事業所得の売掛金・買掛金残高を確認する

概要

事業所得の帳簿では、売上や仕入を記帳した時点で終わりではなく、代金が回収・支払されるまでの間、売掛金・買掛金という形で残高が帳簿上に残ります。会計ソフトの画面に表示される売掛金・買掛金の総額を眺めるだけでは、その残高が本当に正しいかどうかは分かりません。

この記事は、すでに売上・仕入などを記帳している個人事業者が、売掛金は得意先ごと、買掛金は仕入先ごとに帳簿残高を確認し、請求書や入出金の記録と照合できることを目指します。会計ソフトの残高と手元の資料が合わない場合に、どこから確認していけばよいかについても扱います。

売掛金・買掛金という勘定科目の意味そのものや、売上・仕入をいつ計上するかという計上時期の判断は、この記事の中心ではありません。売掛金・買掛金という勘定科目へ記帳したこと自体が、売上・仕入の税務上の計上時期の結論を決めるわけではありません。すでに記帳した売掛金・買掛金の残高が、実際の未回収額・未払額と一致しているかを確認する場面を中心に説明します。

この記事を読むことで、日常・月末・年末のそれぞれの場面で、売掛金・買掛金残高をどのように確認し、差額があるときにどのような順序で原因を確認すればよいかが分かります。

このページで分かること

  • 売掛金残高を得意先ごとに確認する方法
  • 買掛金残高を仕入先ごとに確認する方法
  • 一部入金・一部支払があるときの残高の考え方
  • 返品・値引き・取消があったときの残高への反映方法
  • 売掛金・買掛金残高が合わないときに確認する順序
  • 年末に売掛金・買掛金残高を確認するときのポイント
  • 差額の原因が分からない場合に確認する先

対象読者

この記事は、主に次のような人を対象としています。

  • 個人事業の帳簿をすでに付けている人
  • 会計ソフトに表示される売掛金・買掛金の残高が正しいか確認したい人
  • 売掛帳・買掛帳の差引残高を確認したい人
  • 得意先から入金があったのに、売掛金の残高が減っていない人
  • 仕入先へ支払ったのに、買掛金の残高が減っていない人
  • 年末や決算の前に、売掛金・買掛金の残高を確認しておきたい人
  • 請求書等の金額と会計ソフトの残高が一致しない人

すでに売上・仕入の記帳を済ませていることを前提としています。売上・仕入の計上時期そのものを確認したい場合は、それぞれの記帳に関する記事を確認してください。

更新日

更新日:2026年10月4日

売掛金・買掛金残高を確認する前にそろえるもの

売掛金・買掛金の残高確認では、まず比較する基準日をそろえます。月末時点で確認するのか、年末(12月31日)時点で確認するのかを決め、帳簿側と資料側の両方で、同じ基準日までの取引を対象にします。

そのうえで、次の資料を準備します。

売掛金側で準備するもの

  • 会計ソフト・総勘定元帳・売掛帳等に記載されている売掛金残高
  • 得意先ごとの請求書控、納品書控、売上明細等
  • 銀行振込、現金回収、決済代行等の入金明細
  • 返品・値引き・取消・返金等の記録
  • 必要に応じて、得意先ごとの請求残高一覧

買掛金側で準備するもの

  • 会計ソフト・総勘定元帳・買掛帳等に記載されている買掛金残高
  • 仕入先ごとの請求書、納品書、仕入明細等
  • 銀行振込、現金支払、カード等の支払明細
  • 返品・値引き・取消等の記録
  • 必要に応じて、仕入先ごとの支払予定・未払一覧

売掛金残高を確認する

売掛金は得意先ごとに残高を確認します。次の順序で進めます。

  1. 基準日を決めます。
  2. 得意先ごとに、帳簿上の売掛金残高を確認します。
  3. その得意先について、基準日までに売上として成立・記帳した取引を確認します。
  4. 基準日までの入金・回収を確認します。
  5. 返品・値引き・取消等があれば、反映されているか確認します。
  6. 資料から見た未回収額を計算します。
  7. 帳簿の差引残高と一致するか確認します。
  8. 一致しない場合は、後述する「売掛金残高が合わないときに確認すること」の順序で確認します。

