消費税簡易課税制度選択届出書を提出する

概要

消費税の計算方法を「簡易課税制度」に切り替えたい事業者は、原則として事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。届出書を提出しただけで自動的に簡易課税が適用されるわけではなく、提出のタイミングや基準期間の課税売上高などの条件を満たして初めて、希望する課税期間から適用されます。

この記事は、消費税の課税事業者で簡易課税制度を選択したい個人事業者・法人、今後の課税期間から簡易課税へ移行したい事業者、新規開業・設立やインボイス登録を機に簡易課税を検討している事業者、2割特例・3割特例の適用後に簡易課税へ移りたい事業者を主な対象としています。

この記事では、届出書を提出する前に確認すべき条件、提出期限、提出方法、提出後に確認すべきことを中心に案内します。事業区分ごとのみなし仕入率の詳細な判定方法や、一般課税と簡易課税のどちらが有利かという税務判断そのものは、この記事の範囲外です。

この記事を読むことで、自分が届出書を提出すべき場面かどうか、いつまでに提出すればどの課税期間から適用できるか、適用や提出ができない条件がないかを確認し、届出を実行できる状態まで進められます。

このページで分かること

  • 自分が「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する場面かどうか
  • いつまでに提出すれば、どの課税期間から簡易課税を適用できるか
  • 簡易課税を適用できない場合や、届出書を提出できない場合の条件
  • どの方法で、どこへ届出書を提出するか
  • 提出後に確認・保存しておくべきこと

対象読者

主に次のような事業者を対象としています。

  • 消費税の課税事業者で、簡易課税制度を選択したい個人事業者・法人
  • 今後の課税期間から簡易課税へ移行したい事業者
  • 新規開業・設立した課税期間から簡易課税を選択できるか確認したい事業者
  • インボイス登録を機に課税事業者となり、経過措置によって当該課税期間から簡易課税を選べるか確認したい事業者
  • 2割特例・3割特例の適用後に簡易課税へ移行したい事業者

更新日:2026年10月3日

消費税簡易課税制度選択届出書とは

簡易課税制度は、課税売上げに係る消費税額を基礎として、事業区分ごとに定められたみなし仕入率を用いて、仕入れに係る消費税額を計算する制度です。実際の課税仕入れの金額を積み上げて計算する一般課税に比べて、事務負担を抑えられる場合があります。

簡易課税制度を利用するには、原則として、あらかじめ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。この記事では、みなし仕入率の詳しい計算方法よりも、届出書を提出する前に確認すべき適用条件と、提出によって生じる影響を優先して説明します。

基準期間は、個人事業者では前々年、法人では原則として前々事業年度です。基準期間の課税売上高が、簡易課税を適用できるかどうかの基準になります。

まず確認すること

簡易課税制度の適用と届出書の提出について、最初に次の点を押さえてください。

  • 簡易課税制度は、原則として事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出して選択します。
  • 原則の提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。
  • ただし、新規開業等の課税期間、インボイス登録に伴う経過措置、2割特例・3割特例の適用後には、原則とは異なる期限のルールがあります。
  • 基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は、届出書の効力があっても簡易課税を適用できません。
  • 固定資産等の取得状況によっては、届出書を提出できない期間があります。該当しそうな場合は、提出前に確認してください。

届出書を提出すれば必ず簡易課税になるとは限りません。基準期間の課税売上高や提出制限など、他の条件も満たしている必要があります。

まず、次の表で自分に関係する確認事項を把握してください。


確認すること 基本的な扱い


基準期間の課税売上高 5,000万円以下の課税期間で簡易課税を適用できる

通常の選択 適用課税期間の初日の前日までに届出

事業開始課税期間 その課税期間中に提出すれば当該課税期間から選択可能

インボイス登録に伴う経過措置 条件に該当すれば登録日を含む課税期間中の提出で当該課税期間から適用可能

2割特例・3割特例の翌課税期間 現行の特例により、通常より後の期限まで提出できる場合がある

調整対象固定資産・高額特定資産等 一定の場合、届出書を提出できない期間がある

すでに選択届出書を提出済み 不適用届を提出しない限り効力が継続するため、重複提出の要否を確認する

この表だけで自分の状況をすべて判断できるとは限りません。該当しそうな行がある場合は、後続の見出しで詳しく確認してください。

簡易課税制度を選択できる条件

基準期間の課税売上高(5,000万円基準)

簡易課税制度を適用できるのは、選択届出書を提出した課税事業者のうち、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間です。

基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間では、届出書の効力があっても簡易課税を適用できません。

一方で、選択届出書の効力自体は、不適用届出書を提出しない限り原則として存続します。ある課税期間で基準期間の課税売上高が5,000万円を超えて簡易課税を適用できなかった場合でも、その後の課税期間で基準期間の課税売上高が再び5,000万円以下になれば、他の提出制限に該当しない限り、簡易課税が再び適用されることがあります。5,000万円を超えて適用できなかったことと、届出書の効力が消滅することは、同じ意味ではありません。

