泉所得税・復興特別所得税の納付
  • 源泉所得税の納期の特例
  • 扶養控除等申告書
  • 年末調整
  • 源泉徴収票
  • 法定調書
  • 給与支払報告書

被相続人側

被相続人側についても、給与支払事務所等の廃止確認だけで最終的な処理が終わるわけではありません。死亡前までの給与支払・源泉徴収・納付、年末調整や源泉徴収票の扱いについて、必要な情報を別途確認してください。

納期の特例

被相続人が源泉所得税の納期の特例の承認を受けていたとしても、その承認が相続人へ自動的に引き継がれるわけではありません。相続人自身が納期の特例を利用する場合は、相続人側で必要な申請と適用時期を確認してください。

必要なもの

届出の要否を判断するために、あらかじめ次を確認しておくと、手続きを進めやすくなります。

  • 被相続人が給与を支払っていたか分かる資料
  • 被相続人名義の給与支払事務所等の届出控えやe-Taxの記録があれば、その内容
  • 被相続人の最後の給与支払や給与計算の状況
  • 被相続人の死亡日
  • 被相続人側の給与支払事務を終了した日
  • 相続人が事業を引き継いだ日
  • 相続人が給与支払事務を始めた日
  • 相続人が給与を支払う相手と、支払開始予定日
  • 相続人自身に既存の給与支払事務所等があるか
  • 給与支払事務を扱う所在地
  • 青色事業専従者給与を支払う場合は、その届出内容と開始時期

被相続人の過去の届出書が見つからない場合でも、そのことだけを理由に相続人側の確認を止める必要はありません。分かる範囲で確認を進め、不明な点は所轄税務署へ確認してください。

よくある間違い

  • 被相続人の給与支払事務所等の届出が、相続人へ自動的に引き継がれると思ってしまう。
  • 事業を相続したら、必ず給与支払事務所等の開設届が必要だと思ってしまう。
  • 相続人が給与を支払わないのに、開設届を出そうとしてしまう。
  • 従業員が同じなら、給与の支払者も同じだと思ってしまう。
  • 所在地が同じなら、届出は不要だと思ってしまう。
  • 被相続人から相続人への変更を、「移転」だと考えてしまう。
  • 法人の合併・分割の引継ぎ欄を、個人事業の相続へそのまま使ってしまう。
  • 被相続人側の廃止と相続人側の開設を、一つの届出で済ませられると決めつけてしまう。
  • 死亡日を、必ず廃止日・開設日だと考えてしまう。
  • 相続開始日から1か月以内が、一律の期限だと思ってしまう。
  • 給与支払開始日と、給与支払事務所等の開設日を、必ず同じ日だと考えてしまう。
  • 個人事業の開業届を出せば、令和8年以後も給与支払事務所等の届出は不要だと思ってしまう。
  • 青色事業専従者給与の届出を出せば、給与支払事務所等の届出も済むと思ってしまう。
  • 被相続人の納期の特例が、相続人へ自動的に引き継がれると思ってしまう。
  • 廃止届を出せば、被相続人側の源泉所得税・年末調整・法定調書なども終わると思ってしまう。
  • 期限を過ぎたら、届出自体が不要になると思ってしまう。

注意点

届出の期限を過ぎている可能性がある場合でも、届出が不要になるわけではありません。

  • どの事実日を起算点とするか
  • どの届出区分が必要か
  • 現在どの手続きの状態まで進んでいるか

をまず整理し、自己判断で提出を見送らず、所轄税務署へ確認してください。

また、被相続人側の廃止の要否と、相続人側の開設の要否は分けて確認します。片方について確認・手続きが終わっても、もう片方の要否まで自動的に決まるわけではありません。それぞれの状況にあわせて確認を進めてください。

チェックリスト

判断できない場合

自分の状況が、この記事の説明だけでは判断できない場合は、次を整理したうえで所轄税務署へ確認してください。

  1. 被相続人は誰に、どの名義で給与を支払っていたか
  2. 被相続人名義の給与支払事務所等の届出は存在するか
  3. 被相続人側の給与支払事務はいつ終了したか
  4. 死亡後に、被相続人側の給与・源泉所得税の最終処理が残っているか
  5. 相続人はいつ事業を引き継いだか
  6. 相続人は誰に給与を支払うか
  7. 相続人の給与支払事務はいつ始まったか
  8. 実際の給与支払開始日はいつか
  9. 相続人自身に既存の給与支払事務所等があるか
  10. 給与支払事務を扱う所在地はどこか
  11. 開設・廃止・移転のどの区分に該当するか
  12. どの日を「事実があった日」として1か月の期限を数えるか
  13. 令和8年1月1日以後の開設・廃止か
  14. 被相続人・相続人それぞれの源泉所得税の納税地・整理番号などをどう扱うか
  15. 相続人が納期の特例を利用する場合、新たな申請が必要か
  16. 期限を過ぎている場合、現在どの手続きを行うべきか

相談先

  • 所轄税務署(給与支払事務所等の所在地を管轄する税務署です。開設・廃止・移転それぞれの提出先の考え方は「期限・いつまでに」を確認してください。)
  • 国税局電話相談センター

公式リンク

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読者の状態 案内


被相続人も相続人も給与を支払わない 給与支払事務所等の届出確認はここで終了です

被相続人は給与を支払っていたが相続人は支払わない 被相続人側の廃止届出を確認してください

相続人が新たに給与を支払う 相続人側の開設届出を確認してください

被相続人の従業員等へ相続人が引き続き給与を支払う 被相続人側の廃止と相続人側の開設を、別々に確認してください

相続人が青色事業専従者給与を支払う 青色事業専従者給与の届出、給与支払事務所等、源泉徴収を分けて確認してください

相続人が相続前から給与を支払っていた 既存の給与支払事務所等と、今回の承継後の状態を確認してください

日付・区分が決められない 「判断できない場合」の確認軸を整理し、税務署へ確認してください