事業所得の帳簿を締める

概要

この記事は、個人事業の年末決算整理を終えた方が、当年分の帳簿を締めるために案内するものです。

帳簿を締めるとは、年末の数字を直す作業そのものではありません。決算整理が終わった後に、その年の収益・費用と残高を確定し、当年分の帳簿を終わらせ、必要な残高を翌年へつなぐ工程です。決算整理仕訳と帳簿の締切は別の工程であるため、決算整理がまだ終わっていない場合は、先に「事業所得の決算整理仕訳をする」で年末調整を確認してください。

複式簿記の場合は収益・費用を当年の損益へ締め、事業主貸・事業主借を元入金へつなぎます。簡易記帳・白色申告等の場合は、同じ仕訳を一律に行うのではなく、年計や年末残高、決算書との整合を確認する形で締めます。会計ソフトを使っている場合は、自動処理された結果を確認する作業が中心になります。

このページで分かること

  • 帳簿を締めてよい状態かどうかの確認方法
  • 帳簿を締める作業の基本的な流れ
  • 複式簿記の場合の収益・費用の締め方
  • 事業主貸・事業主借と元入金のつなぎ方
  • 翌年へ引き継ぐ残高と、引き継がない残高の違い
  • 簡易記帳・白色申告の場合に必要なこと
  • 会計ソフトを使っている場合に確認すること
  • 締めた帳簿の保存期間

対象読者

  • 個人事業の年末決算を初めて行う方
  • 決算整理仕訳まで終えたが、その後に何をすればよいか分からない方
  • 仕訳帳・総勘定元帳を手作業で締めたい方
  • 会計ソフトの「年度締め」「翌期繰越」が何を行っているか理解したい方
  • 青色申告決算書・収支内訳書の数字と帳簿を一致させたい方
  • 翌年の開始残高を間違えたくない方

なお、棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却等の決算整理がまだ終わっていない方は、この記事ではなく「事業所得の決算整理仕訳をする」を先に確認してください。

更新日

更新日:2026年10月4日

まず確認すること

帳簿を締める前に、次の3点を確認します。

  1. 決算整理が終わっているか
  2. 複式簿記か、簡易記帳・白色申告等か
  3. 会計ソフトが自動で締切処理を行うか

決算整理が終わっていない場合、先に決算整理へ戻ります。記帳方式によって、この後の作業内容が変わります。会計ソフトを使っている場合、手作業の締切仕訳を重ねて入力する必要はありません。

帳簿を締めるとは

帳簿を締める作業には、意味の異なる3つの工程が含まれます。この3つを「年末処理」として一括せず、それぞれ区別して理解します。

工程 内容
決算整理仕訳 当年分の数字を正しくするための調整
決算振替・帳簿締切 調整後の収益・費用等を当年損益へまとめ、年度を閉じる処理
翌期繰越 資産・負債等の期末残高を翌年の期首残高へつなぐ処理

決算整理仕訳と帳簿の締切は別の工程です。決算整理がすでに終わっている前提で、ここから先は決算振替・帳簿締切・翌期繰越を扱います。

帳簿を締める前に決算整理を終える

帳簿を締める前に、決算整理を終えておく必要があります。次の項目をすべて確認してください。

  1. 12月31日までの日常取引を記帳済みである
  2. 証憑・通帳・カード明細等との照合を済ませている
  3. 現金・預金残高を確認済みである
  4. 売掛金・買掛金等の残高を確認済みである
  5. 棚卸しを済ませている(該当する場合)
  6. 未収・前受・未払・前払等の決算整理を済ませている
  7. 減価償却・固定資産関係の年末処理を済ませている
  8. 家事按分・事業主貸借等を確認済みである
  9. 追加の決算整理仕訳を入力済みである
  10. 決算整理後の試算表等で借方・貸方または集計結果を確認できる

一つでも未処理の項目がある場合は、帳簿を締める前に、該当する前工程(決算整理)へ戻ってください。棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却等の決算整理の詳細は、この記事では扱いません。「事業所得の決算整理仕訳をする」を確認してください。

帳簿を締める流れ

帳簿を締める作業は、次の順序を基本とします。

  1. 決算整理が終わっているか確認する
  2. 決算整理後の試算表・各帳簿残高を確認する
  3. (複式簿記の場合)収益科目を締める
  4. (複式簿記の場合)費用科目を締める
  5. 当年の損益を確定する
  6. 事業主貸・事業主借を元入金へつなぐ
  7. 資産・負債等の残高を翌期へ繰り越す
  8. 翌期首残高を確認する
  9. 損益計算書・貸借対照表等と帳簿の整合を確認する
  10. 帳簿を保存する