総勘定元帳の売掛金総額だけを見ていると、得意先の付け違いに気づけないことがあります。総額が同じでも、得意先Aの残高が実際より多く、得意先Bの残高が実際より少ないという形で相殺されている場合があるためです。総額だけでなく、相手先別の内訳を確認します。

また、前年末に売掛金が残っていた場合は、その残高が当年へ正しく引き継がれているかも確認します。前年繰越残高も確認対象になります。前年繰越が誤っていると、当年の取引だけを確認しても残高が合わないことがあります。

国税庁の記帳資料に示されている売掛帳の記載例でも、得意先ごとに口座を設け、前年繰越、当年の掛売上、回収、返品、値引きを反映して差引残高を管理する考え方が示されています。

買掛金残高を確認する

買掛金は仕入先ごとに残高を確認します。手順は売掛金の確認と対応しています。

  1. 基準日を決めます。
  2. 仕入先ごとに、帳簿上の買掛金残高を確認します。
  3. その仕入先について、基準日までに仕入として成立・記帳した取引を確認します。
  4. 基準日までの支払を確認します。
  5. 返品・値引き・取消等があれば、反映されているか確認します。
  6. 資料から見た未払額を計算します。
  7. 帳簿の差引残高と一致するか確認します。
  8. 一致しない場合は、後述する「買掛金残高が合わないときに確認すること」の順序で確認します。

売掛金と同様に、総勘定元帳の買掛金総額だけでなく、仕入先ごとの内訳を確認します。仕入先違い、支払先違い、同じような名称の取引先同士の付け違いがないかを確認します。

前年末に買掛金が残っていた場合は、その残高が当年へ正しく引き継がれているかを確認します。

売掛金残高が合わないときに確認すること

帳簿上の売掛金残高と、資料から見た未回収額が一致しない場合は、次を上から順に確認します。

  1. 掛売上そのものの記帳漏れ
  2. 入金・回収の記帳漏れ
  3. 同じ入金を別の売掛金へ誤って消し込んでいないか
  4. 同じ売上または入金の二重記帳
  5. 金額の入力誤り
  6. 得意先の付け違い
  7. 返品・値引き・取消・返金等の反映漏れ
  8. 一部入金を全額回収として処理していないか
  9. 全額入金なのに一部だけ消し込んでいないか
  10. 振込手数料や源泉徴収等により入金額と請求額が単純に一致しない取引について、差額の理由を確認せずに処理していないか
  11. 年月日や基準日のずれ
  12. 前年繰越残高の誤り
  13. 売掛金ではなく別の勘定科目で管理している取引が混在していないか

原因が見つかった場合は、差額そのものを消すための仕訳を入れるのではなく、原因となった元取引を正しく記帳・訂正したうえで、あらためて残高を照合します。

買掛金残高が合わないときに確認すること

帳簿上の買掛金残高と、資料から見た未払額が一致しない場合は、次を上から順に確認します。

  1. 掛仕入そのものの記帳漏れ
  2. 支払の記帳漏れ
  3. 同じ支払を別の買掛金へ誤って消し込んでいないか
  4. 同じ仕入または支払の二重記帳
  5. 金額の入力誤り
  6. 仕入先の付け違い
  7. 返品・値引き・取消等の反映漏れ
  8. 一部支払を全額支払として処理していないか
  9. 全額支払なのに一部だけ消し込んでいないか
  10. 振込手数料等を含む支払条件を確認せず、支払額と債務額の差を機械的に残していないか
  11. 年月日や基準日のずれ
  12. 前年繰越残高の誤り
  13. 買掛金ではなく未払金等で管理すべき取引が混在していないか

原因が見つかった場合は、原因となった元取引を正しく記帳・訂正したうえで、あらためて残高を照合します。

一部入金・一部支払があるとき

一部入金の場合

売掛金100,000円のうち60,000円を回収した場合、残る売掛金は40,000円です。

  • 回収した60,000円の分だけ、売掛金を減らします。
  • 元の売上を、入金のタイミングで再び計上しません。
  • 未回収の40,000円は、その得意先の残高として残ります。

