事業所得の家事按分を確認する

概要

自宅の家賃や水道光熱費、通信費、車両関係費のように、私生活と事業の両方に関係する支出がある場合、その一部を必要経費として計上している方は少なくありません。これがいわゆる家事按分です。

この記事は、家事按分という考え方そのものを一から説明する記事ではありません。すでに家事按分を行っている方、または決算・確定申告前にこれから按分割合を確認しようとしている方が、今使っている按分基準・割合・根拠資料・計算結果を一つずつ点検できるようにするための、実務確認のための記事です。

家事按分の確認では、「何%なら安全か」を探すのではなく、その支出について、なぜその割合・区分になっているかを今年の実態と記録から説明できるかを確認します。制度の基本的な考え方から詳しく知りたい場合は、家事按分の考え方を解説する別記事を確認してください。

このページで分かること

  • 家事按分の対象になりそうな支出をどう洗い出すか
  • 家事費・家事関連費・事業専用支出をどう見分けるか
  • 現在使っている按分基準と割合をどう確認するか
  • 前年からの利用実態の変化をどう確認するか
  • 支出の資料と按分根拠の記録の違い
  • 費目ごとの確認の視点(家賃、水道光熱費、通信費、車両関係費、家事兼用の減価償却資産)
  • 必要経費算入額の計算をどう確認するか
  • 会計ソフトの自動按分を使う場合に確認すべきこと
  • 判断が難しい場合に、どこで何を確認すればよいか

対象読者

この記事は、主に次のような方を想定しています。

  • 年末や決算・確定申告前に、家事按分を確認しておきたい個人事業者
  • 会計ソフトなどにすでに家事按分の割合を設定していて、そのまま使ってよいか確認したい方
  • 自宅、通信、車、設備などを私用と事業用の両方で使っている方
  • 前年と同じ按分割合を使っているが、今年も同じ割合でよいか確認したい方
  • 家事按分後の必要経費算入額と、その根拠資料をまとめて確認したい方

更新日

更新日:2026年10月5日

家事按分を確認する前にそろえるもの

確認を始める前に、次のような資料を手元に用意しておくと、スムーズに点検を進められます。すべてが全員に必須というわけではなく、対象となる支出の性質と、これまでに採用している按分基準に応じて、必要なものを確認します。

  • 会計ソフト、総勘定元帳、経費帳などに記録されている家事按分対象の支出
  • 対象期間の請求書、領収書、利用明細
  • 現在設定している事業割合・家事割合
  • 前年の按分割合や計算メモ
  • 間取りや業務使用スペースが分かる資料
  • 業務時間・使用時間などの記録
  • 通信の利用状況が分かる記録
  • 車両の業務走行・私用走行を区分できる記録
  • 家事兼用の減価償却資産がある場合は、固定資産台帳や減価償却費の明細
  • 年の途中で利用実態が変わった場合、その時期と内容が分かる記録

まず家事按分の対象になっている支出を洗い出す

最初に行うのは、私生活と事業の両方に関係している可能性のある支出を、帳簿や会計ソフトから拾い出すことです。特定の勘定科目だけをあらかじめ固定して確認するのではなく、実際に発生している支出を見ながら、家事と事業の両方に関わりそうなものを一通り確認します。

代表的には、自宅の家賃や住居関連費、水道光熱費、通信費、車両関係費、そして自宅や車などの減価償却資産が対象になりやすい費目です。ただし、これらに限らず、業務でも私用でも使っている支出であれば、確認の対象として洗い出します。

家事費・家事関連費・事業専用の支出を分けて確認する

支出を洗い出したら、それぞれを次の三つのいずれかに分類して確認します。

  • 家事費:私生活だけに関係する支出です。必要経費にはなりません。
  • 家事関連費:私生活と事業の両方に関係する支出です。業務上必要な部分を明らかに区分できる場合、その区分できる金額が必要経費になります。
  • 事業専用の支出:事業だけに関係する支出です。家事按分をするという理由だけで、機械的に一部を家事分として除外することはありません。ただし、必要経費として計上できるかどうかは、家事按分とは別に、必要経費そのものの要件を満たしているかを確認します。

この三つを混同すると、本来家事按分の対象にならない支出まで割合を掛けて減額してしまったり、逆に家事費まで一部を必要経費に含めてしまったりする原因になります。まず支出を分類してから、家事関連費だけを次の確認へ進めます。

現在使っている按分基準を確認する

家事関連費であることを確認したら、割合の数字そのものよりも先に、何を基準にその割合を決めたかを確認します。

按分基準の例としては、使用面積、使用時間、使用回数、走行距離などがありますが、これらは適切な按分基準の一例であり、費目ごとに全国一律で決められた固定の基準ではありません。現在使っている基準が、その支出の性質と実際の使い方を説明できるものになっているかを確認します。

