遺族厚生年金について知る

対象読者:配偶者や親、子など家族が亡くなり、遺族厚生年金の対象になるかを初めて確認したい方。亡くなった方に会社員・公務員等として働いた期間がある場合を主に想定しています。

版:Ver1.1
更新日:2026年9月25日

なお、本記事は2026年9月25日時点の現行制度を基に説明しています。2028年4月には制度の見直しが予定されており、現行制度とは分けて確認する必要があります。


1.遺族厚生年金の概要

遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった場合など、一定の要件を満たす方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族のうち、優先順位が最も高い人へ支給される年金です。

「会社員や公務員だった人が亡くなれば、配偶者が必ず受け取れる年金」ではありません。亡くなった方側の要件を満たし、遺族側も生計維持関係や優先順位、年齢条件などを満たす必要があります。

主な確認ポイントは次のとおりです。

  • 亡くなった方に厚生年金加入中の死亡等の要件があること
  • 遺族側には生計維持関係と優先順位があること
  • 配偶者以外に子、父母、孫、祖父母が対象となる場合があること
  • 妻・夫・父母・祖父母などで年齢条件や受給開始時期が異なること
  • 年金額は定額ではなく、亡くなった方の報酬比例部分等を基礎に決まること
  • 遺族基礎年金とあわせて受け取れる場合があること
  • 自分の老齢厚生年金等がある場合は調整が生じること
  • 2028年4月施行予定の見直しは、現行制度とは別に確認が必要なこと

遺族基礎年金の対象となる遺族は、条件を満たせば遺族厚生年金もあわせて受給できる場合があります。

2.このページで分かること

このページでは、次のことが分かります。

  • 遺族厚生年金を受け取るために、亡くなった方側に必要な主な要件
  • 対象となる遺族の優先順位と、配偶者・子・父母・孫・祖父母それぞれの条件
  • 遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
  • 年金額がどのような考え方で決まるか(個別の金額計算は行いません)
  • 中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算という加算があること
  • 65歳以上で自分の老齢厚生年金がある場合の基本的な調整
  • 2028年4月に予定されている見直しの概要
  • 請求に向けて、相談前に整理しておくとよい内容と相談先

個別の受給資格の判定や、具体的な年金額の計算は、このページだけでは行えません。年金事務所または街角の年金相談センターへの確認が必要です。

3.最初に確認すること

遺族厚生年金の対象になるかどうかを考えるとき、まず次の4点を確認します。

  1. 亡くなった方に、厚生年金保険または共済組合等の加入歴があるか
  2. 亡くなった時点が、厚生年金加入中、退職後、障害厚生年金受給中、老齢厚生年金受給資格を満たした後のどれに近いか
  3. 自分と亡くなった方の続柄、自分の年齢
  4. 対象年齢等の子がいるか、同居・仕送りなどの生計関係

あわせて、自分が老齢年金・障害年金等をすでに受けているかどうかも確認しておくと、後述する調整の説明が理解しやすくなります。

亡くなった方の基礎年金番号や年金関係書類を確認できるかどうかも、この段階で把握しておくとよい情報です。

これらは、記事内で対象・非対象を確定するためのものではなく、年金事務所等へ相談する際の出発点として整理するものです。

4.遺族厚生年金を受け取るための要件

亡くなった方について、次のいずれかを満たす場合に、遺族厚生年金の対象となる可能性があります。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡した
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気・けがが原因で、初診日から5年以内に死亡した
  3. 1級・2級の障害厚生年金または障害共済年金を受けていた
  4. 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた

1・2の要件では、亡くなった方の保険料納付状況が関係します。4の要件では、一定の加入期間等が必要です。

どの要件に当てはまるかは、亡くなった方の年金記録に基づいて年金事務所等で確認する必要があります。このページでは個別の該当判定は行いません。

5.亡くなった方の保険料納付状況

上記4の要件1・2に当てはまる場合、保険料納付状況が関係します。

原則として、死亡日の前日において、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が、国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

また、死亡日が2036年3月31日までで、亡くなった方が65歳未満の場合には、死亡日の前日において、死亡月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないという特例があります。

保険料を一度でも未納にすると受け取れなくなる、という単純な話ではありません。実際の納付月数の計算は、年金事務所等で確認してください。このページでは個別の月数計算は行いません。

6.誰が受け取れるか

死亡した方によって生計を維持されていた遺族のうち、次の優先順位が最も高い人が対象となります。

優先順位 遺族 主な条件・注意
1 子のある配偶者 生計維持関係が必要。夫には現行制度上の年齢条件が関係する場合がある
2 子 年齢・障害状態の条件あり。配偶者受給中は子への支給停止が生じる場合がある
3 子のない配偶者 妻・夫で現行制度上の年齢条件・受給期間が異なる
4 父母 55歳以上、受給開始は原則60歳
5 孫 子と同様の年齢・障害状態の条件
6 祖父母 55歳以上、受給開始は原則60歳

