消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する
概要
すでに消費税簡易課税制度選択届出書を提出している事業者が、簡易課税をやめて一般課税に戻るときは、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出します。この届出書を出さない限り、選択届出書の効力は続き、条件が整えば簡易課税が再び適用されます。
この記事は、簡易課税をやめたいと考えている個人事業者・法人を対象に、不適用届出書を提出できる時期、原則の提出期限、提出方法と提出先、提出後に必要な準備までを、判断できる順番で案内します。事業を廃止する場合や、やむを得ない事情で期限に間に合わなかった場合の扱いも扱います。
一般課税と簡易課税のどちらが有利かという税額計算の詳細や、インボイス制度における帳簿・請求書等の保存要件の網羅的な解説は、この記事の範囲外です。個別の有利不利の判断や、具体的な記載方法は、国税庁の一次情報または所轄の税務署で確認してください。
このページで分かること
- 消費税簡易課税制度選択不適用届出書がどのような書類か
- 不適用届出書を提出できる時期と、2年継続要件の考え方
- 不適用届出書の原則の提出期限
- 一般課税へ移る前に確認しておくこと
- 届出書の提出に必要な情報
- 提出方法(e-Tax・持参・送付)と提出先
- 提出後に確認しておくこと
- 期限に間に合わなかった場合と、やむを得ない事情がある場合の特例承認申請
- 事業を廃止する場合の扱い
対象読者
この記事は、主に次のような方を対象にしています。
- すでに消費税簡易課税制度選択届出書を提出しており、今後は簡易課税をやめたい個人事業者・法人
- 一般課税に移行して、実際の課税仕入れ等に基づく仕入税額控除を行いたい事業者
- 大きな設備投資等を予定しており、今後の課税方式を見直している事業者
- 過去に簡易課税の適用を開始した時期から、不適用届出書を提出できる時期を確認したい事業者
- 事業を廃止するにあたり、簡易課税制度の不適用に関する届出が必要かを確認したい事業者
- やむを得ない事情により、原則の期限までに届出できなかった事業者
更新日:2026年10月3日
消費税簡易課税制度選択不適用届出書とは
消費税簡易課税制度選択不適用届出書は、簡易課税制度の選択をやめる意思を税務署へ届け出るための書類です。
「その課税期間では簡易課税を適用できなかった」という事実だけを届け出る書類ではありません。
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えたために、その課税期間で簡易課税を適用できないことがあっても、不適用届出書を提出していなければ、選択届出書の効力は続いたままです。その後、基準期間の課税売上高が5,000万円以下に戻った課税期間では、再び簡易課税が適用されます。
このため、「今の課税期間だけ簡易課税を使えない」ことと、「簡易課税の選択自体をやめる」ことを分けて考える必要があります。今後も簡易課税へ戻る意思がないのであれば、不適用届出書の提出が必要です。
まず確認すること
簡易課税をやめる手続きに進む前に、次の表で自分の状況を確認します。
| 確認すること | 基本的な扱い |
|---|---|
| 本当に簡易課税の選択をやめたいか | 一時的に基準期間の課税売上高が5,000万円を超えて適用できないだけか、選択自体を終了したいかを区別します。 |
| 適用開始からの期間 | 原則として、簡易課税の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、不適用届出書を提出できません。 |
| やめたい課税期間 | その課税期間の初日の前日までが原則の提出期限です。 |
| 一般課税への準備 | 適用をやめる課税期間の初日から、仕入税額控除に必要な帳簿・請求書等の保存を確認します。 |
| 期限を過ぎた | 単純な期限徒過で、開始済みの課税期間へ遡って一般課税にできる前提にせず、次の課税期間からの不適用を検討します。 |
| やむを得ない事情があった | 特例承認申請の対象となり得るため、専用の手続きを確認します。 |
| 事業を廃止した | 通常の不適用期限・2年継続要件だけで処理せず、事業廃止時の届出関係を確認します。 |
| 飲食料品の譲渡を行う事業者 | 2026年10月3日時点では、2027年4月1日から2029年3月31日までの消費税率引下げに伴う提出時期特例が国税庁から改正案として案内されています。法案成立前のため、実際に提出する時点の最新案内を確認します。 |
