死亡した個人事業者の消費税の還付を受ける

概要

死亡した個人事業者について消費税の申告を行った結果、還付になる場合があります。本記事は、この「還付」を受けるための行動を、相続人・包括受遺者の立場から案内します。

還付は、単独の「還付金受取申請」だけで完結するものではありません。提出義務のある確定申告(消費税法45条)の結果として還付になる場合と、申告義務がなくても還付を受けるために申告する場合(消費税法46条)の、いずれかの申告手続きの結果として生じます。本記事では、この二つのルートの区別、還付固有の書類、相続人等ごとの還付額の整理、還付金の受取方法、提出、提出後の確認までを一続きで案内します。

死亡時の申告要否、対象課税期間、通常の申告書作成手順そのものは、「死亡した個人事業者の消費税の確定申告をする」で確認できます。本記事では、その申告の結果として還付が生じる場面と、申告義務がない場合の還付申告に焦点を絞って案内します。

このページで分かること

  • 被相続人の消費税について、還付を受けられる可能性があるか
  • 「提出義務のある申告の結果としての還付」か「還付を受けるための申告(46条)」か
  • どの申告書・付表・明細書が必要か
  • 各相続人等の還付税額をどのように整理するか
  • 誰がどの還付金を受け取るか
  • 代表者等がまとめて受領する場合に何が必要か
  • どこへ・どの方法で提出するか
  • 提出後に何を保存・確認するか

対象読者

  • 死亡した個人事業者の消費税申告を計算した結果、還付になりそうな相続人
  • 被相続人に消費税の申告義務はないが、課税仕入れや中間納付等により還付の可能性を確認したい相続人
  • 付表7の「各人の還付税額」「還付される税金の受取場所」を記載する人
  • 複数の相続人の間で還付金の受取方法を整理する人
  • 相続人等の代表者が還付金を受け取れるか確認したい人
  • 「死亡した個人事業者の消費税の確定申告をする」を確認した後、還付側の実行情報を詳しく確認したい人

更新日

更新日:2026年10月1日

最初に確認すること

還付を確認するときは、次の10項目を順に確認します。それぞれの詳細は、後続の見出しで説明します。

確認項目 確認内容
1. 対象課税期間 被相続人のどの課税期間について還付を確認するか
2. 課税事業者等 被相続人が還付を受け得る課税関係にあったか
3. 申告義務 45条の申告義務がある場面か、46条の還付申告を確認する場面か
4. 還付の種類 控除不足還付税額か、中間納付還付税額か、双方か
5. 申告方式 一般課税・簡易課税・適用可能な特例等のどれか
6. 相続人等 相続人・包括受遺者は誰か、相続放棄した人はいるか
7. 分割状況 還付金について協議等による分割があるか
8. 代表受領 各人が受け取るか、代表者等へ受領を委任するか
9. 必要書類 付表7、還付申告明細書その他の添付書類は何か
10. 受取・確認 各人の受取場所、提出後の還付確認方法をどうするか

これらは、それぞれ別の判断です。一つの項目の結論を、他の項目へそのまま当てはめないでください。

還付を受ける二つの申告ルート

還付は、次のいずれかのルートの結果として生じます。

提出義務のある申告を計算した結果、還付になる

被相続人について消費税法45条の確定申告書を提出すべき場面で、計算結果が還付になる場合です。死亡時の申告期限、対象課税期間、通常の申告書作成手順は、「死亡した個人事業者の消費税の確定申告をする」を主な案内として確認します。本記事では、還付固有の添付書類、付表7の還付欄、各人の受取方法等を確認します。

申告義務はないが、還付を受けるために申告する

消費税法45条1項ただし書により申告義務がない場合でも、法46条1項の要件に該当すれば還付を受けるための申告ができます。個人事業者が課税期間の途中で死亡し、その課税期間について46条1項の申告が可能な場合は、相続人が46条2項により申告できます。

申告義務がないことだけを理由に、還付の可能性を否定しないでください。申告義務の有無と、還付を受けられるかどうかは、別の確認事項です。

還付を受けられるか確認する

還付を受けられるかどうかは、被相続人が対象課税期間について課税事業者として還付を受け得る状態にあったかを、先に確認します。

免税事業者は、単に仕入れに含まれる消費税が多かったというだけでは、消費税の還付を受けられません。免税事業者と課税事業者を区別したうえで、被相続人が対象課税期間についてどちらの立場にあったかを確認します。

