給与支払事務所等の廃止届出書を提出する
概要
給与等の支払事務を取り扱っていた事務所等を廃止したときは、税務署へ届出書を提出します。手続に使う正式な様式名は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」です。開設・移転・廃止のいずれの場合も同じ様式を使用し、届出の中でどれに該当するかを記載します。
提出期限は、廃止の事実があった日から1か月以内です。解散・廃業・休業等によって給与等の支払がなくなった場合のほか、支店等の給与支払事務を本店等へ引き継いで支店側の支払事務がなくなった場合も、この届出が関係します。
個人事業者が廃業する場合は、個人事業の開業・廃業等届出書に給与等の支払の状況を記載して提出することで、本届出書を別途提出しなくてよい取扱いがあります。 この省略取扱いを使わない場合などは、給与支払事務所等の廃止届出を別途確認します。
この届出書を提出しても、廃止前までに源泉徴収した所得税・復興特別所得税の納付、年末調整、源泉徴収票の交付・提出、法定調書の提出などが自動的に終わるわけではありません。これらは、届出とは別に確認が必要な手続として、このページの後半で扱います。
このページで分かること
- 自分の状況がこの届出書の提出対象かどうか
- 正式な様式名と、廃止・移転・引継ぎの違い
- 提出期限(廃止の事実があった日から1か月以内)
- 提出先・提出方法
- 届出書に記載する主な項目
- 令和8年以後の個人事業の廃業届との関係
- 届出書の提出後に確認が必要な源泉所得税・年末調整・法定調書等の残務
対象読者
- 従業員等への給与の支払を終了し、給与支払事務所等を廃止する個人事業主
- 事業を廃業・休業し、給与等の支払がなくなる人
- 法人の解散等に伴って給与支払事務を終了する担当者
- 支店・営業所等の給与支払事務を本店等へ引き継ぐ担当者
- 個人事業の廃業届に給与等の支払状況を記載する場合、本届出書を別途提出する必要があるか確認したい人
- 届出後に残る源泉所得税・年末調整・法定調書等の対応を確認したい人
個人・法人を問わず、国内で給与等の支払事務を取り扱っていた事務所等の支払事務を廃止した給与等の支払者が対象です。
更新日
更新日:2026年10月3日
最初にやること
まず、給与等の支払事務が実際に終了した日を確認します。
次に、支払事務そのものがなくなるのか、それとも別の事務所へ引き継がれるのかを確認します。
廃止の事実があった日から1か月以内という期限を確認します。
現行の届出書の様式を用意します。
この届出書を提出するのはどんなときか
この届出書は、給与の支払者が、国内の給与等の支払事務を取り扱う事務所等を廃止したときに提出します。
代表的な廃止の例は、次のとおりです。
- 解散・廃業・休業等によって給与等の支払がなくなった場合
- 支店・営業所等での給与等の支払事務を本店・主たる事務所等へ引き継いだ場合
支店等の給与支払事務を本店等へ引き継ぐ場合も、届出が関係します。ただし、これは給与支払者そのものが消滅したこととは限りません。支払事務を引き継ぐ場合と、支払そのものがなくなる場合は、分けて考えます。
給与を支払う従業員がいなくなっても、事業自体は継続する場合があります。この場合も、給与支払事務がなくなった事実を基準に届出対象かどうかを確認します。事業を廃業するかどうかとは別の問題として扱います。
廃止と移転・引継ぎを区別する
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は、廃止だけでなく、移転の場合にも同じ様式を使用します。廃止と移転は同じ様式を使いますが、届出内容は区別します。
所在地を変えるだけで、給与等の支払事務そのものは継続する場合は、廃止ではなく移転として扱います。廃止として記載しないよう注意します。
支店等を閉鎖して、その給与支払事務を本店等へ引き継ぐ場合は、引継先の給与支払事務所等の情報を確認して記載します。
| 比較項目 | 廃止 | 移転 | 引継ぎを伴う廃止 |
|---|---|---|---|
| 何が変わるか | 給与等の支払事務そのものがなくなる | 給与支払事務所等の所在地が変わる | 支払事務が別の事務所等へ移る |
| 給与支払事務が残るか | 残らない | 継続する(場所が変わるだけ) | 引継先で継続する |
| 引継先の有無 | 原則としてなし | 該当なし(同一の事務所等が場所を変える) | あり(引継先を記載する) |