また、2024年10月1日以後に開始する課税期間では、課税期間の初日に国内に恒久的施設(PE)を有しない国外事業者は、簡易課税制度の適用を受けることができません。国外事業者に該当する場合は、5,000万円基準とは別にこの条件も確認してください。

届出書を提出できない場合(提出制限)

次のいずれかに該当する場合は、一定期間、選択届出書を提出できないことがあります。

  • 課税事業者を選択した事業者が、一定の調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合
  • 新設法人・特定新規設立法人が、一定の調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合
  • 高額特定資産の仕入れ等を行った場合
  • 自己建設高額特定資産に関する制限に該当する場合
  • 高額特定資産である棚卸資産等について、調整措置の適用を受けた場合

これらの提出制限に該当するかどうかの個別判定は、この記事では行いません。

一般課税の課税期間に高額な設備、建物、棚卸資産等を取得していないか、課税事業者選択や新設法人等の特例と組み合わさっていないかを確認し、該当する可能性がある場合は、国税庁の記載要領または納税地を所轄する税務署で、届出書を提出できるかどうかを確認してください。

期限・いつまでに

期限は、どの課税期間から簡易課税を適用したいかによって異なります。自分に当てはまる区分を確認してください。

原則の期限

簡易課税制度を選択する場合の原則の提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。

期限が日曜日・祝日等にあたる場合でも、提出期限は翌開庁日へ延長されません。期限日が近い場合は、余裕をもって提出してください。

郵便・信書便による提出は、発信主義の扱いが適用されます。提出方法によって、いつの時点で提出したことになるかが変わる場合があるため、提出前に確認してください。

事業を開始した課税期間から選択する場合

事業を開始した日の属する課税期間から簡易課税を選択する場合は、その課税期間中に提出すれば、当該課税期間から選択できます。この場合は、原則の期限(課税期間の初日の前日まで)とは異なる扱いになります。

インボイス登録に伴う経過措置

免税事業者が、法令上の経過措置の対象期間に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる場合は、一定の条件のもとで、その登録日を含む課税期間中に届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度を適用できます。

この経過措置は、対象期間や条件によって扱いが変わります。通常の期限ルールとして一律に扱わず、自分が経過措置の対象になるかを個別に確認してください。

2割特例・3割特例の適用後に移行する場合

2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度を適用する場合、原則として、その翌課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税を適用できます。

3割特例は、現行の国税庁案内では、インボイス発行事業者の登録を受けた一定の個人事業者について、2027年分(令和9年分)・2028年分(令和10年分)を対象とする経過措置です。法人など、3割特例の対象でない事業者まで一律にこの期限特例を前提としないでください。

また、2割特例の適用を受けた翌課税期間が2026年9月30日以前に終了する課税期間である場合は、その課税期間の末日までに提出する扱いです。

この期限特例は2026年度税制改正を反映した時点依存の情報です。提出前に、国税庁「令和8年度 税制改正特集」などの最新案内で確認してください。

選択する前に知っておくこと

選択後の変更制限

簡易課税制度を選択した場合、原則として2年間は、実額計算による仕入税額控除の方法(一般課税)へ変更できません。

簡易課税をやめる場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出が必要であり、原則として、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに提出します。選択後すぐに自由に一般課税へ戻せるわけではない点に注意してください。

簡易課税が有利かどうかは事業ごとに異なる

簡易課税が有利かどうかは、事業区分、みなし仕入率、実際の課税仕入れの規模、設備投資の予定などによって変わります。簡易課税の方が必ず得になる、あるいは事務が楽だから選ぶべきといった一律の判断はできません。

届出書を提出する前に、少なくとも次を確認してください。

  • 自分の事業区分とみなし仕入率
  • 実際の課税仕入れの規模
  • 近く大きな設備投資等を予定していないか
  • 選択後の原則2年間の変更制限を受けても問題ないか

用意するもの・確認する情報

届出書を作成する前に、少なくとも次の情報を確認できるようにしてください。

  • 納税地
  • 氏名・名称
  • 個人番号または法人番号等、様式上必要な情報
  • 適用を開始したい課税期間
  • 基準期間
  • 基準期間の課税売上高
  • 事業内容
  • すでに提出している消費税関係の届出の状況
  • 高額な資産取得等による提出制限の可能性

添付書類が常に必要というわけではありません。実際の記載項目や添付書類は、届出書を作成する時点の現行の様式・記載要領に従って確認してください。

提出方法

届出書の提出方法には、e-Tax、書面を税務署へ持参、書面を送付の3種類があります。まず自分がどの方法を使うかを決めてから、それぞれの実行方法を確認してください。