簡易記帳・白色申告等の場合、3~6の手順を複式簿記の仕訳としてそのまま行う必要はありません。年計・年末残高・決算書との整合確認へ読み替えて進めます。

決算整理後の残高を確認する

帳簿を締める前に、決算整理後の試算表や各帳簿の残高を確認します。この段階で確認する残高が、この後の締切作業と翌年への引き継ぎの土台になります。

確認する主な残高は、現金・預金、売掛金・買掛金等、棚卸資産、固定資産の未償却残高、事業主貸・事業主借、その他の資産・負債です。これらの残高が決算整理後の数字になっているかを、帳簿を締める前に確認してください。

複式簿記では収益と費用を締める

複式簿記の場合、収益・費用を当年の損益へ締めます。白色申告・簡易記帳へこの処理を一律に要求するものではありません。

収益科目を締める

売上等の収益科目の当年残高を、損益へ振り替えます。

代表構造:売上等 / 損益

勘定科目名・仕訳方式は帳簿体系によって異なるため、必ずこの一本の仕訳になるとは限りません。使用している帳簿・会計ソフトの体系に沿って確認してください。

費用科目を締める

必要経費等の費用科目を、損益へ振り替えます。

代表構造:損益 / 仕入・経費等

当年の損益を確定する

収益と費用を損益へ振り替えた結果として、当年の利益または損失が確定します。

当年の損益を確定する

複式簿記では、収益・費用を当年の損益へ締める処理の結果として、当年の利益または損失が確定します。この利益・損失は、現金が増えた額や減った額とは異なる考え方です。現金の増減だけを見て、当年の損益を判断しないでください。

簡易記帳・白色申告等の場合は、収入と必要経費の当年合計を確定し、収支内訳書等へつながる数字として整理します。

事業主貸・事業主借と元入金を整理する

事業主貸・事業主借と元入金の関係は、帳簿を締める上で誤解が起きやすい部分です。期末の元入金と翌期首の元入金を区別して確認します。

期末の元入金

国税庁の資料では、12月31日の元入金は1月1日の元入金と同額として扱われます。年中の利益や家計との出入りを理由に、12月31日の元入金を途中で自由に増減させることはしません。

翌期首の元入金

翌年1月1日の元入金は、当年の所得と事業主貸・事業主借を反映してつながります。期末の元入金と翌期首の元入金は同じ金額とは限りません。

国税庁の青色申告者のための貸借対照表作成の手引きに基づく関係式は、次のとおりです。

翌期首の元入金 = 期末の元入金 + 青色申告特別控除前の所得金額 + 期末の事業主借 - 期末の事業主貸

これは青色申告の貸借対照表作成資料に基づく関係式であり、会計ソフトの自動繰越仕訳の表示方法まで一律に定めるものではありません。

事業主貸・事業主借を翌年へそのまま残さない

事業主貸・事業主借は、翌期首の元入金へ反映されます。年中の事業と家計の出入りを、翌期の元入金へ反映させる考え方です。「事業主貸・事業主借を年末に適当に相殺してゼロにする」という処理は行いません。

資産・負債の残高を翌年へ繰り越す

資産・負債等の年末残高のうち、必要なものを翌年へ引き継ぎます。次の科目が、代表的な繰越対象です。

  • 現金
  • 預金
  • 売掛金
  • 未収入金等
  • 棚卸資産
  • 前払費用等
  • 固定資産・未償却残高
  • 買掛金
  • 未払金・未払費用等
  • 借入金
  • その他の資産・負債
  • 翌期首元入金

一方、売上・仕入・経費等の損益科目は、原則として前年残高をそのまま翌年へ持ち越しません。新しい年分をゼロから集計します。損益科目と貸借対照表科目とでは、翌年への引き継ぎ方が異なることを区別してください。

翌年の開始残高を確認する

国税庁の記帳資料では、現金出納帳・売掛帳・買掛帳等において、前年末残高を「前年より繰越」として翌年へ引き継ぐ記載例が示されています。

翌年の最初に、次の点を確認してください。

  1. 前年末残高と翌年期首残高が一致しているか
  2. 得意先別・仕入先別の残高も一致しているか
  3. 現金・預金等の実残高と合っているか
  4. 固定資産の未償却残高を引き継いでいるか
  5. 前年の売上・経費を新年へ誤って持ち越していないか
  6. 事業主貸・事業主借が元入金へ正しく反映されているか

翌年の開始残高が前年末とつながっているかは、翌年の帳簿を正しく積み上げるための前提になります。

簡易記帳・白色申告の場合

白色申告・簡易記帳へ複式簿記の決算振替仕訳を一律に要求することはしません。損益勘定への振替仕訳は、複式簿記を前提とした処理です。

簡易記帳・白色申告等の場合は、少なくとも次を年末に確定することを中心に進めます。

  • 各帳簿の当年分の年計
  • 年末の現金・売掛金・買掛金等の残高
  • 棚卸高等の決算事項
  • 収入・必要経費の当年合計
  • 収支内訳書等へ転記する数字
  • 翌年へ繰り越す必要がある残高

簡易記帳だからといって帳簿を締めなくてよいわけではありません。一方で、複式簿記と同じ決算振替仕訳が必須というわけでもありません。記帳方式に応じて、締め方を区別してください。