| 届出上の扱い | 廃止として記載する | 移転として記載する | 廃止として記載し、引継先の情報を明確にする |
| 提出先の考え方 | 廃止する給与支払事務所等の所在地の所轄税務署 | 移転前の所在地の所轄税務署(本記事の対象外) | 廃止する給与支払事務所等の所在地の所轄税務署 |
この表は、廃止と移転・引継ぎのどれに該当するかを判断するためのものです。実際にどれに当てはまるかは、給与支払事務が実際に終了するか、場所だけが変わるか、引継先があるかという事実関係で判断します。判断が難しい場合は、所轄税務署へ確認します。
状況別
廃業・解散・休業等で給与等の支払自体がなくなる場合
中心となるケースです。廃止として届出を進めます。給与等の支払が終了した日を廃止日として確認し、期限内に届出書を提出します。
支店・営業所を閉鎖し、給与支払事務を本店・他支店へ引き継ぐ場合
支払事務そのものがなくなるわけではなく、引継先で継続します。届出書には、引継先となる給与支払事務所等の情報を記載します。支店を閉鎖しただけで、事務所の開設者である法人・個人事業主自体が廃業・清算結了していない場合、源泉所得税の納税地が、他の給与支払事務所等へ引き継がれることがあります。
給与を支払う従業員がいなくなったが、事業自体は続ける場合
給与支払事務がなくなった事実を基準に、届出対象かどうかを確認します。事業を廃業していない場合でも、給与等の支払事務がなくなれば、この届出が関係することがあります。事業の廃業届とは別の手続として扱います。
個人事業を廃業する場合
個人事業を廃業する場合は、個人事業の開業・廃業等届出書に給与等の支払の状況を記載して提出することで、本届出書を別途提出しなくてよい取扱いがあります。実際に使う廃業届の記載内容を確認し、省略できない場合は本届出書を別途提出します。詳しくは、後述の「個人事業の廃業届との関係」を確認します。
法人が解散・清算する場合
給与支払事務所等の廃止届出を確認しますが、法人税等に関する解散・清算手続そのものは、このページの対象外です。別途、該当する手続を確認します。
給与支払事務所等を別の所在地へ移すだけの場合
この場合は、廃止ではなく移転として扱います。正式様式は同じですが、廃止と誤って記載しないようにします。移転の詳しい手続は、このページの対象外です。
納期の特例を利用している場合
給与支払事務所等を廃止したことだけを理由に、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出する必要があるとは限りません。廃止前までに源泉徴収した税額の納付時期を、別途確認します。
年の途中で廃業・法人成りする場合
年の途中で廃業しても、給与所得の源泉徴収票や法定調書等の提出義務が自動的に消えるわけではありません。個人事業と法人成り後の法人は、別の支払者として扱います。同一の支払者としてまとめて処理しません。
手続きの流れ
- 廃止日と引継ぎの有無を確認します。 給与等の支払事務がいつ終了したか、別の事務所等へ引き継がれるかを確認します。
- 現行の届出書の様式を用意します。 最新の様式を確認して準備します。
- 必要な情報を整理します。 届出者の情報、給与支払事務所等の情報、廃止日、引継先の情報などを整理します。
- 届出書に記入します。 記載要領を確認しながら、必要な項目を記入します。
- e-Taxまたは書面で提出します。 所轄税務署へ、期限内に提出します。
- 提出記録と残務を確認します。 提出記録を保管し、源泉所得税の納付や年末調整などの残る手続を確認します。
必要なもの
- 現行の届出書(「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」)
- 届出者の住所または本店所在地、氏名または名称
- 個人番号または法人番号
- 法人の場合は代表者に関する情報
- 給与支払事務所等の名称・所在地等の情報
- 廃止日
- 引継ぎがある場合は、引継先の給与支払事務所等の情報
- 従事員数等、現行様式で求められる情報
- e-Taxで提出する場合は、利用環境等の準備
- 書面で提出する場合の本人確認書類の取扱いは、所轄税務署へ確認します
これらは、記載要領で求められる主な項目です。実際の様式では、このほかにも記載欄がある場合があります。現行の様式・記載要領で最終確認します。
期限・いつまでに
廃止の事実があった日から1か月以内に提出します。