この表の各項目は、どれも省略せずに確認してください。
不適用届出書を提出できる時期
原則2年間の継続要件
国税庁の現行の手続案内では、簡易課税制度の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、不適用届出書を提出できません。
「届出書を提出した日から2年」ではなく、「簡易課税の適用を受けた課税期間の初日」が起算点になります。「2回申告すれば必ず提出できる」といった単純化もできません。
次の内容を確認してください。
- 簡易課税制度の適用を開始した課税期間
- その課税期間の初日
- 現在の課税期間
- 事業廃止や、やむを得ない事情など例外事情の有無
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた場合との区別
基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間では、簡易課税を適用できません。ただし、それだけでは選択届出書の効力は消滅しません。
将来、基準期間の課税売上高が5,000万円以下になった課税期間で簡易課税へ戻る意思がない場合は、不適用届出書の要否を確認してください。
期限・いつまでに
不適用届出書の原則の提出期限は、簡易課税の適用をやめようとする課税期間の初日の前日までです。
「消費税の申告期限まで」ではなく、「その課税期間が始まってからでもよい」わけでもありません。やめたい課税期間が始まる前に提出する必要があります。
期限が土曜・日曜・祝日等にあたる場合の扱いは、必要に応じて所轄の税務署または国税庁の案内で確認してください。
原則の期限を過ぎてしまった場合は、通常の不適用届出書だけを提出して、すでに始まっている課税期間へ遡って一般課税に変更できるとは限りません。次の課税期間からの不適用とする扱いになるか、やむを得ない事情がある場合は特例承認申請の対象となるかを確認します(詳しくは「期限に間に合わなかった・やむを得ない事情がある場合」を参照してください)。
飲食料品の譲渡を行う事業者に関する提出時期特例(改正案)
2026年10月3日時点で、国税庁は、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間に予定されている飲食料品の消費税率引下げに関連し、飲食料品の譲渡を行う事業者を対象とした「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出時期特例を案内しています。
ただし、国税庁の特設サイトは、この内容を2026年9月15日の閣議決定に基づく改正案として掲載しており、今後、法案が国会で可決・成立した場合の内容であると明記しています。
そのため、飲食料品の譲渡を行う事業者がこの特例を利用できる前提で固定せず、実際に簡易課税をやめる時点で、国税庁「消費税率引下げ特設サイト」とD1-23「消費税簡易課税制度選択不適用届出手続」の最新案内を確認してください。
簡易課税をやめる前に知っておくこと
一般課税へ移る
不適用届出書が有効になり、簡易課税をやめた課税期間からは、一般課税による申告になります。実際の課税仕入れ等の金額に基づいて仕入税額控除を計算する方式です。
この記事では一般課税の具体的な計算方法までは扱いません。
帳簿・請求書等の保存
一般課税で仕入税額控除を行うには、簡易課税をやめた課税期間の初日から、必要な帳簿・請求書等を保存しておく必要があります。
「不適用届出書を提出してから準備すればよい」と考えて後回しにすると、適用をやめた課税期間の初日以降の記録が不足するおそれがあります。届出書の提出と並行して、保存の準備を進めてください。
有利・不利は一律に決まらない
簡易課税をやめた方が有利かどうかは、実際の課税仕入れの規模、設備投資の予定、事業区分、売上構成等によって変わります。
「設備投資があるなら必ず一般課税が得」「簡易課税は損」といった一律の判断はできません。判断に迷う場合は、次を整理したうえで、税務署または税理士等に確認してください。
- 実際の課税仕入れの規模
- 近く予定している設備投資等
- 一般課税で必要になる記録・保存の負担
- 希望する適用開始課税期間
- 2年継続要件を満たしているか
用意するもの・確認する情報
届出書を作成する前に、少なくとも次の情報を確認しておきます。
- 納税地
- 氏名・名称
- 法人番号等、現行の様式上必要な情報
- 簡易課税制度の適用を開始した課税期間
