事業所得の決算整理仕訳をする
概要
個人事業の年末には、1年間の記帳を確定申告用の決算書へつなげるための作業が必要になります。この作業を決算整理と呼び、必要に応じて入力する仕訳を決算整理仕訳といいます。日々の記帳は済んでいても、棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却など、年末になって初めて確認すべき項目が残っていることがあります。
この記事は、個人事業の年末決算を初めて行う人、日々の記帳は済んだが確定申告前に何を直すのか分からない人、会計ソフトへ日常取引を入力した後に決算整理が必要か確認したい人を主な対象とします。棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却などをすでに個別に処理した人が、全体の順序を確認する場合にも利用できます。
この記事では、決算整理仕訳を入力する前に何を確認するか、年末に見直すべき項目を洗い出す順序、代表的な決算整理仕訳の例、決算整理後に再確認すべきことまでを、青色申告決算書または収支内訳書の作成へ進める状態を目標に案内します。棚卸し、減価償却、貸倒れなど個別論点の詳細な要件は、それぞれの個別記事で確認できるよう、この記事では年末に何を、どの順で確認するかという流れに責任を持ちます。
確認した結果、追加の決算整理仕訳が不要だったという結論も、この記事が案内する正常な終着点のひとつです。
このページで分かること
- 決算整理仕訳とは何か、なぜ必要になるのか
- 決算整理仕訳を入力する前に確認しておくべきこと
- 年末の決算整理を進める全体の流れ
- 棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却、固定資産、貸倒れ、家事分、残高確認のそれぞれで年末に見ること
- 代表的な決算整理仕訳の例
- 決算整理仕訳と、単なる訂正仕訳・決算振替仕訳との違い
- 決算整理仕訳を入力した後に再確認すべきこと
- 翌年に同じ取引を重ねて計上しないための注意点
- 決算整理でよくある間違い
- 自分で判断できない場合の確認先
対象読者
この記事は、主に次のような人を対象とします。
- 個人事業の年末決算を初めて行う人
- 日々の記帳は済んだが、確定申告前に何を直すのか分からない人
- 会計ソフトに日常取引を入力した後、決算整理が必要か確認したい人
- 棚卸し、未収・未払、前受・前払、減価償却などを別々に処理したが、全体の順序を確認したい人
- 青色申告決算書・収支内訳書を作る前に帳簿を整えたい人
更新日
更新日:2026年10月4日
決算整理仕訳とは
決算整理仕訳は、年末に帳簿の数字を都合よく合わせるための仕訳ではありません。日々の記帳を証憑や実際の残高と照合し、その年に含めるべき収入・必要経費・資産・負債へ正しく直すための年末調整です。まず確認し、必要な項目だけ仕訳します。
支払った日・入金した日だけで当年分かどうかを決めない項目があります。たとえば、代金の支払いが翌年になっても、商品の引き渡しや役務の提供がその年のうちに終わっていれば、その年の必要経費として計上すべき場合があります。逆に、その年のうちに入金があっても、商品の引き渡しや役務の提供が翌年になる場合は、その年の売上として計上しない場合があります。
決算整理を行った結果、追加の仕訳が不要だったという確認結果も正常です。決算整理は仕訳件数を増やす作業ではありません。すでに正しく記帳されており、年末に調整すべき項目がなければ、無理に仕訳を作る必要はありません。
まず仕訳の前に確認すること
決算整理仕訳を入力する前に、次を確認します。
- 1月から12月までの記帳が概ね終わっているか確認する
- 請求書・領収書・納品書・通帳・カード明細などと帳簿を照合する
- 現金・預金・売掛金・買掛金・借入金などの残高を確認する
まず帳簿と請求書・領収書・通帳等を照合し、必要な調整だけを行います。照合を省略していきなり仕訳例を入力すると、すでに記帳済みの取引を重ねて計上してしまうことがあります。
決算整理の全体の流れ
決算整理は、次の順序で進めます。
- 1月から12月までの記帳が概ね終わっているか確認する
- 請求書・領収書・納品書・通帳・カード明細などと帳簿を照合する
- 現金・預金・売掛金・買掛金・借入金などの残高を確認する
- 棚卸しを行い、期末棚卸高を確定する
- 当年分なのに未計上の収入・経費を探す
- 翌年分なのに当年へ入っている収入・経費を探す