判断に迷う場合は、被相続人の申告方式、届出の状況等を確認できる資料をそろえたうえで、税務署または税理士へ確認します。

期限・いつまでに

期限は、二つの申告ルートで別に確認します。一つの期限として混同しないでください。

45条に基づく確定申告に該当する場合

死亡時の確定申告に該当する場合の申告期限は、「死亡した個人事業者の消費税の確定申告をする」で確定した期限を適用します。本記事では、その期限を独自に読み替えません。

46条の還付を受けるための申告に該当する場合

46条の還付を受けるための申告を、45条の死亡時申告と同じ期限として一律に扱わないでください。46条の還付請求が可能な期間について、所得税の還付請求期間等から類推した期限を本記事では示しません。具体的な最終期限を確認する場合は、税務署または国税庁の現行案内で確認します。

還付加算金の計算に関係する期間との違い

還付加算金の計算上、死亡した課税期間の46条申告について、死亡日の翌日から一定の期間が関係する場合があります。この期間は、還付加算金の計算に関するものであり、還付申告そのものの提出期限ではありません。両者を混同しないでください。

準備するもの

少なくとも次を確認します。

  1. 被相続人の対象課税期間の帳簿・請求書・インボイス等
  2. 売上・課税仕入れ・控除税額等の計算資料
  3. 中間納付税額が分かる資料
  4. 被相続人の申告方式が分かる資料
  5. 被相続人の納税地・氏名・死亡年月日
  6. 相続人・包括受遺者の住所・氏名・個人番号等
  7. 各人の続柄・生年月日・電話番号等
  8. 相続分・相続財産価額を確認できる資料
  9. 還付金について協議等による分割がある場合、その内容を確認できる資料
  10. 各人の還付金受取口座等
  11. 代表者等へ受領を委任する場合の委任状
  12. 還付理由・課税売上げ・課税仕入れ・固定資産取得等、還付申告明細書の作成に必要な資料

上記は還付申告の準備に必要な範囲を示したものであり、個々の事情によって追加の確認が必要になる場合があります。判断に迷う資料がある場合は、税理士または税務署へ確認します。

使用する申告書・付表・明細書

死亡した事業者の還付申告は、単独の「還付金受取申請書」だけで完了するものではありません。基本構造は次のとおりです。

消費税及び地方消費税の申告書 + 通常申告で必要な第二表・付表・計算表 + 死亡時固有の付表7 + 還付内容に応じて必要となる「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」等

付表7

付表7は、死亡した事業者について相続人が申告する死亡時固有の明細書です。還付側では特に、次を確認します。

  • 死亡した事業者の還付税額
  • 各相続人等の還付税額
  • 還付される税金の受取場所
  • 代表者等への受領委任

消費税の還付申告に関する明細書

一般用申告書で控除不足還付税額のある還付申告をする場合は、「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」を添付します。中間納付還付税額のみの場合は、この明細書を一律に必要と判断しないでください。

簡易課税・2割特例等を適用している場合の添付書類構成も、独自に推測せず、現行の国税庁一覧に従って確認します。

各相続人等の還付税額を確認する

協議等による分割がある場合

付表7の記載要領に従い、相続人・包括受遺者の協議等により還付金が分割されているときは、その分割により請求できる還付金額を各人の還付税額欄へ記載します。

分割されていない場合

協議等による分割がない場合は、各人が相続・包括遺贈により取得する財産の相続分に応じて還付税額を計算します。必ず法定相続分で均等に分けるとは限りません。相続分の内容を確認したうえで計算します。

端数

各人の還付税額の端数処理は、現行の付表7記載要領に従います。

還付金の受取方法を決める

各人が受け取る場合

付表7の各人の「還付される税金の受取場所」欄に、現行の記載要領に従って受取方法を記載します。預貯金口座への振込みを基本として案内できますが、口座名義等の条件は現行の国税庁案内で確認します。

郵便局等で受け取る場合

現行の付表7には、ゆうちょ銀行各店舗・郵便局窓口での受取りを希望する場合の記載欄と記載要領があります。利用可能性や現行の運用は、公開前の最終確認でも改めて確認します。

公金受取口座について

死亡した事業者の相続人別還付について、通常の本人申告向けの公金受取口座の説明を、そのまま転用しないでください。付表7の現行様式や死亡時申告の取扱いで確認できた方法を優先して確認します。