起算点は、給与支払事務を実際に終了した日です。提出を思い立った日や、確定申告の期限、年度末を起算点にはしません。
具体的な廃止日の判断が難しい場合は、給与支払事務を実際に終了した事実関係を整理したうえで、所轄税務署へ確認します。
提出先
廃止する給与支払事務所等の所在地の所轄税務署です。
移転の場合は、移転前の所在地の所轄税務署が提出先となりますが、これは移転の場合のルールであり、廃止の場合の提出先と混同しないようにします。
提出方法
次のいずれかの方法で提出します。
- e-Taxソフトによる提出
- 書面を税務署へ持参する
- 書面を郵便・信書便で送付する
e-Taxの利用可能時間や利用環境、具体的な操作方法については、公式の案内で最新の情報を確認します。
税務署へ持参する場合、令和8年10月1日から総合窓口の受付時間は原則として9時から15時です。受付時間外でも開庁時間内(8時30分から17時まで)に来署した場合は各種手続を利用できますが、国税庁は可能な限り受付時間内の来署を案内しています。
書面を郵送する場合、令和8年7月10日から全税務署が内部事務のセンター化の対象となっています。所轄税務署そのものは変わりませんが、実際の郵送先は所轄税務署に対応する業務センター等となるため、国税庁の現行案内で送付先を確認します。業務センターへ書面を直接持参することはできません。
この届出書は、国税庁の「税務手続に関する主な書類の提出時期の一覧」で発信主義の対象とされています。郵便・信書便で提出する場合は、通信日付印により表示された日が提出日となるため、期限内の日付になるよう余裕をもって送付します。
届出書の書き方
届出書には、主に次の項目を記載します。
- 届出者の住所または本店所在地
- 氏名または名称
- 個人番号または法人番号
- 法人の場合の代表者氏名
- 届出書の種別(廃止に該当することが分かる記載)
- 届出の内容・理由
- 給与支払事務所等の名称・所在地等
- 引継ぎがある場合は、引継先の情報
- 従事員数
- その他参考事項
- 税理士が作成した場合は、税理士の署名
税務署が使用する整理欄については、記載しません。
具体的な記載方法や欄ごとの詳しい説明は、現行の記載要領で確認します。
個人事業の廃業届との関係
個人事業者については、個人事業の開業・廃業等届出書に給与等の支払の状況を記載した場合、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を別途提出しなくてよい取扱いがあります。
2026年10月3日時点の国税庁案内で、この省略取扱いの例外と明記されているのは「令和8年1月1日以後に開業した場合」です。廃業についてまで一律に省略不可となったわけではありません。
そのため、個人事業を廃業する場合は、実際に提出する個人事業の開業・廃業等届出書に給与等の支払状況を記載するかを確認してください。そこで省略取扱いを利用できる場合は本届出書を重複して提出する必要はなく、省略できない場合は、廃止の事実があった日から1か月以内に本届出書を別途提出します。
なお、令和8年1月1日以後の「開業」については省略取扱いの例外があるため、開業と廃業を混同しないでください。
廃止前までの源泉所得税を確認する
まず、廃止前に最後の給与や退職手当等を支払ったか、その支払から源泉徴収した税額があるかを確認します。
この届出書を提出しても、廃止前までに源泉徴収した所得税・復興特別所得税の納付が、自動的に完了するわけではありません。届出とは別に、納付を確認します。
源泉徴収した税額は、原則として、支払った月の翌月10日までに納付します。
納期の特例の承認を受けている場合は、原則として、1月から6月分をまとめて7月10日まで、7月から12月分をまとめて翌年1月20日までに納付します。
納期の特例を利用していた場合でも、給与支払事務所等を廃止したことだけを理由に、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を必ず提出するとは限りません。廃止前までに源泉徴収した税額の納付時期を、あわせて確認します。
具体的な税額の計算方法は、このページの対象外です。
年末調整・源泉徴収票・法定調書を確認する
給与支払を終了する時期や、従業員の退職等の状況によって、年末調整の要否が関係します。年末調整が必要かどうかを確認します。
給与所得の源泉徴収票についても、交付・提出が必要かどうかを確認します。
