DVの保護命令を申し立てる

概要

保護命令は、配偶者等からの暴力・脅迫を受けている被害者が裁判所へ申し立て、相手方に対して接近や連絡等の禁止、または住居からの退去等を命じてもらう制度です。

今まさに危険が迫っている場合は、申立ての準備よりも先に110番通報等で安全を確保してください。緊急時の考え方は「緊急性が高いとき」で説明します。

この記事では、自分が制度の対象になり得るか、どの命令を求めるのか、申立前に何をしておくか、どこへ何を持って申し立てるか、申立て後どう進むかを順に説明します。

このページで分かること

  • 自分が保護命令制度を検討すべき状況かどうか
  • 求めたい命令の種類
  • 申立前に相談・援助等を求める必要性
  • 管轄する地方裁判所の探し方
  • 申立書・証拠・添付資料の準備内容
  • 申立て後の大まかな流れ
  • 緊急性が高い場合の相談・申立て時の伝え方

対象読者

  • 配偶者、事実婚の相手、生活の本拠を共にする交際相手から暴力・脅迫を受けている方
  • 相手に近づかれたくない、連絡を受けたくない、住居から退去してほしいなど、保護を求めたい方
  • 保護命令を申し立てたいが、要件・準備・申立先・必要書類が分からない方
  • 緊急性が高く、通常の手続を待てるか不安がある方

更新日

更新日:2026年9月5日

最初にやること

保護命令の申立てを考え始めたら、まず配偶者暴力相談支援センターまたは警察へ相談し、暴力等を受けた状況や保護命令を検討していることを伝えてください。

この相談等は形式的な手続ではなく、申立ての際に重要な意味を持ちます。相談した事実や内容は、申立書に記載する形で活用します。

電話で一度話しただけで、この事前相談等の要件を満たしたと判断しないでください。相談等の内容が申立ての基礎になるため、状況を具体的に伝えることが大切です。

なお、裁判所は保護命令が認められるかどうかについて法律相談に応じる機関ではありません。制度の利用を具体的に検討する段階では、配偶者暴力相談支援センター、警察、弁護士等へ相談してください。

すでに支援センターや警察へ相談している場合は、その相談内容を申立書へ記載する準備を進めます。相談していない場合の対応は「保護命令を申し立てられる主な条件」および「必要なもの」で説明します。

保護命令を申し立てられる主な条件

保護命令には複数の類型があり、命令の種類によって発令の要件が異なります。ここでは代表的な二つの要件を分けて説明します。最終的にどの要件に当てはまるかは、個別の事情によって判断が分かれるため、この記事だけで結論を確定させず、配偶者暴力相談支援センターや弁護士等に相談しながら検討してください。

接近禁止命令等の要件

被害者への接近禁止命令をはじめとする命令(電話等禁止命令、同居の子や親族等への接近禁止命令、電話等禁止命令を含む)は、次のような事情がある場合に検討の対象になります。

  • 配偶者から身体に対する暴力を受けた、または生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告知する脅迫を受けたこと
  • そのうえで、さらに身体に対する暴力等を受けることにより、生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいこと

退去等命令の要件

退去等命令は、次のような事情がある場合に検討の対象になります。

  • 配偶者から身体に対する暴力を受けた、または生命・身体に害を加える旨を告知する脅迫を受けたこと
  • そのうえで、さらに身体に対する暴力を受けることにより、生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと

退去等命令は、接近禁止命令等と要件が同じではありません。どちらの命令を求める場合も、自分の事情がこの要件に当てはまるかどうかの最終的な判断は、申立てを受けた裁判所が行います。この記事は、申立てを検討するための判断材料を示すものであり、法的な要件の判定を代行するものではありません。

対象となる関係についても、法律婚の配偶者だけでなく、事実婚の相手や、生活の本拠を共にする交際相手も含まれます。離婚等の後でも対象となる場合があります。自分の関係が対象になるか迷う場合は、配偶者暴力相談支援センター等で確認してください。