入金時に同じ売上を再計上しないことが基本です。

一部支払の場合

買掛金100,000円のうち70,000円を支払った場合、残る買掛金は30,000円です。

  • 支払った70,000円の分だけ、買掛金を減らします。
  • 元の仕入を、支払のタイミングで再び計上しません。
  • 未払の30,000円は、その仕入先の残高として残ります。

支払時に同じ仕入を再計上しないことが基本です。

返品・値引き・取消があるとき

売掛金・買掛金の残高は、当初の掛取引だけでなく、その後に生じた返品・値引き・取消等も合わせて確認します。

売上の後に返品や値引きがあれば、その得意先に対する未回収額も減ります。反映漏れがないかを確認します。

仕入の後に返品や値引きがあれば、その仕入先に対する未払額も減ります。同じように反映漏れがないかを確認します。

なお、返品・値引きに関する消費税・インボイス制度上の具体的な処理まで、この記事だけで網羅することは扱いません。ここでは、残高確認の観点から「当初の金額から増減する出来事」として、反映漏れがないかを確認する範囲にとどめます。

年末に売掛金・買掛金残高を確認する

年末には、少なくとも次を確認します。

  • 売掛金を得意先ごとに確認した
  • 買掛金を仕入先ごとに確認した
  • 年末までに成立・記帳すべき売上・仕入に漏れがない
  • 年末までの入金・支払について、消込漏れがない
  • 返品・値引き・取消等が反映されている
  • 前年繰越に誤りがない
  • 得意先・仕入先の付け違いがない
  • 売掛金・買掛金の総額と、相手先別内訳の合計が一致する
  • 確認済みの期末残高を試算表・貸借対照表等へつなげられる
  • 特殊な債権債務を、通常の売掛金・買掛金へ無理に混ぜていない

年末だけ残高を確認すればよいというものではなく、日常や月末の段階で確認しておくことが、年末の確認をスムーズにします。

差額の原因が分かったときの直し方

差額そのものを消すための仕訳を入れるのではなく、差額を生じさせた元取引を正しく記帳・訂正することが基本です。

代表的な例は次のとおりです。

  • 売掛金回収50,000円の記帳漏れが見つかった場合は、その回収を記帳します。
  • 買掛金支払70,000円の記帳漏れが見つかった場合は、その支払を記帳します。
  • 売上返品5,000円の反映漏れが見つかった場合は、その返品取引を適切に反映します。
  • 仕入値引き3,000円の反映漏れが見つかった場合は、その値引き取引を適切に反映します。
  • 得意先Aの売掛金を得意先Bへ誤って計上していた場合は、相手先の内訳を正しく訂正します。
  • 同じ売上を二重に入力していた場合は、二重となった記帳を訂正します。

差額の原因が分からないとき

差額の原因が分からない場合であっても、雑収入・雑損失・事業主貸・事業主借・売上・仕入等へ機械的に振り替えて数字だけを合わせることは避けます。次の順序で確認します。

  1. 得意先・仕入先ごとの内訳を再確認します。
  2. 請求書、納品書、入金・支払明細、返品・値引き資料を再確認します。
  3. 前年繰越残高と、比較している基準日を確認します。
  4. 会計ソフト側の重複取込、自動消込、相手先設定、開始残高等を確認します。
  5. それでも原因が分からない場合は、差額の相手先・金額・発生日・確認済みの事項を整理したうえで、専門の確認先へ相談します。

具体例

例A 売掛金100,000円、60,000円だけ入金済みの場合

当初の記帳は次のとおりです。

借方:売掛金 100,000
貸方:売上 100,000

60,000円を回収したときの記帳は次のとおりです。

借方:普通預金等 60,000
貸方:売掛金 60,000

残る売掛金は40,000円です。入金時に売上を再計上しません。

例B 買掛金120,000円、70,000円だけ支払済みの場合

当初の記帳は次のとおりです。

借方:仕入 120,000
貸方:買掛金 120,000

70,000円を支払ったときの記帳は次のとおりです。

借方:買掛金 70,000
貸方:普通預金等 70,000

残る買掛金は50,000円です。支払時に仕入を再計上しません。

例C 売掛金が帳簿上80,000円だが、請求残は50,000円の場合

銀行明細を確認すると30,000円の入金があるにもかかわらず、帳簿へ未入力だった場合は、その入金・回収を記帳します。差額30,000円を雑収入等で直接合わせることはしません。