- 減価償却、貸倒れ、引当金、家事分などの年末固有項目を確認する
- 必要な決算整理仕訳を入力する
- 調整後の残高・損益・二重計上を再確認する
- 決算書・収支内訳書の作成へ進む
年末に確認する対象と、代表的な処理、詳細を確認する先を整理すると、次のとおりです。
確認対象 年末に見ること 代表的な処理 詳細確認先
棚卸資産 12月31日現在の在庫 期末棚卸高を反映 棚卸し・売上原価
売上・収入 当年分の未収、翌年分の前受 未収計上/前受へ振替 売上・収入、売掛金
必要経費 当年分の未払、翌年分の前払 未払計上/前払へ振替 未払費用・前払費用
固定資産 当年分の減価償却、除却など 減価償却費など 固定資産台帳
債権 回収不能・引当対象の有無 貸倒金・貸倒引当金など 貸倒金・貸倒引当金
家事関連費 私用部分が混ざっていないか 家事分を除外 家事按分
現金・預金など 帳簿残高と実残高が一致するか 原因に応じて訂正 残高確認
借入金など 元本・利息・期末残高 元本と利息を分離 借入金・利息
未収・未払は当年分の計上漏れ、前受・前払は翌年分等の混入を確認するという点を、それぞれの区別として押さえておくと、以降の確認が進めやすくなります。
棚卸高と売上原価を整理する
商品や材料を扱う事業では、12月31日現在の在庫を棚卸表で確認し、期末棚卸高を確定します。棚卸高は売上原価の計算に影響します。期首棚卸高、年間仕入高、期末棚卸高、売上原価の関係を確認し、年間仕入高をそのまま売上原価とすることは避けます。
たとえば、年末に商品在庫が残っている場合は、棚卸表をもとに期末棚卸高を確定し、売上原価へ反映します。単に仕入を全額経費にする処理は行いません。
実際の入力方法は、使用する帳簿や会計ソフトの方式によって異なることがあるため、自分が使っている方式を確認します。棚卸しの評価方法や届出手続の詳細は、棚卸し・売上原価に関する個別記事で確認できます。
未収入金・売掛金などを確認する
その年のうちに商品の引き渡しや役務の提供が終わっているのに、入金が翌年になる場合、その年の売上として未収入金・売掛金を計上すべきことがあります。すでに日常記帳で売上・売掛金を計上済みであれば、決算整理として重ねて仕訳する必要はありません。
たとえば、12月中に売上が成立し、1月に入金となるケースでは、年末時点で売上・売掛金がすでに計上済みか確認し、未計上の場合だけ調整します。
詳細な確認方法は、売上・収入、売掛金・買掛金残高に関する個別記事で確認できます。
前受金などを確認する
すでに売上として記帳しているものの、その年のうちに商品の引き渡しや役務の提供が終わっていない部分がある場合、その部分は前受金として翌年へ振り替えることを確認します。取引ごとに、収益として計上すべき時期を先に確認します。
入金された日だけで当年分の売上と判断すると、翌年分の収益を当年に含めてしまうことがあるため注意します。
未払費用・未払金などを確認する
その年のうちに役務の提供を受けているのに、支払いが翌年になる場合、その年の必要経費として未払費用・未払金を計上すべきことがあります。
たとえば、12月分の通信費の支払いが翌年になる場合は、その年分の費用であることを確認したうえで、未計上であれば未払として整理します。少額の経費であることを理由に、一律の扱いとはしません。
未払金と未払費用のどちらの科目を使うかは、勘定科目名だけで税務上の結論が決まるものではありません。詳細な扱いは、未払費用・未払金に関する個別記事で確認できます。
前払費用・前払金などを確認する
支払い時に全額を経費として計上したものの、その一部が翌年以降の役務提供に対応する場合、その部分は前払費用として当年の経費から除外することを確認します。
たとえば、翌年分の保険料などを年内に先払いしている場合は、前払費用としての確認が必要です。1年以内の支払いであれば無条件にすべて当年経費にできるとは限らず、短期前払費用の例外に該当するかどうかは、前払費用・前払金に関する個別記事で確認できます。
減価償却費を計上する
事業用の固定資産を保有している場合、固定資産台帳と照合しながら、その年分の減価償却費を計上したかを確認します。減価償却資産の取得に要した金額は、取得時に全額を必要経費にするのではなく、使用可能期間にわたって各年分の必要経費へ配分するのが基本です。ただし、少額の減価償却資産など、一定の要件を満たす場合には取得価額を必要経費に算入できる取扱いもあります。