代表者等が還付金を受け取る場合

相続人・包括受遺者が受領すべき還付金を相続人の代表者等へ委任する場合は、付表7とは別に「還付金の受領に関する委任状」の提出が必要です。

次の三つは、それぞれ別の事項です。混同しないでください。

  • 付表7で相続人等の代表者を指定すること
  • 還付金の受領を代表者等へ委任すること
  • 他の相続人等を付表7へ記載しなくてよいこと

代表者を指定した場合でも、相続を放棄した人を除く相続人・包括受遺者について、付表7への記載要件は別に維持されます。代表者を指定しただけで、他の相続人分の還付金まで自動的に受け取れるわけではありません。

提出方法を選ぶ

提出方法には、次の3種類があります。現行の対応状況を確認したうえで選択します。

比較項目 e-Tax 書面持参 書面送付
作成・提出 現行の対応範囲に従う 現行様式を作成して持参する 現行様式を作成して送付する
添付書類 電子提出・別送等の現行条件を確認する 必要書類を併せて提出する 必要書類を併せて送付する
提出記録 受信通知等を保存する 提出日・受付記録を保存する 発送記録等を保存する
向いている場面 電子環境・対応書類が整っている 窓口での提出を選ぶ 税務署へ行かずに書面で提出する

死亡時申告・付表7・還付申告明細書・委任状の電子提出可否や添付方法は、現行システムの対応状況によって変わることがあります。推測で補わず、e-Taxヘルプデスクまたは税務署で確認します。

提出先

死亡した事業者の納税地を所轄する税務署を基準に確認します。相続人自身の住所地の税務署とは限りません。提出先が分からない場合は、被相続人の納税地を確認できる資料をそろえたうえで確認します。

申告・提出する

  1. 「使用する申告書・付表・明細書」で確認した書類一式をそろえます。
  2. 「各相続人等の還付税額を確認する」「還付金の受取方法を決める」「代表者等が還付金を受け取る場合」の内容を、付表7と委任状(必要な場合)へ反映します。
  3. 「提出方法を選ぶ」で確認した方法のうち、利用できるものを選びます。
  4. 「提出先」で確認した税務署へ提出します。
  5. 提出した記録を保存します。

提出後に確認すること

  1. 申告書、付表7、還付申告明細書等の提出記録を保存します。
  2. 個人番号が記載された控えの複製・共有には注意します。
  3. e-Taxを利用した場合は、利用できる範囲で還付金の処理状況・通知を確認します。
  4. 書面提出等の場合も、国税庁が案内する還付金の処理状況確認方法を利用します。
  5. 還付までの期間は、固定の日数として保証されているものではありません。
  6. 税務署から内容確認・追加資料の連絡がある場合があります。これは異常事態と決めつけずに対応します。
  7. 還付金が振り込まれたら、各人の受取額と付表7の整理内容を照合します。

死亡届出書との関係

消費税基本通達17-1-3により、法45条2項・3項または法46条1項・2項による申告で、所定事項を記載した明細書(付表7)が提出された場合は、「個人事業者の死亡届出書」の提出があったものとして取り扱われます。

したがって、46条の還付申告についても、所定の付表7を伴う場合は、死亡届出書のみなし提出関係を確認します。

このみなし提出は、インボイス制度の「適格請求書発行事業者の死亡届出書」とは別の手続きです。付表7の提出だけで、インボイスの死亡届出まで済むと判断しないでください。

状況別

相続放棄した人がいる場合

相続を放棄した人は、還付税額の計算・付表7への記載の対象から外れます。誰が相続を放棄したかを、相続人全体の確認と併せて整理します。

中間納付還付税額のみの場合

控除不足還付税額がなく、中間納付還付税額のみが還付となる場合は、「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」の添付が、控除不足還付税額がある場合と同じ扱いになるとは限りません。どちらの還付に該当するかを先に確認したうえで、必要な添付書類を確認します。

提出後に税務署から内容確認・追加資料の連絡があった場合

提出後に、税務署から申告内容の確認や追加資料の提出を求められる場合があります。この連絡があったこと自体を、申告に誤りがあったものと決めつけず、求められた内容を確認して対応します。対応方法に迷う場合は、税理士または税務署へ確認します。