現在の按分割合が利用実態に合っているか確認する

按分基準を確認したら、次にその基準から実際の割合が説明できるかを確認します。「40%にしている」という結果の数字だけでなく、「何を基準にして40%としたのか」を、今年の実態に照らして確認します。

按分割合の確認では、費目ごとに全国一律で使える固定的な家事按分率は確認できないことを前提にします。「前年と同じだから」「会計ソフトの初期値だから」「インターネットで見た数字だから」というだけの理由で割合を採用している場合は、実態との対応を改めて確認します。

前年から利用状況が変わっていないか確認する

前年と同じ割合を使うこと自体を、一律に避ける必要はありません。ただし、今年も前年と同じ利用実態であるかを確認しないまま、前年の数値だけを理由に機械的に割合を継続することは避けます。

働き方、使用場所、利用時間、車の使い方、契約内容、設備などに変化があった場合は、これまでの割合が今年一年間の実態を説明できるかどうかを見直します。年の途中で利用状況が変わった場合の期間ごとの按分方法について、独自の固定的な計算ルールをこの記事では示しません。判断が難しい場合は、変化の時期と内容、利用記録を整理したうえで、次に案内する税務署や税理士などへ確認してください。

支出の資料と按分根拠の記録を確認する

家事按分の確認では、次の二種類の資料を分けて確認します。

  • 支出の事実を示す資料:契約書、請求書、領収書、利用明細など
  • 事業利用部分を説明する資料・記録:間取り図、利用時間の記録、使用状況、走行記録、通信の利用記録など

領収書などの支出資料があるだけでは、按分割合の根拠まで十分に説明できるとは限りません。支出があった事実と、そのうちどれだけが事業利用にあたるかという根拠は、別の確認事項として扱います。

自宅の家賃・固定資産税などの按分を確認する

自宅の家賃、固定資産税、火災保険料などについては、次の点を確認します。

  1. 対象となる住居・建物を、実際に事業でも使用しているか
  2. 住居のどの場所を事業に使っているか
  3. 面積、利用時間、利用状況などのうち、何を基準にしたか
  4. その基準が今年の使い方を説明できるか
  5. 支出額と事業部分として計算した金額が対応しているか

面積比は按分基準の一例ですが、それだけが唯一の基準というわけではありません。実際の使い方に応じて、適切な基準を確認します。

水道光熱費の按分を確認する

水道光熱費については、次の点を確認します。

  1. その光熱費が実際に事業利用と関係しているか
  2. 使用時間、設備、使用状況などのうち、何を基準にしたか
  3. 費目ごとに同じ割合を機械的に当てはめていないか
  4. 季節や設備、働き方の変化が大きい場合、年間の割合が実態を説明できるか
  5. 計算対象とした年間支出額を取り違えていないか

通信費の按分を確認する

固定回線や携帯電話などの通信費については、次の点を確認します。

  1. その回線・端末を、実際に業務でも利用しているか
  2. 利用時間、利用回数、通信状況などのうち、何を根拠にしたか
  3. 「通信費は通常○%」といった外部の固定割合だけを根拠にしていないか
  4. 回線・端末・契約ごとに、利用実態に大きな違いがないか
  5. 年の途中の契約変更などを割合へ反映できているか

車両関係費の按分を確認する

車両関係費については、次の点を確認します。

  1. 車両を事業と私用の両方で使っているか
  2. 業務走行と私用走行を、どのように区分したか
  3. 走行距離などの記録が残っているか
  4. 燃料費、自動車税、保険料などへ同じ割合を適用している場合、その前提を説明できるか
  5. 車両の使い方が年の途中で変わっていないか

走行距離比は按分基準の一例ですが、これも唯一の法定基準というわけではありません。

家事兼用の減価償却資産の按分を確認する

自宅の一部や車両など、減価償却資産を事業と私用の両方で使っている場合は、次の点を確認します。

  1. 資産を事業と私用の両方で使用しているか
  2. 事業専用割合の根拠を説明できるか
  3. 固定資産台帳や減価償却費の明細に記載されている割合と整合しているか
  4. 減価償却費の全額と、必要経費として算入する金額を混同していないか
  5. 詳細な減価償却計算そのものに疑問がある場合は、減価償却に関する別記事の確認や、税務署や税理士などへの確認に進んでください

減価償却費の計算方法そのものについては、この記事では扱いません。

必要経費にする金額を確認する

家事按分の計算方法を確認するときの基本的な考え方は、次のとおりです。

対象となる支出額 × 事業利用割合 = 事業分として確認する金額

ただし、業務遂行上直接必要であったことを明らかに区分できる場合など、すべての家事関連費がこの単純な式だけで処理されるとは限りません。重要なのは割合の数字そのものではなく、その割合を今年の利用実態から説明できることです。

