災害に備えて非常持出品を準備する
概要
地震や水害などで避難する必要が生じたとき、何を持って逃げればよいかをその場で考え始めるのは危険です。非常持出品とは、避難する際にとっさに持ち出す最低限の物資をまとめたものであり、平時のうちに準備しておくことで、避難のための時間を無駄にせずに済みます。
この記事は、非常持出袋に何を入れるべきか分からない人、市販の防災セットだけで十分か迷っている人、家族構成や自分の事情に合わせて中身を調整したい人、家庭備蓄と非常持出品の違いが曖昧な人、一度準備した後に何を点検すればよいか知りたい人を主な対象とします。
この記事では、非常持出品の役割、家庭備蓄との違い、最初に用意する基本品、個人・家族ごとに追加を検討する物、荷物量や重さの調整、非常持出袋の置き場所、消費期限や季節等に応じた見直し、最終チェックリストまでを順に案内します。一方で、食料・飲料水を家庭内に何日分備蓄するかの詳細、災害別の避難判断や避難所そのものの選び方、家具・家電の転倒防止、個別の薬の処方量や医療判断、特定の商品・防災セットの購入推奨は、この記事の責任範囲には含みません。
読み終えたときに、非常持出品と家庭備蓄の違いを理解し、基本品を自分のリュック等へまとめられ、自分や家族固有の追加品を考えられ、実際に背負って避難の妨げにならない量へ調整でき、すぐ取れる場所へ置ける状態を目指します。すべての候補品をそろえることではなく、最低限持ち出せる状態になることが、この記事の目的の達成地点です。
このページで分かること
- 非常持出品と家庭備蓄がどう違うか
- 非常持出袋にまず入れる基本品
- 自分や家族の事情に合わせて追加を検討する物
- 荷物の重さをどう調整するか
- 非常持出袋をどこに置くか
- 準備した後、何を定期的に見直すか
- 準備完了を確認するためのチェックリスト
対象読者
- 災害への備えを始めたいが、非常持出袋に何を入れるべきか分からない人
- 市販の防災セットだけで十分か迷っている人
- 家族構成や自分の事情に合わせて中身を調整したい人
- 家庭備蓄と非常持出品の違いが曖昧な人
- 一度準備した後、何を点検すればよいか知りたい人
更新日
更新日:2026年9月7日
まずやること
まず、両手を空けて持ち出せるリュック等を1つ用意し、次の「非常持出袋にまず入れるもの」で示す基本品から入れます。
その後、次の順で進めます。
- 自分や家族に必要な追加品を足す
- 実際に背負ってみる
- 重すぎる場合は優先度の低い物を減らす
- すぐ取れる場所へ置く
非常持出品と家庭備蓄は分けて考える
非常持出品と家庭備蓄は、役割が異なります。
非常持出品は、避難する際に持ち出す物資です。避難行動そのものを妨げないよう、実際に背負って移動できる量にまとめておく必要があります。
一方、家庭備蓄は、自宅などで避難生活や在宅避難を送るための食料・飲料水などをまとめて自宅に置いておくものです。数日分から1週間以上分といったまとまった量を扱うため、非常持出袋にすべてを入れる性質のものではありません。
家庭備蓄として何をどれだけ備えるかの詳細は、この記事の責任範囲には含みません。ここでは、避難するときに持ち出す非常持出品の準備に絞って案内します。
非常持出袋にまず入れるもの
以下は、共通性の高い基本品です。すべてを必ず入れなければならないという意味ではなく、自分に必要な物を考えながら選ぶための土台として使ってください。
水・食べ物
- 飲料水
- すぐ食べられる食品
明かり・情報・連絡手段
- 懐中電灯
- 携帯ラジオ等の情報を得る手段
- 携帯電話用の充電器・モバイルバッテリー
- 予備電池
安全・救急用品
- ヘルメットまたは防災ずきん
- 軍手等
- 救急用品
- 常用薬
- マスク
衣類・衛生用品
- 衣類・下着
- 雨具
- 防寒用品等(必要な季節)
- タオル
- ウェットティッシュ等
身元確認や生活に必要な情報
- 身分証明・連絡先・重要情報を確認できるもの
- 現金
- 筆記用具
- 笛・ブザー等
自分・家族に合わせて追加するもの
基本品だけでは、自分や家族に固有の事情まではカバーできません。「自分や家族にないと困る物」という考え方で、次のような例を参考に追加を検討してください。
- 常用薬がある場合は、お薬手帳
- 眼鏡・コンタクト等が必要な場合は、予備の眼鏡