判断できない場合

次のような点は、記事だけでは判断できない場合があります。

  • 被相続人が対象課税期間について課税事業者であったかどうか
  • 46条の還付申告として提出できる具体的な期限
  • 控除不足還付税額・中間納付還付税額のどちらに該当するか、またその添付書類
  • 各相続人等の還付税額の具体的な計算
  • 提出方法・添付方法の現行の対応状況

これらについては、「準備するもの」で確認した資料を手元に用意したうえで、「相談先」で案内する窓口へ確認します。

注意点

  • 「提出義務のある申告(45条)」と「還付を受けるための申告(46条)」は、根拠となる条文も期限の考え方も異なります。同じものとして扱わないでください。
  • 46条の還付申告の期限を、45条の死亡時申告の期限と同一視しないでください。
  • 還付加算金の計算に関係する期間を、還付申告の提出期限と混同しないでください。
  • 付表7と「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」は、別の書類です。どちらか一方だけで還付申告が完了するとは限りません。
  • 各相続人等の還付税額は、協議等による分割の有無によって計算方法が異なります。
  • 代表者の指定と、還付金受領の委任は別の事項です。代表者を指定しただけでは、他の相続人分の還付金を受け取れません。
  • 死亡した事業者の相続人別還付について、通常の本人申告向けの公金受取口座の説明を、そのまま当てはめないでください。
  • 個人番号が記載された控えは、取扱いに注意して保管・共有します。

よくある間違い

  1. 還付は申告書とは別の「受取申請」だけでできると思う
  2. 死亡した事業者について申告義務がなければ還付申告も一切できないと思う
  3. 45条の確定申告と46条の還付を受けるための申告を同じ期限・同じ根拠として扱う
  4. 46条の還付申告も必ず「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」と思う
  5. 還付加算金計算上の期間を還付申告の提出期限だと思う
  6. 免税事業者でも仕入れの消費税が多ければ当然に還付されると思う
  7. 付表7を使わず通常の還付申告書だけ提出すればよいと思う
  8. 付表7だけで還付申告が完了すると思う
  9. 控除不足還付税額があるのに還付申告明細書を見落とす
  10. 中間納付還付税額のみでも還付申告明細書が必ず必要だと思う
  11. 還付税額は必ず法定相続分だけで分けると思う
  12. 相続人全員の還付税額を均等割りする
  13. 代表者を指定すれば他の相続人等を付表7に書かなくてよいと思う
  14. 代表者指定だけで他の相続人分の還付金も受け取れると思う
  15. 還付金の代表受領に必要な委任状を見落とす
  16. 相続人自身の住所地の税務署へ提出すると決めつける
  17. 付表7でインボイスの死亡届出まで済むと思う
  18. 個人番号が記載された控えをそのまま複製・共有する

チェックリスト

対象・還付判定

相続人等

書類

提出・提出後

相談先

税務署・国税局電話相談センター

次のような点を確認する場合に利用します。

  • 45条申告か46条還付申告かの確認
  • 還付申告の提出可能期間の確認
  • 付表7・還付申告明細書の要否
  • 複数相続人・代表受領・委任状に関すること
  • 提出先・提出方法
  • 還付の処理状況

税理士

次のような場合に相談を検討します。

  • 還付額の計算が複雑な場合
  • 多額の設備投資・輸出等がある場合
  • 帳簿・インボイス等が未整理の場合
  • 複数相続人間の還付額整理が複雑な場合
  • 過年度・期限後・修正等が関係する場合

e-Taxヘルプデスク

次のような操作面の確認に利用します。

  • 電子送信に関すること
  • 添付方法に関すること
  • 受信通知に関すること
  • 還付通知・処理状況画面等の操作

公式リンク

次の公式情報を確認してください。

あなたの場合はこちら

  • 計算の結果、納付税額になった場合は、消費税を納付する手続きを確認します。本記事の還付側の案内は対象外となります。
  • 被相続人が課税事業者だったかどうかが分からない場合は、課税事業者の判定を先に確認します。
  • 相続人が被相続人の事業を承継した場合は、相続人自身の消費税の納税義務・届出を別に確認します。
  • インボイス制度の死亡時の届出を確認したい場合は、適格請求書発行事業者の死亡届出書に関する手続きを別に確認します。
  • 所得税の還付・準確定申告を確認したい場合は、それぞれ別の手続きとして確認します。