たとえば、固定資産を事業で使用している場合は、固定資産台帳を確認し、当年分の減価償却費を計算・反映します。少額資産などの取扱いを確認せず、取得価額全額を年末に機械的に費用化することはしません。
取得価額・耐用年数・償却方法や、少額資産などの取扱いの詳細は、固定資産台帳に関する個別記事や公式情報で確認します。
固定資産の売却・廃棄・損失を確認する
年内に固定資産を売却・廃棄した場合や、損失が生じた場合は、その内容を確認します。固定資産の売却に伴う譲渡所得の計算など、詳細な取扱いはこの記事では扱いません。該当する場合は、固定資産台帳に関する個別記事や公式情報で確認します。
貸倒金・貸倒引当金を確認する
回収が見込めなくなった債権がある場合や、貸倒引当金の対象になり得る債権がある場合は、その有無を確認します。貸倒損失・貸倒引当金の成立要件の詳細は、この記事では扱いません。該当する場合は、貸倒金・貸倒引当金に関する個別記事で確認できます。
家事分・事業主貸・事業主借を確認する
事業経費として記帳した支出に、私用部分が混ざっていないかを確認します。私用部分が含まれている場合は、家事分として必要経費から除外します。
たとえば、事業用カードに私用の支出が混在している場合は、私用部分を必要経費から除外します。按分率の決定方法や事業主貸・事業主借の詳細な扱いは、家事按分に関する個別記事で確認できます。
現金・預金・売掛金・買掛金・借入金の残高を確認する
現金・預金、売掛金・買掛金、借入金などの帳簿残高が、実際の残高や相手先の資料と一致しているかを確認します。残高差は原因を確認してから訂正します。原因不明のまま雑収入や雑損失へ機械的に振り替えることはしません。
借入金については、元本と利息を分けて確認します。返済額の全額を必要経費とする扱いは行いません。
代表的な決算整理仕訳
ここでは代表的な決算整理仕訳の例を示します。仕訳例はあくまで代表例であり、勘定科目名や処理がすべての事業者に一律であるとは限りません。すでに正しく記帳済みなら、同じ取引を決算整理仕訳で重ねて計上しないことを確認したうえで入力します。
未収の売上を計上する例
年内に売上が成立しているが、翌年入金となる場合の代表例です。
(借方)売掛金 /(貸方)売上
すでに日常記帳で売上・売掛金を計上済みであれば、重ねて仕訳しません。
翌年分として受け取った金額を前受へ振り替える例
すでに売上として記帳しているが、まだ当年中に売上が成立していない部分がある場合の代表例です。
(借方)売上 /(貸方)前受金
取引の収益計上時期を先に確認します。
当年分の未払経費を計上する例
当年中に役務提供などを受け、当年分の必要経費となるが、支払いが翌年になる場合の代表例です。
(借方)該当する経費科目 /(貸方)未払金・未払費用等
未払金と未払費用の科目選択を、税務上の結論そのものとして扱いません。
翌年分の前払経費を除外する例
支払い時に全額を経費計上したが、その一部が翌年以降の役務に対応する場合の代表例です。
(借方)前払費用 /(貸方)該当する経費科目
短期前払費用の例外が関係する場合は、個別記事で要件を確認します。
減価償却費を計上する例
(借方)減価償却費 /(貸方)減価償却累計額
直接法など、別の記帳方法もあります。取得価額・耐用年数・償却方法などは、固定資産台帳と現行制度で確認します。
家事分を除外する例
事業経費として記帳済みの支出に私用部分が含まれる場合、事業主貸などを使って家事分を除外する代表例です。
(借方)事業主貸 /(貸方)該当する経費科目
按分率はこの記事では決めません。
棚卸しに関する整理
棚卸しについては、会計ソフトや記帳方式によって期末商品棚卸高などの反映方法が異なることがあるため、単一の仕訳だけを全国共通・全方式共通のものとして扱いません。
期首棚卸高、年間仕入高、期末棚卸高、売上原価の関係を確認したうえで、実際の入力方法は使用する帳簿・会計ソフトの方式で確認します。
決算整理仕訳と訂正仕訳・決算振替仕訳の違い
決算整理仕訳は、次のような他の作業とは区別します。
- 年末になって初めて必要になる期間帰属・評価などの調整
- 日常記帳の入力漏れ・二重記帳・金額誤りの訂正
- 口座間振替や事業主貸・事業主借の整理
- 決算振替・帳簿締切
これらをすべて「決算整理仕訳」という一語でまとめないようにします。決算整理仕訳と決算振替仕訳・帳簿締切は同じ作業ではありません。決算振替仕訳や帳簿締切の詳細な処理は、この記事では扱いません。
年末の確認・調整が必要になるのは、青色申告者に限りません。白色申告や現金主義の特例を利用している場合も、当年分の収入・必要経費・棚卸しなどを整理する必要があります。