なお、事業利用割合が50%を超えているかどうかだけで確認を終えないでください。50%を超えていても、家事部分まで全額を必要経費にできるわけではありません。逆に、50%以下であることだけを理由に、事業部分を一律にゼロとして扱うこともしません。50%以下であっても、業務遂行上直接必要であったことを明らかに区分できる部分については、必要経費として確認する対象になります。

以下では、確認の考え方を具体例で示します。数値はあくまで説明のための仮定であり、ご自身の金額に置き換えて確認してください。

具体例A:年間の通信費を確認する場合

年間の通信費支出額を120,000円、事業利用割合を40%とすると、次のように計算します。

120,000円 × 40% = 48,000円

このとき確認すべきなのは、40%という数字そのものではなく、40%とした根拠を、今年の利用実態から説明できるかどうかです。

具体例B:前年から利用実態が変わった場合

前年は自宅での作業が中心だったものの、今年は途中から外部での作業が増えたなど、利用状況に変化があった場合は、前年と同じ割合をそのまま使う前に、今年一年間の利用実態を確認します。

年の途中の変化について、この記事独自の期間按分の計算式は示しません。必要な場合は、変化のあった時期と内容、利用記録を整理したうえで、判断するか、税務署や税理士などへ確認してください。

具体例C:領収書はあるが割合の根拠がない場合

支出があったこと自体は領収書で確認できても、事業利用部分を説明できる記録がない場合、「領収書があるから今の按分率のままでよい」とは判断しません。利用実態をどのように確認できるかを整理し、自分で判断できない場合は税務署や税理士などへ確認してください。

会計ソフトなどで自動按分している場合

会計ソフトに事業割合を設定して自動的に按分している場合でも、その割合自体の税務上の妥当性を、ソフトが保証しているわけではありません。

自動計算の結果については、対象となる支出、設定している割合、年間の支出額、除外している対象、計算結果を確認します。前年の設定が自動的に引き継がれている場合も、今年の利用実態の確認を省略しません。

会計ソフトごとの具体的な操作方法は、この記事では扱いません。必要な場合は、利用しているサービスの公式ヘルプで確認してください。

判断が難しい場合

家事按分の確認を進める中で、自分では判断できない事項が出てきた場合は、次を整理したうえで、税務署や税理士等へ確認してください。

  • 対象となる支出の内容
  • その支出が家事と事業でどのように使われているか
  • 現在使用している按分基準
  • 現在使用している事業利用割合
  • その割合を算定した方法
  • 支出の事実を示す資料
  • 事業利用部分を示す記録
  • 前年から利用状況が変わったかどうか
  • 年の途中で変化があった場合、その時期と内容
  • どの金額を必要経費へ算入しようとしているか
  • 家事兼用の減価償却資産がある場合は、固定資産台帳や減価償却費明細上の事業専用割合など

また、会計ソフト固有の設定や操作については、利用しているサービスの公式ヘルプなどで、次を確認してください。

  • 事業割合・家事割合の設定箇所
  • 自動按分の対象となる取引
  • 年の途中で割合を変更した場合の計算範囲
  • 過去の入力への反映範囲
  • 決算書や帳簿への反映方法

よくある間違い

家事按分の確認では、次のような考え方に注意してください。

  • 家事と事業に関係するすべての支出を、同じ割合で機械的に按分してしまう
  • 前年と同じ割合だから、今年も確認は不要だと考えてしまう
  • インターネットで見かけた割合を、そのまま自分の按分率として採用してしまう
  • 会計ソフトの設定値を、税務上の正解だと考えてしまう
  • 領収書があれば、按分割合の根拠としても十分だと考えてしまう
  • 事業利用割合が50%を超えれば、支出全額を必要経費にできると考えてしまう
  • 事業利用割合が50%以下であれば、一切必要経費にできないと考えてしまう
  • 家賃は必ず面積、水道光熱費は必ず時間、車両は必ず走行距離で按分しなければならないと考えてしまう
  • 年の途中で利用実態が変わっても、年間を通じて同じ割合を機械的に適用してしまう
  • 減価償却費の全額と、家事按分後に必要経費へ算入する金額を混同してしまう
  • 家事費まで按分すれば、一部を必要経費にできると考えてしまう
  • 事業専用の支出まで、「家事按分だから」という理由で機械的に減額してしまう
  • 計算結果だけを残し、按分の基準・割合・その理由を記録として残さない

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相談先

家事按分の割合や区分について、自分では判断できない場合は、税務署または税理士へ確認してください。確認する際は、「判断が難しい場合」に整理した内容をあわせて伝えると、スムーズに相談できます。

会計ソフトの操作や設定に関する内容は、税務署ではなく、利用しているサービスの公式ヘルプまたはサポート窓口へ確認してください。

公式情報

家事按分に関する制度の根拠は、国税庁が公開している次のような情報で確認できます。

最新の内容は、国税庁の公式サイトで確認してください。