年の途中で廃業した場合でも、法定調書について、廃業だけを理由とする特別な前倒しの提出期限があるわけではありません。該当する法定調書がある場合は、通常の提出期限・提出先を確認します。
該当する場合は、次を通常の期限・提出先に従って確認します。
- 法定調書
- 給与所得の源泉徴収票
- 給与支払報告書(市区町村への提出)
これらの具体的な計算方法や記載方法は、このページの対象外です。
提出後に確認すること
届出書を提出した後は、次を確認します。
- e-Taxで提出した場合は、送信結果・受信通知等を保存します。
- 書面で提出した場合は、自分で控えを作成・保有し、提出年月日を記録します。書面提出では、控えへの収受日付印を前提にせず、自分で提出記録を保管します。
- 廃止前までに源泉徴収した税額に、未納がないかを確認します。
- 年末調整・源泉徴収票・法定調書等で残る対応がないかを確認します。
- 社会保険・雇用保険・住民税の特別徴収等、国税以外の手続が残っていないかを確認します。これらは、この届出とは別の制度として、それぞれの所管先で確認します。
相談先
判断に迷う場合や、個別の状況を確認したい場合は、次を確認します。
- まず、廃止する給与支払事務所等の所在地を所管する税務署へ確認します。
- 国税全般に関する相談窓口へ確認する方法もあります。
- e-Taxの操作方法については、e-Taxの公式案内を確認します。
相談時には、廃止した日、廃止の理由、引継ぎの有無など、状況が分かる情報を整理してから問い合わせると、確認がスムーズです。
公式リンク
- 国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
- 国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」
- 国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の記載要領等」
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のしかた」
- 国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」
- 国税庁「No.7400 法定調書の提出義務者」
- 国税庁「年の中途で法人成りをした場合の法定調書の提出」
- e-Tax「e-Taxソフトについて」
- 国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」
- 国税庁「税務署の内部事務のセンター化について」
- 国税庁「税務手続に関する書類の提出時期」
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」
注意点
- 提出期限は、廃止の事実があった日から1か月以内です。提出を思い立った日や確定申告の期限と混同しないようにします。
- 個人事業を廃業する場合は、個人事業の開業・廃業等届出書に給与等の支払状況を記載して本届出書を省略できるかを確認します。令和8年1月1日以後の例外は「開業」と「廃業」を混同しません。
- 廃止と移転は同じ様式を使いますが、記載する内容は区別します。所在地を変えるだけの場合を、廃止として記載しないようにします。
- 支店等を閉鎖する場合は、引継先の給与支払事務所等の情報を記載から漏らさないようにします。
- この届出書の提出と、廃止前までの源泉所得税の納付、年末調整、源泉徴収票、法定調書等の対応は別の手続です。届出を提出しただけで、これらがすべて終わったとは考えないようにします。
よくある間違い
- 正式な様式名を「給与支払事務所等廃止届出書」だけだと思い込む
- 個人事業の廃業届に給与等の支払状況を記載したか確認せず、本届出書が必要・不要のどちらかに決めつける
- 提出期限を年末や確定申告の期限と混同する
- 廃止と移転を混同して記載する
- 支店を閉鎖するときに、引継先の情報を記載しない
- 廃止前までの源泉所得税の最終納付を忘れる
- 納期の特例を利用していた場合に、通常の納付期限と混同する
- 年末調整・源泉徴収票・法定調書まで、すべて自動的に終わったと思い込む
- 年の途中で廃業したことで、法定調書の通常の提出期限がなくなると思い込む
- 法人成りの前後で、支払者を同じものとしてまとめて考えてしまう
- 社会保険・雇用保険・住民税の手続まで、この国税の届出だけで終わると思い込む
- 書面提出で受付印付きの控えを必ずもらえると思い込む