順位が上位であることは、その人が必ず受給できることを意味しません。それぞれの立場に応じた条件を満たす必要があります。同順位内の具体的な家族関係の判断は、年金事務所等での確認が必要です。

子・孫の年齢・障害状態の条件

子・孫が対象となるのは、次のいずれかに当てはまる場合です。

  • 18歳になった年度の3月31日までにある
  • または20歳未満で、障害年金の障害等級1級・2級の状態にある

婚姻の有無などその他の条件も関係するため、このページの説明だけで対象かどうかを断定することはできません。

7.配偶者が受け取る場合

配偶者が対象となる場合の条件は、子の有無や性別、年齢によって異なります。

子のある配偶者

  • 子のある妻は、他の要件を満たせば対象となり得ます。
  • 子のある夫は、現行制度では原則として55歳以上という年齢条件が関係します。
  • 遺族基礎年金をあわせて受給できる場合は、夫が55歳から60歳までの間でも遺族厚生年金を受給できる場合があります。

子のない妻

  • 30歳未満で受給権が発生した場合、現行制度では5年間のみの受給となります。
  • 30歳以上の場合の受給期間は、この5年間の制限とは異なります。
  • 2028年4月施行予定の見直しにより将来の扱いが変わる予定であるため、受給権が発生する時点の制度を確認する必要があります。

子のない夫

  • 現行制度では55歳以上であることが必要です。
  • 受給開始は原則60歳からです。
  • 遺族基礎年金をあわせて受給できる場合は、例外があります。

夫が55歳未満だからといって、将来にわたって一切受け取れないと確定するものではありません。実際の受給可否は、年齢や受給権発生時点の制度に基づいて年金事務所等で確認してください。

8.子・孫が受け取る場合

子・孫は、第6章で示した年齢・障害状態の条件を満たす場合に対象となります。

ただし、子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受給している間は、子には遺族厚生年金が支給停止となります。これは「子に受給権がない」ということではなく、配偶者が受給している間、支給が停止される扱いです。

孫についても、子と同様の年齢・障害状態の条件が関係します。

9.父母・祖父母が受け取る場合

父母・祖父母が対象となるのは、次の条件を満たす場合です。

  • 55歳以上であること
  • 受給開始は原則60歳からであること

また、自分より優先順位の高い遺族(配偶者や子など)が要件を満たす場合は、父母・祖父母は対象となりません。父母や祖父母だからといって、子の有無にかかわらず必ず受け取れるわけではありません。

10.遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い

遺族基礎年金と遺族厚生年金は、それぞれ異なる制度です。主な違いは次のとおりです。

比較軸 遺族基礎年金 遺族厚生年金
制度の土台 国民年金 厚生年金保険
主な対象遺族 子のある配偶者または子 配偶者、子、父母、孫、祖父母のうち優先順位が最も高い人
子がいない配偶者 原則対象外 条件により対象となる場合がある
亡くなった方の主な要件 国民年金の被保険者等 厚生年金の被保険者中の死亡等
年金額の基本 定額部分と子の加算 亡くなった方の報酬比例部分等を基礎に計算
両方の関係 条件を満たせば遺族厚生年金とあわせて受給可能 遺族基礎年金の対象者はあわせて受給できる場合がある

この比較表は制度の概要を示すものであり、個別の受給可否はこの表だけで確定するものではありません。子のある配偶者または子であり、遺族基礎年金についても確認したい場合は、「遺族基礎年金について知る」もあわせてご確認ください。

11.遺族厚生年金の金額

遺族厚生年金の額は、一律ではありません。次の考え方に沿って決まります。

  1. 原則として、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が基礎となります。
  2. 一定の死亡要件(第4章の要件1・2・3)に基づく場合は、被保険者期間が300月未満でも300月とみなして計算します。
  3. これは「亡くなった方の給与の4分の3」や「年収の4分の3」ではありません。報酬比例部分は加入期間中の標準報酬等をもとに計算されるものであり、単純に給与や年収を4分の3にした金額ではないという点に注意が必要です。
  4. 本人が実際に受け取る年金額は、加入記録、標準報酬、死亡要件、本人の他の年金の有無等によって変わります。

制度上の計算方法と、本人が実際に受け取る金額は区別して理解する必要があります。個別の金額は、このページでは計算できません。年金事務所等で確認してください。

12.中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算

遺族厚生年金には、条件に応じて加算が付く場合があります。

中高齢寡婦加算

次のような代表的な条件に該当する妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳までの間、中高齢寡婦加算が付く場合があります。