保護命令の種類

保護命令には次の6つの類型があります。2から5の命令は、被害者への接近禁止命令に付随する制度であり、単独で申し立てることはできません。

命令 対象 禁止・命令されること 主な期間 単独申立て可否 追加条件・同意の有無
1. 被害者への接近禁止命令 被害者 被害者の住居等の付近をつきまとう・徘徊することの禁止等 1年間 単独で申立て可能 なし
2. 被害者への電話等禁止命令 被害者 面会要求、無言電話、緊急時以外の連続した電話・メール等、GPS等による位置情報の無承諾取得等の禁止 接近禁止命令の期間内 単独では申立て不可(接近禁止命令と同時または発令後に申立て) なし
3. 被害者の同居の子への接近禁止命令 被害者と同居する子 子の身辺へのつきまとい・住居等の付近をつきまとう・徘徊することの禁止 接近禁止命令の期間内 単独では申立て不可 子が15歳以上の場合は本人の同意が必要
4. 被害者の同居の子への電話等禁止命令 被害者と同居する子 行動監視の告知、粗野・乱暴な言動、一定の電話・文書・FAX・電子メール・SNS等、位置情報の無承諾取得等の禁止 接近禁止命令の期間内 単独では申立て不可 子が15歳以上の場合は本人の同意が必要
5. 被害者の親族等への接近禁止命令 被害者の親族等 親族等の住居等の付近をつきまとう・徘徊することの禁止 接近禁止命令の期間内 単独では申立て不可 対象となる親族等本人の同意、関係資料、必要性を示す資料等が必要
6. 退去等命令 被害者 共に生活の本拠としている住居からの退去、その付近の徘徊の禁止 原則2か月 単独で申立て可能 住居の所有者または賃借人が被害者のみである場合等、要件を満たすと6か月となる場合がある

申立ての流れ

申立てから命令発令までは、おおむね次のように進みます。

  1. 配偶者暴力相談支援センターまたは警察への事前相談等
  2. 申立書・添付資料等の準備
  3. 管轄する地方裁判所またはその支部への書面提出
  4. 受理後、当日または速やかに行われる申立人本人または代理人との面接
  5. 原則として、約1週間程度先に指定される、相手方が立ち会える口頭弁論または審尋の期日
  6. 要件を満たすと判断されれば、速やかに保護命令が発令される
  7. 相手方への決定書の送達、または期日での言渡しによって命令の効力が発生する

緊急性が高く、この期日を経ると申立ての目的を達成できない事情がある場合は、相手方への審尋期日等を経ずに発令されることがあります。この例外の詳しい考え方は「緊急性が高いとき」で説明します。

申立先

保護命令の申立先は、次のいずれかを管轄する地方裁判所またはその支部です。家庭裁判所ではありません。

  • 相手方の住所(国内に住所がない場合や住所が不明な場合は居所)
  • 申立人の住所または居所
  • 身体に対する暴力等が行われた地

複数の基準に当てはまる場合は、いずれかを選んで申立先とすることができます。実際にどの裁判所を選ぶかは、配偶者暴力相談支援センターや弁護士等に相談しながら決めることもできます。申立先は、裁判所の「申立書提出先一覧(地方裁判所)」でも確認できます。

必要なもの

全国共通で必要になる基本的な書類は次のとおりです。

  • 保護命令申立書
  • 申立書副本(相手方送付用)
  • 申立てを基礎づける事情を証明する添付資料・証拠

この基本に加えて、求める命令の種類によって、次のような資料が必要になる場合があります。

  • 当事者間の関係を証明する資料
  • 暴力・脅迫を受けたことを証明する資料
  • 今後、重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明する資料
  • 6か月の退去等命令を求める場合の、住居の所有・賃借関係を示す資料
  • 子への命令を求める場合で、子が15歳以上のときの同意書等
  • 親族等への接近禁止命令を求める場合の同意書・関係資料・必要性を示す陳述書等