個人事業者は、e-Taxソフト(WEB版)のマイページから届出できます。スマートフォン、タブレット、パソコンから利用可能です。

法人も、e-Taxソフト(WEB版)またはパソコン版e-Taxソフト等、国税庁が案内する現行の方法に従って提出できます。

e-Taxで提出する

e-Taxで提出する場合は、国税庁が案内する現行の方法に従って、届出内容を入力・送信します。画面の名称や操作手順は改修によって変わることがあるため、この記事では細かい操作手順は固定せず、国税庁の最新の案内を確認しながら進めてください。

提出後は、受信結果など、提出したことを確認できる記録を保存してください。提出しただけで手続きが終わったと考えず、記録の保存まで行って初めて完了とします。

書面で提出する

書面で提出する場合は、現行の様式と記載要領を使って届出書を作成し、納税地を所轄する税務署長へ持参または送付します。

持参・送付のいずれの場合も、控えや送付記録など、後から提出状況を確認できるものを残してください。

提出先

届出書の提出先は、納税地を所轄する税務署長です。

所轄する税務署は、事業者ごとの納税地によって異なります。自分の納税地を所轄する税務署は、国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」で確認してください。

提出後に確認すること

届出書を提出しただけでは、簡易課税の適用が確定したとは限りません。次の状態になっているかを確認してください。

  1. 適用を開始したい課税期間を確認した
  2. 自分に適用される提出期限を確認した
  3. 提出制限に該当しないことを確認した、または必要な公式確認を行った
  4. 届出書を適切な方法で提出した
  5. 提出したことを確認できる記録を確保した
  6. 選択後の変更制限と、確定申告の際に簡易課税で計算する必要があることを把握した

これらを満たした時点で、この記事が案内する手続きは完了です。実際の消費税の申告そのものは、別途、確定申告の手続きに従って行う必要があります。

期限に間に合わなかった・やむを得ない事情がある場合

単純に提出期限を過ぎてしまった場合、後から提出すれば遡って適用されるわけではありません。

一方で、やむを得ない事情により期限までに選択届出書を提出できなかった場合には、特例承認申請の制度があります。国税庁「D1-24 消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請手続」では、やむを得ない事情がやんだ日から2月以内に、特例承認申請書と対象の届出書をあわせて提出する手続きが案内されています。

災害等については、これとは別の特例制度・専用案内があります。単純な期限徒過の場合と混同しないよう、自分の状況がどちらに当てはまるかを確認してください。

状況別

来期から簡易課税にしたい通常のケース

原則の期限を確認し、提出制限がなければ、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書を提出します。

今年開業・設立した場合

事業を開始した課税期間から簡易課税を適用したい場合は、その課税期間中に提出すれば選択できる特例を確認してください。

インボイス登録で課税事業者になった場合

インボイス登録に伴う経過措置の対象かどうかを確認してください。対象であれば、登録日を含む課税期間中の提出で、その課税期間から適用できる可能性があります。

2割特例・3割特例の次に簡易課税へ移りたい場合

通常の期限ではなく、現行の期限特例が使えるかどうかを確認してください。

高額な設備・資産を取得した場合

提出制限に該当する可能性があります。届出書を提出する前に、国税庁の記載要領または納税地を所轄する税務署で確認してください。

すでに選択届出書を提出したことがある場合

過去に基準期間の課税売上高が一時的に5,000万円を超えて簡易課税を使えなかっただけであれば、選択届出書の効力が存続している可能性があります。重複提出を前提にせず、過去の届出状況を確認してください。

よくある間違い

  • 基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら、自動的に簡易課税になると考える
  • 原則の期限だけを見て、新規開業、インボイス、2割特例・3割特例後の期限特例を見落とす
  • 届出書を提出すれば、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えていても簡易課税を使えると考える
  • 高額な資産等による提出制限を確認しない
  • 一度簡易課税を選んだ後も、毎年選択届出書を出し直す必要があると考える
  • 選択後すぐに自由に一般課税へ戻せると考える
  • 簡易課税が必ず税額上有利だと考える
  • 提出した記録を残さない

チェックリスト

相談先

記事だけでは判断できない事項は、あらかじめ確認する内容を整理したうえで、国税庁の国税相談窓口または納税地を所轄する税務署へ確認してください。

提出制限について確認する場合

次のような内容を確認してください。

  • 過去に課税事業者を選択したことがあるか
  • 新設法人・特定新規設立法人に該当するか
  • 調整対象固定資産・高額特定資産等の取得時期
  • 一般課税・簡易課税・2割特例等の適用状況
  • いつの課税期間から簡易課税を選択できるか

期限の特例について確認する場合

次のような内容を確認してください。

  • 新規開業等の課税期間に該当するか
  • インボイス登録による経過措置の対象か
  • 2割特例・3割特例を適用した翌課税期間か
  • 該当する課税期間の終了日・申告期限
  • やむを得ない事情に係る特例承認の対象となり得るか

公式リンク

この記事の内容に関連する国税庁の現行案内は、次のページで確認できます。


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