- 簡易課税をやめたい課税期間
- 2年継続要件を満たす時期
- 事業年度・課税期間
- 過去に提出した消費税簡易課税制度選択届出書の情報
- 事業廃止の有無
- やむを得ない事情の有無
実際の記載項目は、現行の様式・記載要領と一致させて確認してください。
提出方法
不適用届出書は、次のいずれかの方法で提出できます。
- e-Tax
- 書面を税務署へ持参する
- 書面を送付する
e-Taxで提出できるかどうかや、利用できるソフトについては、個人・法人それぞれの現行案内を確認してください。
e-Taxで提出する
国税庁・e-Taxの現行案内に従って提出します。
画面の操作手順は改修によって変わることがあるため、この記事では細かい操作手順までは固定しません。提出後は、受信結果など、提出したことを確認できる記録を保存してください。
書面で提出する
現行の様式と記載要領を使用し、納税地を所轄する税務署長へ持参または送付します。
控えや送付記録など、後から提出状況を確認できる記録を残しておいてください。
提出先
不適用届出書の提出先は、納税地を所轄する税務署長です。
所轄の税務署は、国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」で確認してください。
提出後に確認すること
次の状態になっていれば、この記事で案内する範囲は完了です。
- 簡易課税をやめたい課税期間を確認した
- 2年継続要件を満たしていること、または例外事情を確認した
- 自分に適用される提出期限を確認した
- 届出書を適切な方法で提出した
- 提出したことを確認できる記録を確保した
- 一般課税へ移る課税期間の初日から、必要な帳簿・請求書等の保存を確認した
- 次の消費税申告で適用する課税方式を取り違えないようにした
提出しただけで、一般課税への切り替え作業がすべて終わるわけではありません。帳簿・請求書等の保存や、次回申告時の課税方式の確認まで含めて、完了とします。
期限に間に合わなかった・やむを得ない事情がある場合
単純に期限を過ぎてしまった場合、後から不適用届出書を出せば、開始済みの課税期間へ遡って一般課税にできるわけではありません。
一方、やむを得ない事情により、期限までに不適用届出書を提出できなかった場合には、特例承認申請の制度があります。
2026年10月3日時点の国税庁の案内では、次のように案内されています。
- やむを得ない事情がやんだ日から2月以内に、特例承認申請書を提出する
- 特例承認申請書と併せて、消費税簡易課税制度選択不適用届出書も提出する
単なる提出忘れは、「やむを得ない事情」には該当しません。
実際に提出する際は、D1-24「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請手続」で、現行の申請書様式・記載要領を確認してください。
なお、災害等については別の専用の特例が存在します。一般的な「やむを得ない事情」による特例承認申請とは異なる手続きのため、混同しないようにしてください。
事業を廃止する場合
事業を廃止する場合は、通常の「次の課税期間から簡易課税をやめて一般課税へ移る」ケースとは分けて確認します。
個人事業者が事業を廃止した場合、簡易課税制度を選択している事業者は、事業を廃止した事由が生じた場合、速やかに不適用届出書を提出する扱いが国税庁の案内で示されています。
また、不適用届出書等のいずれかに事業を廃止した旨を記載して提出した場合には、他の対象となる不適用届出書等と事業廃止届出書の提出があったものとして取り扱われます。逆に、事業廃止届出書を提出した場合にも、対象となる不適用届出書等の提出があったものとして取り扱われます。
このみなし提出の関係があるからといって、対象となる届出書をすべて重複して提出しなければならないわけではありません。どの書類が提出済み扱いになるかは、実際の提出内容によって変わるため、必要に応じて所轄の税務署で確認してください。
なお、法人の休業や解散は、事業廃止届出書上の「事業を廃止した場合」と同じ扱いになるとは限りません。個別の事情を一律に事業廃止として扱わず、該当するかどうかを確認してください。
状況別
来期から一般課税へ移りたい
2年継続要件と原則の提出期限を確認し、条件を満たしているのであれば、来期の初日の前日までに不適用届出書を提出します。
簡易課税を始めて間もない
まず、2年継続要件を満たしているかを確認します。満たしていない場合は、通常のケースのように自由に不適用届出書を提出できるわけではありません。