例D 買掛金が帳簿上90,000円だが、仕入先への未払は75,000円の場合

15,000円の値引きが確定しているにもかかわらず、帳簿へ未反映だった場合は、その値引き取引を適切に反映します。差額15,000円を原因不明のまま消すことはしません。

例E 得意先別内訳の付け違いがある場合

総額100,000円は一致していても、

  • 得意先A:帳簿上70,000円、実際は50,000円
  • 得意先B:帳簿上30,000円、実際は50,000円

というように、内訳が食い違っている場合があります。総額が一致していることだけで確認を終えず、相手先ごとの付け違いを確認します。

よくある間違い

  • 売掛金・買掛金の総額だけを確認する
  • 得意先・仕入先ごとの内訳を確認しない
  • 入金済みであるにもかかわらず、売掛金の残高をそのまま残している
  • 支払済みであるにもかかわらず、買掛金の残高をそのまま残している
  • 入金時に同じ売上を再計上している
  • 支払時に同じ仕入を再計上している
  • 一部入金・一部支払を全額の消込として処理している
  • 返品・値引き・取消を残高へ反映していない
  • 得意先・仕入先を取り違えている
  • 同じ売上・仕入・入金・支払を二重に記帳している
  • 前年繰越残高を確認していない
  • 比較する基準日が帳簿側と資料側でずれている
  • 差額の原因を確認しないまま、雑収入・雑損失等で数字だけを合わせている

判断が難しい場合

次のような場合は、この記事だけで判断せず、会計ソフトの公式サポート、税務署、または税理士に確認します。

  • 源泉徴収や振込手数料等の理由で、入金額と請求額が単純に一致しない
  • 相殺取引がある
  • 売掛金と未収入金、買掛金と未払金のどちらで管理すべきか判断に迷う
  • 長期間回収できていない債権がある
  • 過年度から残高が不自然な形で繰り越されている
  • 特殊な契約条件があり、通常の掛取引として扱えるか判断しにくい
確認対象 帳簿側で確認するもの 資料側で確認するもの 主な差額原因 まず行うこと
売掛金 得意先別の売掛金残高 請求書控・売上明細・入金明細・返品値引資料 売上漏れ、入金消込漏れ、返品値引漏れ、相手先違い、二重記帳 得意先ごとに発生・回収・調整を並べる
買掛金 仕入先別の買掛金残高 請求書・仕入明細・支払明細・返品値引資料 仕入漏れ、支払消込漏れ、返品値引漏れ、相手先違い、二重記帳 仕入先ごとに発生・支払・調整を並べる
一部回収・一部支払 消込後の残高 実際の入金・支払額 全額消込、一部消込不足 残額を再計算する
前年繰越 年初残高 前年末の確認済み残高 開始残高誤り 前年末と当年年初を照合する
年末残高 12月31日時点の帳簿残高 年末時点の未回収・未払資料 年末取引漏れ、基準日ずれ、訂正漏れ 相手先別残高を最終照合する

チェックリスト

相談先

相談内容に応じて、次の確認先を利用します。

会計ソフト公式サポート

  • 得意先・仕入先ごとの残高の表示方法
  • 自動消込・請求管理機能との連携
  • 開始残高の設定
  • データの重複取込
  • 誤りの訂正方法
  • 使用している会計ソフト固有の操作

税務署

  • 記帳・帳簿保存制度についての一般的な確認
  • 青色申告・白色申告における記帳制度
  • 税務上の一般的な取扱い

税理士

  • 原因が分からない残高
  • 過年度から不自然に繰り越されている残高
  • 貸倒れ・債権放棄等に関する事項
  • 複雑な相殺・源泉徴収・振込手数料の処理
  • 勘定科目の区分判断が複雑な取引
  • 訂正の内容が確定申告へ影響する場合

公式情報

次の公式情報源で、記帳のルールや残高確認の考え方を確認できます。