- 乳幼児がいる場合は、ミルク・紙おむつ等
- 高齢者や介助が必要な人がいる場合は、必要なおむつ等
- 生理用品が必要な場合
- 妊娠中の場合に必要な物
- 障害等により個別の支援用品・情報伝達手段が必要な場合
- 季節によって防寒・暑さ対策が必要な場合
- ペットとの同行避難等を考える必要がある場合
ここに挙げた例は、想定される条件をすべて網羅したものではありません。自分や家族の状況に照らして、他にも必要な物がないかを考えてみてください。なお、ペットとの同行避難に必要な具体的な用品の詳細は、この記事の主な責任範囲には含みません。同行避難を考える必要があること自体を、検討事項として挙げるにとどめます。
重すぎないように調整する
非常持出品の持ち出し量について、成年男性で約15kg、成年女性で約10kg、こども・高齢者で約6kgという目安が、政府広報で示されています。
ただし、この数値は「この重さまで入れてよい」という上限や、「必ずこの重さにする」という義務ではなく、持ち出せる量の参考目安として示されたものです。
この記事で伝えたい最も重要なことは、数値どおりに荷物を詰め込むことではなく、実際に自分でリュック等を背負ってみて、安全に避難できる量へ調整することです。体力や健康状態も踏まえ、目安の数値に合わせることを優先せず、自分が安全に持ち運べる量へ調整してください。
すぐ持ち出せる場所に置く
非常持出袋は、避難が必要になったときにすぐ取れる場所へ置いておきます。
玄関近くや寝室などが置き場所の候補になりますが、災害によって家屋が被害を受け、1か所からしか取れない状況になる可能性もあります。自宅の構造や家族の生活動線に応じて、置き場所を検討してください。
また、非常持出袋を置くことで避難経路をふさいでしまうような置き方は避けてください。
定期的に中身を見直す
非常持出品は、一度準備したら終わりではありません。次のような変化に応じて、定期的に中身を見直します。
- 食品・飲料の消費期限
- 薬等の使用期限・必要性の変化
- 電池やモバイルバッテリー等の状態
- 衣類・季節用品の入れ替え
- 子どもの成長に応じた必要品の変化
- 家族構成の変化
- 健康状態や生活上必要な物の変化
点検時期は、食品・飲料や薬などの期限、季節、子どもの成長、家族構成・健康状態などの変化に合わせて決めます。上記の変化があったタイミングで中身を見直してください。
よくある疑問
市販の防災セットだけで十分ですか
そのままで十分とは限りません。
市販の防災セットは、共通性の高い用品をまとめて用意できる点で有用です。ただし、常用薬、眼鏡、乳幼児用品、生理用品、個別の支援用品等、本人や家族ごとに異なる物までは含まれていないことが多くあります。セットの中身を確認したうえで、自分や家族に固有の物を追加することを検討してください。
なお、この記事は市販の防災セットの購入自体を推奨するものでも、否定するものでもありません。
非常持出袋には何日分の水や食料を入れますか
家庭備蓄の全量を持ち出す必要はありません。避難する際に実際に持てる範囲の水・食品を入れ、避難後の生活を支える家庭備蓄とは分けて考えます。
一次情報の中には、非常持出品として「最低3日分」の水・食料を挙げるチェックリストがある一方で、持ち出し用の飲料水として1.5リットル程度を例示する資料もあります。必要な量は、避難方法や体力、荷物の重さとの関係で変わるため、この記事では「全員一律に3日分を背負う」といった断定はしません。何日分を家庭に備蓄しておくかについては、家庭備蓄を扱う別記事の責任範囲となります。
貴重品は非常持出袋に入れたままでよいですか
日常的に使う身分証明書や重要な原本を、非常持出袋へ入れっぱなしにしておく必要はありません。
すぐ持ち出せる場所への保管、普段からの携行、必要な情報の控えを非常持出袋に入れておくことなど、状況に応じて使い分けてください。
家族全員分を1つの袋にまとめてもよいですか
家族構成や避難方法によって適した形は異なりますが、1人が持ち出せなくなった場合に家族全員分を失ってしまう構成は避ける方向で考えます。
可能な人がそれぞれ自分の分を背負える範囲で分けておく、という考え方が一つの目安になります。ただし、乳幼児や高齢者、介助が必要な人に対して、機械的に荷物を持たせることを推奨するものではありません。