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた
その課税期間で簡易課税を適用できないことと、選択届出書の効力がなくなることは別の問題です。今後も簡易課税をやめる意思がある場合は、不適用届出書の要否を確認します。
大きな設備投資を予定している
一般課税への変更を検討する理由にはなり得ますが、税額上の有利不利をこの記事で断定することはできません。希望する課税期間と、その期限を早めに確認してください。
期限を過ぎた
通常の不適用届出書だけで、開始済みの課税期間へ遡れる前提にはしません。次の課税期間からの不適用とする扱いか、特例承認申請の対象となるかを確認します。
やむを得ない事情で期限に間に合わなかった
特例承認申請の対象となり得ます。やむを得ない事情がやんだ日から2月以内という期限と、不適用届出書を併せて提出する必要があることを確認してください。
事業を廃止した
通常の来期からの変更とは別に、事業廃止時の届出関係とみなし提出関係を確認してください。
飲食料品の譲渡を行っている
2026年9月15日の閣議決定に基づく消費税率引下げの改正案に伴い、不適用届出書の提出時期特例が国税庁から案内されています。法案成立前の情報を確定制度として扱わず、提出時点の最新情報を確認してください。
よくある間違い
- 簡易課税を一度選んでも、翌年すぐに自由に一般課税へ戻せると考える
- 2年継続要件を「選択届出書を提出した日から2年」と単純化して考える
- 不適用届出書の期限を、消費税の申告期限と同じだと考える
- 課税期間が始まってから不適用届出書を提出しても、その課税期間から一般課税になると考える
- 基準期間の課税売上高が5,000万円を超えたことで、簡易課税の選択自体が自動的に消滅すると考える
- 一般課税へ移るために必要な帳簿・請求書等の保存準備を後回しにする
- 設備投資があるだけで、一般課税が必ず有利だと決めつける
- やむを得ない事情の特例を、単なる出し忘れにも使える制度として扱う
- 事業廃止の場合でも、通常の2年継続要件・通常の期限だけを当てはめる
- 事業廃止時に、対象となる届出書をすべて重複して提出しなければならないと考える
- 提出した記録を残さない
チェックリスト
相談先
次のような内容は、国税庁の国税相談窓口または納税地を所轄する税務署へ確認してください。
2年継続要件について
- 簡易課税の適用を開始した課税期間
- その課税期間の初日
- 現在の課税期間
- 不適用届出書を提出できる最初の時期
- 希望する課税期間から一般課税へ移れるか
期限徒過・特例承認申請について
- 本来の提出期限
- 提出できなかった具体的な事情
- その事情がやんだ日
- 特例承認申請の対象となり得るか
- 使用する現行の様式
- 不適用届出書との同時提出の方法
事業廃止について
- 実際に「事業を廃止した」に該当するか
- 事業を廃止した年月日
- すでに提出した事業廃止届出書・不適用届出書等
- みなし提出の関係により、追加の提出が不要となる書類
- 廃止日の属する課税期間の消費税申告の要否
いずれも、「税務署に聞いてください」で終わらせず、上記の確認内容を整理したうえで相談すると、話がスムーズに進みます。
公式リンク
この記事の内容に関連する国税庁の現行案内は、次のページで確認できます。
- D1-23「消費税簡易課税制度選択不適用届出手続」
- No.6505「簡易課税制度」
- No.6629「消費税の各種届出書」
- D1-24「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請手続」
- No.6633「やむを得ない事情により簡易課税制度選択届出書の提出が間に合わなかった場合」
- No.6632「災害等により簡易課税制度の適用を受ける(受けることをやめる)必要が生じた場合」
- No.6603「個人事業者が事業を廃止した場合」
- 「消費税の届出書等について」
- 「消費税率引下げ特設サイト」
この前に確認する
- 消費税簡易課税制度選択届出書を提出する:簡易課税の選択を始める手続き、適用条件、提出期限、提出制限を確認する
あなたの場合はこちら
- 消費税の事業廃止届出書を提出する:個人事業を廃止し、通常の「来期から一般課税へ移る」ケースではなく事業廃止時の届出関係を確認する場合
あわせて確認する
- 消費税の課税事業者になるか確認する:簡易課税をやめた後の課税・免税の状態を確認したい場合
- キーワード検索:消費税の申告・納付・関連する届出など、次に必要な手続きを探す