タイトルのとおり、代表例は複式簿記の借方・貸方で示していますが、白色申告や簡易な帳簿を使用する場合は、複式簿記の仕訳を同じ形で作成しない場合があります。白色申告や簡易記帳では、複式簿記の借方・貸方仕訳を同じ形で作成しない場合があることを踏まえ、記帳方法に応じて確認します。
現金主義による所得計算の特例を適用している青色申告者は、通常の発生主義・期間対応による説明と異なる部分があります。現金主義の特例を適用している場合は通常の説明と分けて確認し、この記事の通常処理をそのまま適用できるとは断定せず、現金主義用の国税庁資料や個別記事で確認します。
決算整理後にもう一度確認すること
決算整理仕訳を入力した後、少なくとも次を確認します。
- 現金・預金の残高が実際の残高と合うか
- 売掛金・買掛金の残高が相手先別の資料などと合うか
- 借入金残高が返済予定表などと合うか
- 期末棚卸高が棚卸表と合うか
- 固定資産台帳と減価償却費が合うか
- 前受・前払・未収・未払を翌年の入出金時に二重計上しない状態になっているか
- 家事分が必要経費へ残っていないか
- 同じ取引を通常仕訳と決算整理仕訳で二重計上していないか
- 決算書へ転記する前の科目残高に不自然なマイナスなどがないか
翌年の二重計上を防ぐ
決算整理は年末だけで完結しない場合があります。決算整理後は翌年の入金・支払時の二重計上にも注意します。
- 未収計上した売上を、翌年の入金時に再び売上へ計上しない
- 未払計上した経費を、翌年の支払時に再び経費へ計上しない
- 前受金は、売上が成立した時点で適切に振り替える
- 前払費用は、役務提供を受けた期間に応じて適切に費用化する
- 会計ソフトの自動振替・再振替機能を使う場合も、仕訳の意味を確認する
翌期首にすべての決算整理仕訳を必ず逆仕訳する、という扱いを一律に適用するわけではありません。
よくある間違い
決算整理では、次のような間違いが起こりやすいため注意します。
- 12月31日に銀行残高を見ただけで決算整理を終える
- 支払ったものをすべて当年の必要経費にする
- 入金されたものをすべて当年の売上にする
- 未収売上を年末と翌年入金時の両方で売上計上する
- 未払経費を年末と翌年支払時の両方で経費計上する
- 前払費用を「1年以内なら全部経費」とする
- 前受金を入金日だけで売上にする
- 棚卸高を入れず、年間仕入額をそのまま売上原価にする
- 減価償却資産の購入額を一律にその年の全額経費とする
- 元本返済と借入金利息をまとめて経費にする
- 家事分を事業経費に残す
- 原因不明の残高差を雑収入・雑損失などへ機械的に振り替える
- 会計ソフトが自動生成した決算仕訳を確認せず確定する
- 白色申告者には決算整理が不要とする
- 決算整理仕訳と決算振替仕訳・帳簿締切を同一視する
判断が難しい場合
自分で判断できない場合は、次を整理してから確認先へ相談すると進めやすくなります。
- 取引内容
- 取引相手
- 契約内容
- 商品・役務の引渡し・提供時期
- 請求日
- 入金日・支払日
- 年末時点の未収・未払・前受・前払残高
- 棚卸表
- 固定資産台帳
- 借入金返済予定表
- 帳簿残高と実残高
- 青色申告か白色申告か
- 現金主義特例を適用しているか
- 消費税の課税事業者か、税込・税抜のどちらで経理しているか
- すでに入力した仕訳
- 翌年に既に入力した入金・支払仕訳の有無
相談先
- 所轄の税務署
- 税理士などの税務専門家
- 会計ソフトの入力操作については、当該ソフトの公式サポート
税務判断と会計ソフトの操作方法は別のものとして扱います。
公式リンク
- 国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」
- 国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」
- 国税庁「令和7年分 白色申告者の決算の手引き(一般用)」
- 国税庁「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」
- 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
- 国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」
棚卸し、減価償却、貸倒れなど個別論点の公式情報は、それぞれの個別記事で確認できます。