  • 夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を同じくする対象年齢等の子がいない妻
  • 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた妻が、子の年齢到達等により遺族基礎年金を受給できなくなった場合

2026年度額は年635,500円です(制度改定により将来変わる可能性があります)。

ただし、亡くなった夫側の加入期間等の条件が関係する場合があるため、このページの説明だけで加算の対象になるとは断定できません。

経過的寡婦加算

昭和31年4月1日以前生まれの妻等には、65歳以後、経過的寡婦加算が付く場合があります。

対象となる世代や、亡くなった夫の加入期間、過去の受給状況等が関係するため、詳細は年金事務所等で確認してください。

13.65歳以上で自分の老齢厚生年金がある場合

65歳以上で、自分自身の老齢厚生年金と、配偶者の死亡による遺族厚生年金の両方の受給権がある場合は、単純にどちらも全額受け取れるわけではありません。

基本的な仕組みとして、自分の老齢厚生年金は全額支給され、遺族厚生年金のうち、自分の老齢厚生年金に相当する額が支給停止となる形が基本となります。

このページでは制度の概要のみを説明しており、個別の支給額の計算は行いません。実際の調整額は、年金事務所等で確認してください。

14.2028年4月に予定されている見直し

2028年4月には、遺族厚生年金の男女差を段階的に見直す制度改正が施行される予定です。この見直しは、2026年8月時点の現行制度とは別のものであり、混同しないよう注意が必要です。

見直しの主な内容は次のとおりです。

  • 女性では、施行直後に原則5年間の有期給付の対象となるのは、18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の人です。
  • 男性では、18歳年度末までの子がいない60歳未満の人が、新たに5年間の有期給付を受けられるようになります。
  • 有期給付には加算が設けられ、5年後も障害状態や収入要件等により継続給付となる場合があります。

一方で、次のような人は、今回の見直しの影響を受けないとされています。

  • すでに遺族厚生年金を受給している人(既受給者)
  • 60歳以後に受給権が発生する人
  • 18歳年度末までの子を養育中で給付を受けている人
  • 2028年度に40歳以上となる女性

「2028年からすべての人が5年で打ち切られる」という理解は誤りです。実際の死亡日や受給権発生日によって適用される制度が異なるため、該当する可能性がある場合は、厚生労働省や日本年金機構の最新の公式情報を確認してください。

改正後の有期給付・継続給付における具体的な所得判定などの詳細は、このページの範囲外です。

15.請求は自動ではない

死亡届の提出、年金受給者死亡届、未支給年金の請求、遺族厚生年金の請求は、それぞれ別の手続きです。死亡届を提出しただけで、遺族厚生年金が自動的に振り込まれるわけではありません。

遺族厚生年金を受けるには、原則として年金請求書等の提出が必要です。実際の請求方法は、「遺族厚生年金を請求する」手続きで確認します。

なお、未支給年金の請求は、遺族厚生年金の請求とは別の手続きです。また、国民年金第1号被保険者期間がある場合などは、寡婦年金や死亡一時金に該当する可能性もあります。これらはそれぞれ別制度として関係する場合があります。

16.期限・いつまでに

年金の給付には時効が関係します。このページでは、一律の短期提出期限を断定することはできません。

対象となる可能性がある場合は、早めに年金事務所または街角の年金相談センターへ相談することをおすすめします。

請求が遅れている場合であっても、このページの説明だけで権利が消滅したと判断することはできません。まずは年金事務所等へ確認してください。

17.相談前に整理すること

年金事務所等へ相談する前に、次の情報を整理しておくと、相談がスムーズに進みます。

これは、必要書類の完全な一覧ではありません。相談時に確認される可能性が高い事項として整理したものです。

18.相談先

遺族厚生年金についての相談・請求先は、次のとおりです。

  • 年金事務所
  • 街角の年金相談センター
  • 共済組合等(該当する場合)

市区町村役場は、遺族基礎年金等の窓口となる場合がありますが、遺族厚生年金の請求先は、原則として年金事務所または街角の年金相談センターです。

19.公式リンク・注意点

公式リンク

注意点

  • このページは制度の概要を説明するものであり、個別の受給資格や年金額を確定するものではありません。
  • 生計維持関係、事実婚関係、対象遺族の優先順位の個別適用、年金額の個別計算などは、年金事務所等での確認が必要です。
  • 2028年4月施行予定の見直しについては、施行日や内容が変更される可能性があるため、最新の公式情報を確認してください。

20.確認チェックリスト/関連記事

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