会計ソフトを使っている場合

会計ソフトでは、決算振替や翌期繰越を自動処理する場合があります。会計ソフトが自動処理しても、年末残高と翌期首残高は確認してください。

ソフトが自動化しやすい処理

  • 収益・費用の締切
  • 損益の繰越処理
  • 事業主貸・事業主借の元入金反映
  • 翌期繰越
  • 翌年期首残高の作成

利用者が確認すべきこと

  • 決算整理仕訳を入力済みか
  • 年末残高が正しいか
  • 締め処理の対象年度が正しいか
  • 翌年の開始残高が前年末とつながっているか
  • 年度を締めた後の修正方法が分かるか
  • ソフトが自動生成した仕訳や残高を無条件に正しいとみなしていないか

会計ソフトが自動処理する範囲であっても、手作業で同じ振替仕訳を重ねて入力する必要はありません。ソフト固有の操作方法は、各社の公式サポートで確認してください。

帳簿と決算書の数字を確認する

帳簿を締めた後、少なくとも次を確認してください。

  1. 損益計算書の青色申告特別控除前所得と、貸借対照表側の計算が整合しているか
  2. 現金・預金・売掛金・買掛金等の期末残高が帳簿と一致しているか
  3. 事業主貸・事業主借の計上漏れがないか
  4. 元入金の期首・期末・翌期首の関係が整合しているか
  5. 棚卸資産、固定資産等の残高が決算整理後の数字になっているか
  6. 青色申告決算書・収支内訳書へ転記した金額と、帳簿の集計が一致しているか

帳簿と決算書が合わない場合は、差額合わせではなく、原因を確認してください。不一致が見つかった場合、帳尻合わせの仕訳を入れるのではなく、原因となる帳簿や前工程へ戻って確認します。

帳簿を保存する

帳簿を締めても、保存義務は終わりません。

青色申告者については、国税庁の現行案内に基づき、仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳等の帳簿を原則7年間保存します。国税庁の記帳資料では、帳簿の保存期間の起算点は「その閉鎖の日の属する年の翌年3月15日の翌日」からとされています。

白色申告者の保存期間は、青色申告と区分して確認してください。ご自身の申告区分における保存期間・保存対象は、国税庁の現行案内で確認することをおすすめします。

なお、電子データで受領・交付した請求書等については、電子帳簿保存法等の別ルールが関係する場合があります。紙に印刷すれば必ず十分とは限らないため、該当する場合は公式情報で確認してください。

よくある間違い

帳簿を締める際、次のような間違いが起こりやすいため注意してください。

  1. 決算整理が終わる前に年度を締める
  2. 帳簿締切と決算整理仕訳を同じものとして扱う
  3. 売上・経費等の損益科目を翌年へ残高繰越する
  4. 現金・売掛金・借入金等の残高を翌年へ引き継がない
  5. 事業主貸・事業主借を翌年もそのまま同額で残す
  6. 元入金を12月31日に利益分だけ直接増減させる
  7. 会計ソフトの自動繰越を無確認で確定する
  8. 前年末と翌年期首の残高が一致していない
  9. 決算書と帳簿が合わないときに、差額だけの調整仕訳を作る
  10. 白色申告者に複式簿記の損益振替仕訳を一律必須と考えて進める
  11. 締めた後に帳簿を削除・上書きし、保存すべき記録を失う

判断が難しい場合

自分の状況で帳簿を締めてよいか判断が難しい場合は、次の内容を整理してから確認先へ相談してください。

  • 青色申告か白色申告か
  • 複式簿記か簡易記帳か
  • 使用している帳簿・会計ソフト
  • 決算整理仕訳が完了しているか
  • 決算整理後の試算表
  • 現金・預金・売掛金・買掛金・借入金等の年末残高
  • 事業主貸・事業主借の年末残高
  • 元入金の期首残高
  • 青色申告特別控除前の所得金額
  • 翌年期首残高
  • 帳簿と決算書で一致しない科目・金額
  • 自動繰越・年度締めを実行済みか
  • 締めた後に修正した取引があるか

相談先

  • 所轄の税務署
  • 税理士等の税務専門家
  • 会計ソフトの年度締め・翌期繰越操作については、当該ソフトの公式サポート

税務上の判断と、会計ソフトの操作方法は分けて確認してください。

公式リンク

注意点

  • この記事は、決算整理を終えた後の帳簿締切・翌期繰越を扱うものであり、棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却等の決算整理の詳細は扱いません。
  • 会計ソフトが決算振替・翌期繰越を自動処理しており、読者が結果を確認するだけでよい場合も、正常な終着点です。手作業の締切仕訳を入力しないと帳簿を締めたことにならない、というものではありません。
  • 白色申告者の帳簿保存期間や、会計ソフト固有の操作方法など、記事内で個別に確認先を案内している事項については、公式情報や公式サポートで最新の内容を確認してください。

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