事前相談等を行っていない場合は、暴力等を受けた状況など申立てを基礎づける事情についての供述を記載した書面を作成し、公証人の面前で宣誓して認証を受け、申立書に添付するという方法もあります。ただし、この方法には手続上の負担があるため、まずは配偶者暴力相談支援センターまたは警察への相談を検討してください。

必要書類の最終的な部数・書式は、申立先の地方裁判所によって運用が異なる場合があります。「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」から申立先地方裁判所の最新の案内を確認してください。

費用

申立手数料として、収入印紙1,000円が必要です。

このほかに郵便料がかかりますが、金額は裁判所ごとに異なります。全国一律の金額ではないため、申立先の地方裁判所で確認してください。

事前相談等を行わず、公証人による宣誓供述書の認証を利用する場合は、認証手数料として11,000円がかかります(内閣府の案内による金額)。

期限・いつまでに

保護命令の申立てそのものに、全国一律の「この日までに申し立てなければならない」という期限は確認されていません。

ただし、保護命令は被害者の安全確保に関わる制度です。危険が続いている、または高まっていると感じる場合は、時間の経過とともに状況や証拠、危険性の評価が変わることがあります。早めに配偶者暴力相談支援センター、警察、弁護士等へ相談し、申立てを検討することを行動の目安にしてください。

緊急性が高いとき

今まさに危険が迫っている場合は、申立ての準備よりも先に110番通報等で安全を確保してください。

申立てについても、相手方への審尋期日等を経ると申立ての目的を達成できない事情がある場合は、例外的に、その期日等を経ずに保護命令が発令されることがあります。ただし、これは「必ず即日に命令が出る」ことを意味するものではありません。

緊急性が高い場合は、配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談する際、また申立先の地方裁判所へ申立てを行う際に、危険性が差し迫っていることを具体的に伝えてください。

相談先

保護命令の申立てに関連して、実際に相談・援助を求めることができる窓口は次のとおりです。

  • 配偶者暴力相談支援センター(内閣府の相談機関一覧):暴力等を受けた状況を相談し、援助や保護を求めることができる窓口です。相談内容は申立書の記載にも関わります。
  • 警察:配偶者暴力相談支援センターと同様に、暴力等を受けた状況を相談できる窓口です。また、保護命令に違反する行為があった場合の通報先でもあります。
  • 弁護士:申立ての進め方や、自分の事情が保護命令の対象となり得るかについて、法的な観点から相談できます。

配偶者暴力相談支援センターの所在地・電話番号は、上記の内閣府の相談機関一覧から確認できます。警察や弁護士への相談先は、地域や状況に応じた窓口を確認してください。

公式リンク

注意点

  • 保護命令の申立ては、2026年5月21日から始まった民事訴訟の全面電子化の対象外であり、現時点でも電子申立てはできません。書面で申立先の地方裁判所へ提出してください。
  • 申立書の一部は相手方へ送付されます。相手方に知られたくない住所等を記載する場合は、事前に申立先の地方裁判所の案内を必ず確認してください。
  • 被害者への電話等禁止命令や同居の子への電話等禁止命令における現行の禁止行為には、電話・文書・FAX・電子メール・SNS等だけでなく、GPS等による位置情報の取得や、2025年12月30日施行の改正で追加された、紛失防止タグ等を用いた位置情報の無承諾取得・取付け等も含まれます。詳細は公式情報で確認してください。
  • 保護命令に違反した場合は犯罪となり、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象となります。
  • 裁判所は、保護命令が認められるかどうかについて法律相談に応じる機関ではありません。

チェックリスト

申立前に、次の項目を一つずつ確認してください。付随する命令(電話等禁止命令、子・親族等への命令)を単独で求めることはできない点、退去等命令と接近禁止命令等で要件が異なる点にも注意してください。

このほか、保護命令の申立ては電子申立てができないため書面で提出すること、緊急性が高い場合は相談先・申立先へその旨を具体的に伝えることも、あわせて確認してください。